ブログで「子宮頸がん」を告白…辛い「抗がん剤治療」記録しながら乗り越えた

抗癌剤治療の真っ最中の心模様を映す薄暮の空
抗癌剤治療の真っ最中の心模様を映す薄暮の空

20代~40代の人に多い子宮頸がん。国立がん研究センターの統計によると、1年に3000人近くの女性が子宮頸がんで亡くなっています。新たにこのがんにかかっていると診断される数は、年間1万件以上にのぼります。

神奈川県のYuiさん(34歳)は、年に一度は子宮がんの検診に行っていました。ところが定期検診では見つからなかったのに、ある日、初期の子宮頸がんになっていることがわかりました。Yuiさんがどのように病気を受け止め、折り合いをつけていったのか、話を聞きました。

生涯、わが子をこの手に抱くことができない

――なぜ、子宮頸がんだとわかったのですか。

Yui:2、3年前からおりものの量が多いなと思っていたんです。ネットで調べても、おりものが多いから子宮頸がんだという記事はなく、まさか自分ががんだとは思いませんでした。でも、おりもののことが心配だったので、近隣の産婦人科に行ったのです。検査の結果、子宮頸がんは陰性で、ひとまず膣(ちつ)に抗生物質を投与する治療をはじめました。

でも、まったく改善されず、「大きな病院で診てもらってください」と言われたんです。それから1週間後(2018年7月)、子宮頸がんだと診断されました。ちょっとやっかいな腺がんだと言われたのです。

――がんと診断されて、恐怖感に襲われませんでしたか。

Yui:診断された時は、意外とすんなり受け止めることができました。大量のおりものの原因は、それだったんだなあと。精密検査を終えて、ステージ1Bだと診断され、腹腔鏡下手術を受けることが決まったのですが、卵巣を左右両方取らないと再発、つまり命の危険があると言われて、診察室で号泣しました。

片方の卵巣を温存できれば、代理出産で子供を授かる可能性もあると思っていたのですが、「一生、我が子をこの手に抱くことができないんだ」と思い知らされたのです。

友人に話すことで、自分が置かれている状況が見えてきた

――家族以外の方にも打ち明けたのでしょうか。

Yui:同情してほしいとか励ましてほしいとか、そういう気持ちはまったくなかったのですが、何人かの友人に打ち明けると、相手のほうが大泣きしてしまいました。でも、そうした反応を目の当たりにして、私は自分の置かれている状況が、だんだん理解できるようになったんです。

自分がいまやるべきことは何なのか、感情的にならないで、客観的に見ることができるようになりました。「人に話す』」ことで、現状を受け入れられるようになったんです。手術までに、前から決めていた引っ越しをしなければならず、結構忙しかったので、余計なことを考える時間もなく、あっという間に時が過ぎていきました。

――術後、抗がん剤治療をおこなったのですね。

Yui:手術する前は、「悪いところを治して、まだまだ生きるぞ』」思っていたんです。でも、医師から「再発予防のために抗がん剤治療をしなければならない」と告げられた時は、ものすごくショックでした。

同意書にサインしながら、再び号泣しました。嘔吐や関節痛などの副作用も、ものすごく
怖かった。抗がん剤治療が始まるまでは、気持ちを落ち着けるため、田舎にお墓参りに行ったり、大好きなディズニーランドに行ったりしました。

――ロングヘアをばっさり切るのには勇気が必要でしたか。

Yui:髪の毛をのばしていたのですが、髪を切ってヘアドネーション(病気の人のために髪の毛を寄付する運動)をしたんです。切ったらスッキリしました。抗がん剤治療をはじめて2週間後に毛がほとんど抜け落ちてしまったんですが、覚悟していたので冷静に受け入れることができました。いまはウィッグをつけて楽しんでいます。

カラフルな薬ケースで気分を上げて治療に向かう

SNSに記録することで乗り越えられた抗がん剤治療

――ブログやインスタで病気のことを告白したのはなぜですか。

Yui:最初は自分のために、SNSに抗がん剤治療の記録を残したんです。抗がん剤治療は全部で6クール。「1日受けては21日間休む」というのを繰り返すのですが、耐え難い苦痛を強いられました。

でも、高熱が出た時のようなズキズキした関節痛、手術痕の痛み、消えない手足のしびれなどの副作用をブログに記録しておくと、何日目にどんな副作用が出て、あと何日我慢すれば終わるという見通しが立つんです。髪の脱毛についても心の整理ができました。

以前から日常生活をブログに綴っていたのですが、病気のことをカミングアウトしてからフォロワーが300人も増えました。たくさんの子宮頸がんを経験した人とつながることができ、いろんなことを教えてもらえて。抗がん剤治療は、「生きるため」に通らなければならない道なんだと受け入れることができたんです。

――これからは、どのように生きていきたいですか。

Yui:ひとりで外出するのが不安でたまりませんが、再発におびえて生きるのではなく、人生を楽しみたい。友人や身近な人には、検診の大切さを伝えていきたいです。

     ◇

Yuiさんの場合は検診で見つからず、なかなか発見されなかった子宮頸がんですが、近畿大学医学部産婦人科の松村謙臣(まつむら・のりおみ)教授によると、「子宮がん検診では、約8割の子宮頸がんを発見できます」ということです。「ほとんどが初期のものですが、リンパ節転移が認められるなど重症のこともあります」(松村教授)。

「Yuiさんのように、検診で見つかりにくい子宮頸がんも2割ほどあるのですが、2年に一度は検診を受けることをおすすめします。早期発見できると、術後の経過も良いのです。子宮頚部の面積(直径3cm程度)は小さく、組織をこするようにして採るのですが、痛みはほとんどありません」

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渡辺陽 (わたなべ・よう)

大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく伝える」をモットーに医療から気軽に行けるグルメ、美容、ライフスタイルまで幅広く執筆。医学ジャーナリスト協会会員。ダイエットだけでは飽き足りず、マラソン大会出場を目指して、パーソナルトレーナー指導のもと、ひとり黙々とトレーニングに励んでいる。

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