ニンニクが粒ごと入った「ベトコンラーメン」で身体の芯からポカポカに
![ニンニクが粒のまま入る愛知県のご当地ラーメン「ベトコンラーメン」](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2021/01/81b33f50050c3c009bf38b08125820fe-1.jpg)
近年は暖冬といわれることが多いが、やはり冬なので寒いことは寒い。周りでは風邪も流行っているようだ。こんなときはニンニクをたっぷり使った料理を食べて、スタミナをチャージしたいところ。
そこで私が選んだのは、名古屋市中区栄2丁目にある『新京 名古屋伏見店』。
ここはニンニクがゴロッと入った愛知県のご当地ラーメン、「ベトコンラーメン」が看板メニュー。その名前の由来や誕生秘話は後ほど触れるが、発祥の店は、愛知県北西部(尾張地方)の一宮市にある『ベトコンラーメン 新京本店』である。
![「新京 名古屋伏見店」外観。店は地下鉄伏見駅近くのビジネス街にある](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2021/01/dd52fb16777ef708cd604b8d48546239.jpg)
尾張地方や隣の岐阜県では、昔からその名は知れ渡っていた。私も本店には何度か足を運んだことがあるし、取材したこともある。その反面、名古屋ではやはり台湾ラーメンの方が絶大な知名度を誇る。中にはベトコンラーメンの存在を知らない人もいる。
この「新京」名古屋伏見店がオープンしたのは、5年ほど前。これは台湾ラーメン一強の名古屋への殴り込みだろう。その心意気、気に入った。
お酒に合うサイドメニューがズラリ
夜の混雑タイムを過ぎた8時半頃に到着すると、店内はやや空いていた。案内されたテーブル席からほかの席を見渡すと、やはり場所柄なのか、サラリーマンのグループが目立つ。訪れたのは2019年の年末だったこともあり、隣の席では忘年会を開いていた。
ここはカテゴライズすると、ラーメン店ではなく中華料理店になるので、夜はもっぱらお酒を楽しむ客がほとんどなのだ。
![ビールとよく合う「塩だれキャベツ」](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2021/01/e01cb71e7a2216067558dfed9785c6f5.jpg)
ってことで、私もとりあえず、「塩だれキャベツ」(390円)をアテに「一番搾りフローズン生」(550円)で喉を潤す。暖房がガンガンにきいた店内でキンキンに冷えたフローズン生。もう、最高の贅沢だ。
隣の席の忘年会グループに目をやると、相変わらず盛り上がっている。世間では“忘年会スルー”が話題のようだが、私のような自由業は忘年会なんぞ無縁。っていうか、年末でなくとも飲みたいときに飲む。それが基本だ。
![店の前の幟にも「ゲソカラ」の文字が](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2021/01/ecc6a3b8f7b8214e9dd641e0e4d15c59.jpg)
あっという間にフローズン生を飲み干し、次に注文したのは、「ゲソカラ」(800円)。これは『新京』に訪れた客の大半が注文する、ベトコンラーメンと双璧をなす名物。ビールやハイボールも合うだろうが、私はレモンサワー派。ここは「レモンチューハイ」(390円)を注文。
![「ベトコンラーメン」と双璧をなす名物「ゲソカラ」](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2021/01/df1a3d68fc2356fa4bb63a3cc3049308.jpg)
ゲソカラは衣にしっかりと味がついていて、イカの風味を引き立てる。添えられた塩コショウをつけて食べるとさらに旨い。無性にお酒が飲みたくなり、レモンサワーをあおる。レモンの酸味で口の中がリセットされたところで再びゲソカラを食らう。で、また飲みたい衝動に駆られる。もう、無限のループ。
![「ゲソカラ」と相性抜群の「レモンチューハイ」](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2021/01/adbfac11875d191b54758065e47ba758.jpg)
おっ、隣の席のグループは忘年会を終えたようだ。まだ帰るには早いから、これから二次会に繰り出すのだろうか。内心、帰りたいと思っている人もいるんだろうなぁ。
「ご苦労様です!」と、心の中でエールを送りつつ、いよいよ〆の「ベトコンラーメン」(800円)を注文。と、その前に、ベトコンラーメンについて、本店の店主から聞いた話を少々。
ベトコンラーメンの由来はベトナム戦争?
![愛知県一宮市にある「新京本店」](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2021/01/ca0d0ebdbaf494d7f8b0c356e4b38c45.jpg)
ベトコンラーメンが誕生したのは、『新京本店』が創業して間もない昭和40年代の半ば頃。当時の店の厨房は今のように換気がしっかりしておらず、疲労と湿気で先代の店主は食欲不振になってしまった。そんなとき、雇っていた料理人がニンニクをたっぷりと入れたモヤシの炒め物を作ってくれた。
以降、体調がすぐれないときや疲れがたまっているときに、ラーメンの上にのせて賄いで食べていた。それを客に出したところ評判になった。
当時はベトナム戦争の真っ只中だったこともあり、戦争を勇敢に戦う兵士をイメージして「ベトコンラーメン」と名付けた。ところが、ご存じの通り、ベトナム戦争は泥沼化していく。世界的に反戦ムードが広がり、悲惨な戦争を連想させるラーメンではイメージが悪かったが、ベトコンラーメンという名前はすでに定着していた。
![「ベトコン」はベストコンディションの略](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2021/01/19e07271588680ad3aeac01334c7e251.jpg)
そこで店主は、ベストコンディションを略してベトコンとし、名前をそのままに由来を変えた。実際、多くの客からベトコンラーメンを食べると体の調子がよくなるという声が寄せられていた。
この店主の機転がなかったら、まったく違う名前になっていたのかもしれない。それどころか今の時代に残っていなかったことも十分に考えられる。由来はどうであれ、ベトコンラーメンというネーミングはどこか惹かれるものがある。
味わうごとにパワーが満たされていく
![辛そうに見えるが、辛さよりもニンニクのパンチの方が強い](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2021/01/f7ff216f74868d28a422468c5c6e4c87-1.jpg)
おっと、注文したベトコンラーメンが目の前に運ばれた。たっぷりと盛られたモヤシと粒ごと入ったニンニク、これこそベトコンラーメンのビジュアルだ。まずはこの具材からいただく。口の中に入れた途端、ニンニクと唐辛子のパンチがガツンと響く。
![たっぷりのニンニクが入る](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2021/01/0d988dd514b7b77ed2f44f68cf802597-1.jpg)
また、ニンニクを頬張るとジャガイモのようなホクホクの食感。ほのかに甘みがあり、頭のてっぺんから足のつま先まで全身くまなくパワーが満たされていくような感じ。グラスに残っていた2杯目のレモンチューハイを一気に飲み干した。プハーッ、旨いっ!
次にスープをひと口。うん、ニンニクのパンチと野菜の旨みがしっかりと溶け込んでいる。飲むごとにパワーがチャージされるような気分になる。ちなみにスープのベースは、鶏ガラと豚骨。澄んだスープから丁寧に下処理をしてあるのが伝わってくる。きっと、醤油ラーメンで食べたとしても十分に美味しいと思う。
![麺はつるっとした食感。鶏ガラと豚骨がベースのスープも旨い](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2021/01/3f51fa91945a5e8efa907746dabff497-2.jpg)
そして、具材とともに麺をすする。うん、麺の一本一本にも野菜とニンニク、スープの旨みが絶妙に絡んでいる。味そのものは台湾ラーメンと似ているが、身体の表面ではなく奥の方からじんわりと熱くなってくる。例えるならば、銭湯と温泉の違い。同じお風呂でも温泉の方が身体の芯から暖まるのである。もちろん、ベトコンラーメンは後者だ。
会計を済ませて外へ出ると、冷たい風が吹いていた。しかし、身体はポカポカしているのであまり寒さを感じない。これがベトコンラーメンの醍醐味だろう。ご馳走様でした。
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