「妄想旅行学習法」で中国の世界遺産に行ってみた(僕の中国語独学記 6)
前回のコラムで紹介したように、コロナ禍で海外に行けなくなった僕は「妄想旅行」で中国語の練習をすることにした。
脳内で再生したのは、2007年ごろに行った中国の成都での記憶だ。泊まったのはドミトリーの宿。夜が明けると、僕と友人は早朝から、世界自然遺産の観光地である黄龍と九寨溝へ向けて出発した。
中国語しか通じないバスに緊張して乗り込む
おはようと友人や同じドミトリーの人たちに挨拶する。「おはよう」は、中国語で「早上好」(zao3 shanghao3)だ。早速タクシーでバス(巴士)が停車しているターミナル(终端)まで向かった。
タクシーは中国語で出租车」(chu1 zu1 che1)。道で拾ったが、宿のフロントで呼んでもらえばよかった。フロントに頼むときは、「请叫辆出租车」(タクシーを呼んでください)と言えばいい。
タクシーのなかで、僕らは結構緊張していた。なぜなら、これから乗るバスのガイドは、中国語しか話せないということが、事前に分かっていたからだ。
では、なぜそんな不自由なバスツアーにしたのかというと、飛行機(飞机)で行くツアーがバカ高かったからだ。とても手の出る金額じゃなかった。中国語で死心塌地(お手上げ)だった。ちなみに、大丈夫は「好的」(hao3 de)だ。
お目当てのバスをなんとか見つけたが、ガイドが何を言っているのかさっぱりわからない。たぶん、「差不多到时间了,上车吧」」と言ったのだろう。「そろそろ時間なので、バスに乗車してください」という意味だ。
ぞろぞろと人がバスに乗り始めた。
宿でバスを予約したのだが、中国では椅子の数が定員と合っていなくて、最悪座れない場合もあるので、椅子は早めに確保しろと言われていた。だから、僕らは、バスの入り口付近でまだかまだかと陣取っていた。
そして、人が乗り出したので、僕らは、一目散に席を確保しようと乗り込んだ。ところが、ある中国人の女性が、ひとりで8席くらいの占有権を主張していた。いろんなところで、そういった現象が起きていて、僕らの席はすでになかった。
そして、僕はキレた。日本語の関西弁で「それはルール違反ちゃうんけ!」と怒鳴り散らしたのだ。そうしたら、仕方なくといった表情で、その中国人女性が、僕たちのためにふたつ、席を譲った。土壇場で役立つ関西弁。
次々とトラブルが僕らに襲いかかった
バスは僕ら以外、全員中国人だ。いきなりトラブルがあったものの、やっとバスは走り出した。
しかし困難は終わらない。途中でタイヤがパンクし、トンネルで1時間以上、立ち往生。その後も、雨が降ってきたらバスの天井から雨漏りがして、髪の毛が水浸しになってしまった。
さらに酷いことに、昼食で立ち寄ったホテルの中華料理が激マズなのだ。どうやったら中華料理を不味くできるのか、教えてほしい。僕は常日頃、中華料理は芸術だと言っているのに!(我说中国菜是一种艺术形式!)
やっとのことで、目的地に着く。だが世界遺産なのに、案内の看板には中国語しか書かれていない。大小さまざまな湖や池が点在する九寨溝は広大すぎて、バスで移動するのだが、中国語が理解できないのでどこに行くのかわからない。
ガイドに聞こうにも、中国語でしか答えが返ってこない。この時点で、僕らはすでに絶望的な気分になっていた。しかし、奇跡的にバスは、九寨溝の青い池に到着。僕らはその美しい景色を堪能した。
中国人たちは、写真を撮るときのポーズが、太極拳をやるときの構えを大げさにしたもので、凄いとしかいいようがなかった。日本人の僕らからしたら、少しクレイジーとも言えるものだった。
もう一つの美しい峡谷・黄龍は、徒歩で高いところまで登って観た。実に素晴らしい景色だった。さすが、世界遺産。僕らは満足して、この場を後にした。我们非常高兴!(すごく楽しかった!)
こんな風に、過去の中国旅行を思い出しながら中国語を口に出してみる。それが「妄想旅行で中国語を学ぶ」ということだ。
どうでしたか? 誰でも様々なシチュエーションを思い出すことによって、妄想学習ができると思うので、チャレンジしてみてください!
次回のコラムからは通常モードに戻ります。中国語を学ぶときに訪れるハプニング、楽しみにしていてください。