生きるとは? 年末年始「おひとりさま」向けオススメ「外国映画」5選

生きるとは? 年末年始「おひとりさま」向けオススメ「外国映画」5選(イラスト・古本有美)
(イラスト・古本有美)

年末年始の休暇中、自宅でひとりで過ごす人もいるでしょう。そんな「おひとりさま」に向けて、良質な映画を紹介します。

今回は洋画編としておすすめの5作品を取り上げます。映画を見ながら、ひとりで「生きる」ことの意味を考えてみる。そんな時間を与えてくれそうな秀作を選んでみました。

いずれも10年以上前の映画となりますが、DVDなどで鑑賞する価値のある作品ばかりです。

邦画編:年末年始にひとりで見よう!「孤独」をテーマにしたオススメの「日本映画」5選

(1)『ここに幸あり』(2006、オタール・イオセリアーニ)


大臣を罷免された男性が新たな生活のなかで、新しい幸せを見つめるというこの作品。監督のオタール・イオセリアーニはジョージア(旧グルジア)の巨匠と呼ばれる監督ですが、旧ソ連時代には何度も作品が公開中止になり、国外で制作の活路を見いだしたという過去があります。

本作の主人公には、そうした監督のかつての姿を読み取ることができます。しかし、決して暗いテイストの作品ではありません。劇中で使用される、滋味にあふれた音楽の効用もあり、むしろ「いま、生きていること」を肯定するような明るさやユーモアこそが作品の軸となっています。

新しい価値観に触れ、現在の生活について「最高だよ」という主人公。その言葉には、自分なりの「幸せ」をつかみ取ったという確かな実感が感じられます。

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(2)『街のあかり』(2006、アキ・カウリスマキ)


フィンランドの名匠、アキ・カウリスマキ監督の作品です。主人公は家族にも友人にも恵まれず、警備員として孤独な日々を送る男性。ある日、彼の前に謎めいた女性が現れます。初めて恋愛感情を持つ彼ですが、それは好ましい変化ではありませんでした…。

本作は『浮き雲』『過去のない男』と合わせて、カウリスマキ監督の「敗者三部作」と呼ばれています。カウリスマキ監督の作品の主人公は、基本的には社会的弱者と呼ばれる人たちで、彼らがたどる道のりも決して平坦なものではありません。

しかし、最後に現れるわずかな救いに、ほっと心が洗われます。その「救い」とは大仰なものではなく、私たち誰もが経験しうる、ろうそくの火のような弱々しいものに過ぎません。しかし、そのほんのちょっとの「あかり」が生きる強さになるという、そんなことを実感させてくれる作品です。

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(3)『霧の中の風景』(1988、テオ・アンゲロプロス)


ギリシャの巨匠、テオ・アンゲロプロス監督の作品です。その作品はしばしば難解さを指摘されますが、本作は子どもを主人公にしていることもあり、彼の作品としては珍しく、比較的わかりやすい作品となっています。

ストーリーは幼い姉弟が、まだ見ぬ父を求めて遠いドイツに旅立つというもの。その旅の過程では良いことも悪いことも含め、さまざまなことが起こります。幻想的なタッチの作品で、たとえば港から引き上げられる巨大な手の彫刻や、ラストに登場する象徴的な一本の樹木などは、強い印象を残します。

旅の果ての霧の中で、ふたりは何を得たのか。ラストシーンはさまざまな解釈がありえます。彼らがたどり着いたのは理想の地かもしれないし、あるいはあの世かもしれません。そこに何を見いだすかは、観客一人ひとりにゆだねられます。

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(4)『胡同の理髪師』(2006、ハスチョロー)


タイトル通り、「理髪師」を題材とした作品です。主人公は93歳の現役理髪師、チンさん。実在する人物です。

基本的には、チンさんと彼をとりまく老人たちの日常をドキュメンタリー・タッチで綴った作品で、描かれるのは等身大の日常に立脚した生活です。その淡々とした描写の積み重ねを通じて、チンさんが生きてきたことの重みが確かに伝わってきます。

本作には「時代の移り変わり」という意味も込められています。舞台となる中国・北京の胡同(伝統的な民家の建ち並ぶ細い路地)は古い家屋が中心で、かつては観光スポットとしても注目されました。しかし、北京五輪を前に、開発の足音が聞こえてきます。

時代の変化によって何が残り、何が失われるのか。東京五輪を控えた私たちにとっても、「故郷の変化」について考えるきっかけになるかもしれません。

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(5)『トッツィー』(1982、シドニー・ポラック)


簡単に言えば、「俳優が女装してブレイクする映画」です。40歳を迎えようとする主人公。才能はあるものの、完璧主義もあり、なかなか芽が出ません。しかし、あるきっかけで女装して受けたオーディションでまさかの入選。一躍スターとしてのし上がる「彼女」。ただ、女性になったことで、あらたな問題が次々と浮上していきます。

俳優に限らず多くの仕事においても、独自の色を出して成功を得ることは決して簡単ではありません。お金を得ることができても、果たしてそれだけでいいのか。いまの自分は本当にこれで満足なのか。

名優ダスティン・ホフマンの見事な女装ぶりは一見の価値あり。娯楽映画として十分に楽しめます。しかし、自分にとっての「仕事」のあり方を考える上でも、見ていただきたい作品です。

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おすすめした「おひとりさま」向けの映画。年末年始、まとまった時間が取れるこの機会にご覧になってはいかがでしょうか。

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