都心に眠る「地下の廃駅」へようこそ 旧博物館動物園駅、21年ぶり一般公開

木製の改札口や切符売り場=吉野太一郎撮影
木製の改札口や切符売り場=吉野太一郎撮影

21年以上使われていなかった東京都心の地下駅が、この秋、一般公開されます。

京成電鉄本線の上野駅と日暮里駅の間にあった、旧「博物館動物園」駅。東京メトロ銀座線の旧万世橋駅、京王線の旧初台駅など、都内に残る「地下廃駅」の遺構の一つです。

11月2日、報道関係者らに内部が先行公開されました。(取材・吉野太一郎)

普通列車すら通過していた

駅舎は花崗岩で装飾したルネサンス様式。今年4月に、鉄道施設として初めて、東京都選定歴史的建造物にも選ばれました。これを機に、京成電鉄が上野周辺の活性化を図ろうと内部を改修・清掃し、近くにある東京芸術大学と協定を結びました。

今回は芸大の美術学部長でもある現代美術家の日比野克彦さんが、出入り口の扉を新たにデザインしました。上野公園や博物館、美術館など周辺の文化施設をモチーフにしています。「新しい上野の香り、文化が始まる。(文化施設が交差する)アートクロスの新しい象徴ができた」と話しています。

開業当時の駅舎=京成電鉄提供

1933年12月10日、上野公園の旧御料地内に開業したこの駅は、御前会議で昭和天皇の勅裁により建設が決まりました。京成にとって「大変な苦労と覚悟をもって造った駅」(小林敏也・京成電鉄社長)です。

開業当時の切符売り場=京成電鉄提供

博物館動物園駅は、京成本線の起点である京成上野駅から北へ約900メートル。上野公園や近隣の博物館、美術館、そして上野動物園への玄関口でしたが、やがて「幻の駅」となっていきます。

開業当時のホーム=京成電鉄提供

ホームが短く、停車できるのは辛うじて4両編成のみ。戦後、車両の長編成化とともに、普通列車ですら多くが通過する駅となりました。1日の平均乗降客数は3桁にとどまり、1997年3月31日をもって営業休止、2004年に正式に廃止されています。

地下に残る昭和の匂い

扉が開いた=吉野太一郎撮影

休止前後に、駅の存続や保存を求めるグループが、駅構内をコンサート会場やインスタレーション(空間芸術)など、イベントの場として使っていたこともありました。久々に扉が開きます。

駅舎に残るドーム=吉野太一郎撮影

中に入るとドーム屋根。装飾に、力の入れようが見て取れます。

階段を降りて地下1階へ=吉野太一郎撮影

階段を降りて地下1階に進みます。

切符売り場の跡=吉野太一郎撮影

手売りで販売していた切符売り場の跡。

切符売り場の裏=吉野太一郎撮影

ちなみに切符売り場の裏側はこんな感じ。イベントなどの控室として使われます。

トイレの表示=吉野太一郎撮影

閉鎖されたトイレも、何とも味があります。

壁に残された落書き=吉野太一郎撮影

21年前の営業休止直前、乗客らが壁に落書きをしていきました。一部は今も残されています。

木製の改札口や切符売り場=吉野太一郎撮影

上り線(上野方面)ホームへの階段。下に木製の改札口や切符売り場が見えます。改札口のすぐ横を、今も電車が走っています。奥に続く階段は、下り線(成田方面)への連絡階段。

ホームへ向かう階段の手前にはガラス戸が設けられている=吉野太一郎撮影

安全上の理由で、一般客が入れるのはこの場所まで。電車は見えませんが、時折聞こえる轟音から想像するしかありません。

地下1階から上を見上げる=吉野太一郎撮影

一般開放は11月23日から来年2月24日までの金・土・日曜日、午前11時から午後4時まで。構内には、演出家の羊屋白玉氏の書き下ろし小説を読みながら鑑賞するインスタレーションが展示されます。入場無料。

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