酒場詩人・吉田類「唯一無二」の絵画展 「若いころはシュルレアリスムに傾倒」

“酒飲み界のスター”ともいえる酒場詩人の吉田類さんの絵画などを展示する個展が6月6日から、東京・銀座の銀座三越で始まりました。吉田さんは、全国の味わい深い居酒屋を訪ね歩くテレビ番組『吉田類の酒場放浪紀』(BS–TBS)で有名です。この展覧会では、吉田さんが描いた絵画や、陶芸家・山口真人さんの作品に絵付けした酒器など約180点が、展示・販売されていました。

テレビでは「陽気に飲む人」というイメージの強い吉田さんですが、実は画家としての一面もあるのです。

「子供のころ、近所に画家の吉井英二先生がいらっしゃって、父親代わりによく遊んでもらったんです」という吉田さん。「吉井先生は、今では二科会の最長老のような人。直接、絵の技術を教わったわけではないんですが、唯一無二であること、各自が持っている個性が一番大事だということを教え込まれました」と話します。

展示されている作品を見ると、そのいくつかに、人間でもなく動物でもないような不思議な生き物が描かれています。

吉田さんによると、これは「妖精」なんだとか。若いころはサルバドール・ダリの作品などで知られるシュルレアリスム(超現実主義)の画風に傾倒した吉田さんですが、あるとき「自分が笑ったり和んだりできる絵を描こう」と思うようになり、現在のスタイルにたどり着いたといいます。

吉田類さんが陶器に絵付けした作品も展示されている(齋藤大輔)

「絵に描かれた居酒屋に行ってみたくなる」

吉田さんの個展は6月12日までの1週間開催されます(12日は18時まで)。この日は、開店とともに30代〜70代の男女が20人ほど訪れ、作品に見入っていました。

仕事が休みだったので来場したという会社員の男性(30代/好きなつまみは「揚げ出し豆腐」)は、「吉田類さんを知ってから、いろんな日本酒を飲むようになりました。ガード下でひとりお酒を飲んでいる絵がいいですね」と語っていました。

また、個展のために京都からやってきたという女性(年齢は「60代よりずっと上」/好きなつまみは「鯖のへしこ」)は、「テレビを観て『こんな人と飲んでみたいなあ』と思ったのがきっかけで、吉田さんの講演やイベントに行く“追っかけ”になって10年になります。今日は小皿と片口の徳利(とっくり)、織部のぐい呑みを買いました」と楽しそうに話します。

東京の練馬区でよく飲んでいるという女性(50代/好きなつまみは「刺身」)は、「女性が飲むとき色っぽさが出ている絵がお気に入り」。その隣にいた同僚の女性(60代/好きなつまみは「西京漬け」)は、「絵に添えられた文字がいい。字まで絵のように見える。絵に描かれた居酒屋に行ってみたくなる」と感想を口にしていました。

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土井大輔 (どい・だいすけ)

ライター。小さな出版社を経て、ゲームメーカーに勤務。海外出張の日に寝坊し、飛行機に乗り遅れる(帰国後、始末書を提出)。丸7年間働いたところで、ようやく自分が会社勤めに向いていないことに気づき、独立した。趣味は、ひとり飲み歩きとノラ猫の写真を撮ること。好きなものは年老いた女将のいる居酒屋。

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