「青い森の幸せな畑」美しい名前の土地で「こだわり料理」を提供するイタリアンレストラン
青森県の閑静な住宅街に、鮮やかな緑色の壁に囲まれた個性的なイタリアンレストランがあります。
店の名前は「konkitchen(コンキッチン)」。オーナーシェフの今計実(こん・かずみ)さんが11年前に開いた店です。
住所は、青森市幸畑。
「青い森に、幸せな畑。こんな美しい地名って、そんなにないと思うんですよ。ここで食事をして幸せな気持ちになってほしいという気持ちで店を始めました」(今さん)
「プリンセスのドレス」のようなオムライス
ランチの一番人気は「プリンセスオムライス」。ゆったりしたスカートを思わせる綺麗なドレープ(ひだ)が特徴です。
名付け親は今さんの娘さん。まだ保育園に通っていたころ、「まるでプリンセスのドレスみたい。だから、プリンセスオムライス!」と命名しました。
優雅なドレープは、今さんが腱鞘炎になるほど試行錯誤を繰り返して生み出されました。
材料の卵は、青森市の北隣にある蓬田(よもぎた)村から仕入れています。他の卵と違って、鮮やかなオレンジっぽい色が特徴で、オムライスに華やかさを加えます。
何日もかけて煮込んだデミグラスソースとの相性も抜群です。
誕生日や結婚記念日にふさわしい「こだわり素材」のフルコース
ディナーのフルコースでは、今さんが厳選した食材が使われます。
「魚は定置網で採ったものか、一本釣りでとったものかで、鮮度が違いますからね。野菜も農薬を使っているかどうかにこだわっています」
客の好みに合わせた配慮も欠かしません。
「中国のお客さんだったら、オイリーで辛いものが好きだろうなとか、細やかに気配りしています」と妻の知依さんは話します。
今さんのこだわりがつまったメニュー。誕生日や結婚記念日など節目の日に注文するお客さんが多いそうです。
店内の一角には、黄色いミモザの花が飾り付けられています。3月8日の「国際女性デー」のシンボルとして知られる花ですが、konkintchenを訪れる女性客への心配りです。
長期入院生活を経て「自分の店」を開業
店主の今さんが料理に目覚めたのは、小学生のころ。大好きな祖母が、自前の畑で育てた野菜を使って、家族や親族に料理を振る舞っていました。その姿を見て「かっこいい」と思ったそうです。
高校は調理科のある学校に進み、卒業後、レストランや居酒屋で実践的な経験を積みました。
そんな今さんに転機が訪れたのは、26歳のとき。大病にかかり、1年以上の入院生活を強いられます。
病院食しか口にできない生活が続き、自分の好きなものを食べられることのありがたさを痛感しました。
「自分が経営する店で、自分が納得する料理を出して、お客さんに喜んでもらいたい」
そんな思いが高まったのです。
「お店を開いてもいいんじゃない?」。妻の知依さんの言葉にも背中を押され、開業を決めました。
「食事は一番身近な娯楽」
イタリアでは、食事は大切な相手とのコミュニケーションを深める重要なツール。時間をかけて料理を楽しむ人が多いといいます。
そんなイタリアの食文化が大好きな今さんは、konkitchenでも丁寧に食事を味わってほしいと願っています。
「食事って、一番身近にある娯楽だと思うんですよ。料理を通して、食に対する考え方をもっと伝えていきたいですね」
(取材・撮影・執筆:なほ)