冬の太陽を求めて「蛇の形」の善福寺川を散歩する(大都会の黙考スポット 5)
![善福寺川。杉並区の善福寺公園内にある善福寺池が源](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2020/04/12148954/site_big/f88bebc24dc351433c60cad8077c9689.jpg)
ふだん東京のネットベンチャーの慌ただしい現場に身を置いている筆者が、大都会の喧噪から離れ、ゆっくりと物思いにふけることができる「黙考スポット」を探索するこのコラム。今回は、杉並区の善福寺川沿いを紹介する。
冬にこそあえて日向を求める
「オレ、丸一日、一度も日光に当たってないかも」ということに最近気づいた。
朝の出勤時、朝日はまだ天低くマンションの影に隠れている。地下鉄に乗って、高層ビル群が立ち並ぶ街の駅で降りると、地上に出ても日陰を歩かされる。ビル風を受け、北国とは違う寒さを感じる。
日光を15分以上浴びると「セロトニン」というホルモンが分泌されて、精神衛生にもっぱらイイらしい。都会の冬になぜか憂鬱になるのは、インフルエンザウイルスなんかよりも「セロトニン不足」のせいなのかもしれない。
こんな冬にこそあえて「日向」を求めるべきだ。日の低い冬に日光に当たるには、高い建物を避けなければならない。また冬の場合、日向を求めて広い公園に座っていても、北風が寒くて耐えられなくなるため、歩きながら日光に当たりつつ、一人で黙考できるような場所がいい。
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2020/04/12148954/bodies/d927e66fc555053d62987f1f25f7d94d.jpg)
前回 の隅田川以外で、そんな場所が都心にあるだろうか。そうだ、今回は西に行ってみよう。西と言っても「杉並区」だ。僕にとって、仕事で行く機会はほとんどない場所だ。新宿で仕事のアポイントがあったとき、その前後に時間を押さえて足を伸ばすのがいいかもしれない。
今日はもう都心には戻りたくない
杉並区を東西に貫く中央線の沿線は昔から「サブカル」な雰囲気をもった街が多い。中野、高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪。独身男子が一度住みだすと離れられない街だ。駅前は常に雑然としていて落ち着ける場所など皆無だが、グーグルマップを開くと高円寺駅と阿佐ヶ谷駅の南方に何やら「蛇のようにグニャグニャ曲がりくねった形の緑地帯」が見える。
中央線の高円寺駅から「蛇の形」に向かって徒歩で南下すると、徐々に高い建物は消え、住宅街に入っていく。冬の早朝でも夕暮れでも、道を選べば陽の当たる場所を歩くことができる。住宅街だとまだ多少の人や車とすれ違い、「ひとり」で黙考するには至らない。早く「蛇の形」の緑地までたどり着かなくては。
住宅街の先に森が見える。細い坂を下っていく。道を下りきると空が開けた。「隅田川」と比べるととても狭い10mほどの川幅の「小川」が流れていた。
「善福寺川」である。
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2020/04/12148954/bodies/2eae9a0f529b3d682c6c4a10a51d6424.jpg)
川の側道はきちんと舗装されていて、桜並木が整えられている。全身に日光を浴びながら歩くことができるので、セロトニンが出まくっているはずだ。気分が晴れてくる。周りに人もいなくなり、歩きながらゆっくりと考え事ができる。
鳥のさえずりが聞こえる。柵越しに川面を覗き込むと、カルガモが泳いでいる。都心ではあまり見かけない「ハクセキレイ」や「キセキレイ」といった野鳥が川面スレスレを飛び交っている。蛇のようにクネクネした川をひたすら西の方に歩いていくと、いくつもの小さな公園に出会う。どの公園もとても静かで、イチョウの木と小さなベンチぐらいしかない。
歩き疲れたので、広い芝生の上にぽつんとあるベンチに座った。眼の前に芝生や木々の緑が広がっている。冬の日光を十分に浴びてカラダも温まっているし、ここで小休止しながらノートパソコンを広げてシゴトをしてみてもいい。
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2020/04/12148954/bodies/33a51666983667ad67213056e316d384.jpg)
ベンチでしばらくぼんやりとしながら、道すがらの自販機で買ったコーヒーでカラダを中からも温める。スマホのグーグルマップで現在地を確認する。「蛇の形」をした善福寺川のどのあたりまで進んでいるのか。随分と日光を浴びながら歩いたつもりだったが、まだまだ「蛇のしっぽ」部分に過ぎなかった。
そして、善福寺川の先の方に目をやると、港区で出会った空中庭園裏の「天空の森」を越える大きさの森が見えるではないか。
今日はもう都心には戻りたくない。街に戻れば電源やWiFiのあるカフェは見つかるのだから。僕はまた「森」を求めて、善福寺川を泳ぐカモと並走して歩いた。
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2020/04/12148954/bodies/2a103706f5b10287106fc32027373dc5.jpg)
この記事をシェアする
「ひとり散歩」の記事
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2024/05/omokage_top2-320x230.jpg)
ヤギやウマやザリガニ…都心なのに動物が多い「面影橋」(地味町ひとり散歩 35)
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2024/01/akaminne_top-320x230.jpg)
日本最南端の駅「赤嶺」 黒猫がのんびり昼寝する街を歩く(地味町ひとり散歩 34)
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2023/12/Furushima_top-320x230.jpg)
「飲む極上ライス」不思議な沖縄ドリンクを「古島」で飲む(地味町ひとり散歩 33)
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2023/11/gyotoku_top-320x230.jpg)
行徳で見つけた「体がグミになりそうな」滑り台(地味町ひとり散歩 32)
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2023/07/IMG_3345-320x230.jpg)
伝説の野外フェスの里「中津川」にリニアがやってくる?(地味町ひとり散歩 31)
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2023/07/IMG_3331-320x230.jpg)
巨大な鳥居がドドーンと睨みをきかせる中村公園(地味町ひとり散歩 30)
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2023/03/higashibetsuin_top-320x230.jpg)
逆名探偵コナン?「おとなこども歯科」に戸惑う「東別院」(地味町ひとり散歩 29)
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2023/01/kamikitazawa_top-320x230.jpg)
下北沢の兄弟「上北沢」にはボブ・ディランが似合う(地味町ひとり散歩 28)
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2022/12/nishihachioji_top-320x230.jpg)
「たま」の思い出が蘇る懐かしい街・西八王子(地味町ひとり散歩 27)
![](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2022/12/shintokorozawa_top-320x230.jpg)