ギミック感あふれるツールにときめいた世代のための「ペン磁ケシ」(ひとりと文具 11)
世代的な話ではあるが、『DANRO』読者は小学生の頃に「多面筆箱を持っていた/欲しかった」という層が多いのではないだろうか。
平たい直方体のあちこちが磁石式のフタでパカパカ開いて、いろんな場所に文房具が収納できるという、ある意味、文房具の秘密基地みたいなヤツ。特に有名なのはサンスター文具の「マチック筆箱」シリーズで、最大で9面がパカパカ開くというから、壮絶だ。
筆者もまさにそういった多面筆箱ドンピシャ世代。最も多感な頃にそんなおもちゃみたいな筆箱を使っていたものだから、未だにギミック感のあるツール類を見るとときめいてしまうのである。
例えば消しゴムも、特殊な機構を備えたものが現代の子どもたちにウケている。2018年に発売されたクツワの「磁ケシ」は、消しゴム自体に微細な鉄粉を練り込んであり、机に散らばった消しカスを強力磁石で吸着して一気に掃除ができるという代物。
このギミックの面白さはなかなかのもので、消しカスがスルスルっと集まってくる様子は、大人でも興奮してしまうぐらいである。
ただ問題は、見た目があまりにも児童用に寄りすぎていて、いい歳をした大人がペンケースに忍ばせておくにはちょっと気恥ずかしい、ということ。
「こういう面白いの、使ってみたいけど……他人に見られたら恥ずかしいかなー」とモジモジしていたら、なんと今年になって、大人でも使えそうなバージョンアップ版「ペン磁ケシ」が登場したのである。
これなら見た目をあまり気にせずに済みそう! ということで、ギミック文房具大好きな大人に紹介したいと思う。
子供の頃、砂鉄をくっつけて遊んだあの感じ!
「ペン磁ケシ」(クツワ)は、その名の通り、従来版「磁ケシ」のペン型タイプとして開発されたもの。
シンプルなデザインで、かつロゴとノックボタン以外は黒一色。これなら大人のペンケースでもさほど違和感なく入るんじゃないだろうか。
軸のノックボタンをカチカチと押すと、先端から棒状の黒い消しゴムが顔を出す。この消しゴムは直径約5ミリと細いので、書類の一文字だけを狙って消したり、手帳のこまかな書き込みを消すのにも最適である。
「この手のギミック系は能力が劣るから、なかなか消えないんじゃないの?」と思われるかもしれないが、正直、その感覚は古い。古すぎる。この数十年における素材や技術の進化は著しく、消字力は普通の消しゴムと比較してもなんら遜色はないのだ。
試しに、ペン先から出た消しゴムの先端で鉛筆やシャープペンシルの筆記線をコシコシと軽くこすってやれば、それだけですっきりと気持ちよく消せるはずだ。
ちなみに消す際は、ノックボタンを2回押して出すぐらいが消しゴムの長さとしてベスト、とのこと。それ以上だと消している最中に消しゴムがポキリと折れることもあるので、あまり欲張らないほうが良さそう。
で、紙面に残った消しカスは、軸を持ち替えてノックボタンを近づけるだけで、ススッと勝手にくっついてくる。後端に内蔵された強力なネオジム磁石が、消しゴムに練り込まれた鉄粉を吸着しているのである。
これがもう、とても気持ちいいのだ。子どもの頃、磁石で砂鉄をくっつけて遊んだ人なら分かるだろう、あの感じ。
集めた消しカスは、ゴミ箱の上でクリップ/転がり止め兼用のU字型パーツを手元にスライドさせると、磁石が引き離され、消しカスだけがパラッと落ちていく。
細かい消しカスも、手で床に払い落とすことなく一網打尽。机上のお掃除があっという間に完了するわけだ。
例えば客先で消しゴムを使ったとき、絨毯の上に消しカスを落とすのは気が引ける、なんてこともあるだろう。そういう場合も、集めた消しカスをいったん自分のペンケースにでも捨てておくなどすれば、安心である。
消しゴムとしての性能は充分以上、消しカスを集めて捨てるギミックも楽しく、さらに周囲を汚さないマナー的な面にも配慮……と来たら、むしろ大人だって使わない意味が分からないレベルだろう。
なにより、商談中に使って「えっ、なにそれ!?」と食いついてくるタイプの相手なら、それは間違いなく話が合う人だ。その後の仕事もスムーズに進むんじゃないだろうか。
仕事で鉛筆やシャープペンシルを使う人なら、まず試しに1本、ペンケースに入れてみて欲しい逸品である。