「一般的な東京散歩は年寄り臭い」緊張感おぼえる「ひとり休日」プランを提案
ひとりで知らない街を歩けば、異邦人になれるーー。そう語るのは、紀行ライターのカベルナリア吉田さんです。一般的な東京散歩の指南本は年寄り臭いと指摘する吉田さん。未解決事件の現場や娼婦街の跡を訪ねるなど、ひとひねり加えた「ひとり休日」の過ごし方を提案する本を書きました。
吉田さんは、読売新聞社などを経て、2002年からフリーライターとして活動しています。11月15日にWAVE出版から「おとなの『ひとり休日』行動計画 首都圏日帰り版」という本を出しました。ひとりで休日を過ごしたい人向けに、首都圏近郊の外出プランを示した本です。
「三億円事件」の現場へ
この本では20通りの「行動計画」を紹介しています。たとえば「ミステリーの舞台に立って、真相に迫る」という計画では、1968年に起こった未解決の「三億円事件」の現場(府中市)へ。三億円が盗まれる完全犯罪がいかに遂行されたかを紹介しながら、事件が起きた府中刑務所近くの通りを「探偵気分」で歩きます。
吉田さんは「一般的な東京散歩は緩いというか、必要以上に年寄り臭いと感じていました。戦後の昭和を知って知識を深めつつ、緊張感も覚えるような散歩を勧めたいと思いました」と語っています。
ほかにも、永井荷風の小説『濹東綺譚』の舞台となった私娼街跡(墨田区東向島)を歩く計画や、都電荒川線に乗ってぶらり途中下車の旅をする計画などが紹介されています。歴史を感じる場所に赴いたり、美味しいものを食べたりーー。自分の好きなように行動できるのが「ひとり休日」の魅力です。
「どこに行って何をするのも自分次第。決めるのも自分だし、やるのも自分。気になる場所を日に何度も、朝昼晩と時間を変えてうろつくのも自分次第。100%自分の意志で動けるのって、いいことだと思います」(カベルナリア吉田さん)
「ひとりで街を歩くと異邦人になれる」
吉田さんは、街歩きの魅力を次のように語っています。
「異邦人になれることです。誰も自分のことを知らない、これは少々の不安を伴いつつ快感でもあります。普段は飲んだことのないお酒を飲んでみたり、普段の自分なら絶対行かないような場所に立ち寄ってみたり、冒険を楽しむこともできます」
この本は「いまの生活の小さな価値観や世界にとらわれてしまっている人」にこそ、読んでほしいと語っています。
「たとえば、企業で上のほうまで上り詰めた結果、肩書なしでは自分のアイデンティティを保てない人など。いま所属している組織や集まりを抜けて『ひとり』になれば一切意味のないものにとらわれている人に、読んでほしいです。将来必ず『ひとり』になる。そのときに備えて、練習のためにも読んでもらいたいです」