海外ドラマで知った「ブラジリアンワックス」42歳のおっさんが「VIO脱毛」体験してみた
「ブラジリアンワックス」に男性向けのものがある、と知ったのは、2019年に入ってからでした。ブラジリアンワックスとは、粘着性のあるワックスを温めて下腹部などに塗り、冷え固まったら一気にはがす脱毛法をいいます。かつて海外の人気ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」で、女性がこの脱毛を行う場面があり、そこで知った人も多いでしょう。
筆者、42歳。昨年は男性向けのネイルサロンや眉毛サロンを体験取材しましたが、最近は忙しさにかまけて、美容への関心を失っていました。今回、男性向けブラジリアンワックスがあることを知ったのも何かの縁と思い、いわゆる「V・I・O」すべての箇所の脱毛に挑みました。
「V」とは下腹部の一帯。足の付け根のあたりです。「O」はお尻の中心近くを指し、「I」は「V」と「O」をつなぐ部分をいいます。
「痛そうで怖い」と思っていたが・・・
訪れたのは、東京・新宿にある「ROMEO’s Wax(ロミオズワックス)」という店です。小さなビルの2階にありました。通りの看板を目印に、中に入っていきます。
おそらく、男性がブラジリアンワックスに対して抱くイメージの多くは、「痛い」というものでしょう。ドラマでも、ワックスをはがすたび、女性が悲鳴をあげていました。筆者にもその印象があったので、若干の怖さがありました。
入口のインターホンを鳴らし、ネットで予約したことを告げると、スタッフの女性・岩田絢音さんに、そのまま個室へと通されました。美容院などのような受付がないのは、他の客と会わずに済むための仕組みだといいます。
ここでカウンセリングを受けます。痛みは耐えられないものではないこと、身体の赤みは数日で消えること、施術をうけた当日は温泉・サウナ・プールを避けること……等々。この店では30代を中心に、学生から高齢者まで、月に150人以上の男性が利用しているそうです。
カウンセリングでは、希望する「ヘア」のスタイルを伝えます。男性の場合、ヘアを逆三角形や四角形で残すことが多いようですが、店としては「全取り(ヘアすべてを脱毛)がおすすめですよ」とのこと。
何もかもが初めての経験で、正直、痛みに耐えられるのか不安でしたが、あとに続くであろう男たちのためだと自分を奮い立たせ「全取り」でいくことにしました。
岩田さんはいったん部屋を退出。筆者は、下半身だけ下着を含めすべての衣服を脱ぎます。そのままベッドに仰向けの状態で横たわったら、大切な部分にタオルをかけ、備え付けのボタンを押します。これを合図に、岩田さんが再び、部屋に現れました。
マスクにゴム手袋という姿のせいか、ドキドキするというよりむしろ、「この人に身をゆだねることになるんだ」という緊張感で、身が引き締まる思いがしました。いよいよ施術です。
ペトペト、ベリッ! テンポよく進められる施術
タオルがひらりとめくられました。岩田さんの指示に従い、片足を折り曲げ、外側に倒します。VとIのあたりに消毒液とパウダーが塗られます。そして、ワックスが塗られました。ワックスは35度以上あるといい、局地的に感じるせいか、温かいというより少し熱いくらいです。
続けて、少し離れた部分にまた、ペタペタとワックスが塗られる感覚がありました。ここを塗り終えるころには、1カ所めのワックスが固まっています。岩田さんはこれを「バッ!」と勢いよくはがしました。
わはは! 思わず笑ってしまうような痛みがあります。我慢できないほどではありませんが、まったく痛くないわけでもありません。ただ、同じ場所に布テープを貼ってはがすことを想像すると、ワックスのほうが何倍も楽です。岩田さんがヘアの流れに沿ってはがしてくれたからかもしれません。
余談ですが、後日ひとりでバーに行ったとき、隣の席の女性に「僕、ブラジリアンワックスをしてきたんですよ」と誇らしげに語ったところ、「私もやりましたが、思わず笑ってしまいますよね」と返ってきました。「笑ってしまうような痛み」という感覚は、多くの人に当てはまるものかもしれません。
ただ、現場ではそんなことを考える余裕はありません。また違う部分にワックスが塗られ、ひとつ前に塗ったワックスをはがすという作業が繰り返されていきます。ペトペト、ベリッ、ペトペト、ベリッのリズムです。
岩田さんによると、筆者は「毛量が多い」ものの、脱毛しやすく、1カ所につき1回「ベリッ」をやれば十分とのこと。この点については個人差があるそうです。リズムよくはがされているうち、少しずつ痛みに慣れていきました。
10分近くこれを繰り返したのち、曲げていた足を伸ばし、今度は反対側の足を曲げます。施術中、筆者は気を紛らわすために岩田さんと話していましたが、なかにはスマホで動画を観る余裕のある人もいるそうです。
また、避けて通れない話題なので触れますが、男性には施術中、いわゆる「無」の状態でいられるかという不安があるのではないでしょうか。筆者の場合は、下半身だけ何もまとっていないという特殊な状況に置かれたせいか、あるいは、テキパキと効率よく施術されたせいか、雑念が生じる隙はありませんでした。
20分ほどかけ、「V」と「I」部分の脱毛が完了しました。取りきれなかったヘアは、毛抜きで抜いてもらいます。
残るは、うつ伏せになって施術してもらう「O」部分ですが、筆者の気持ちとしてはすでに最大の「峠」を越えているので、リラックスして受けることができました。最後にオイルで残ったワックスを拭き取ってもらい、美容液を塗ってもらったら、完了です。筆者の場合、全工程で40分ほどでした。
男性向けのワックス脱毛を利用する意外な人たちとは?
最後に、手鏡を借りて脱毛した部分を確認します。驚くほど「さっぱり」していて、まるでそこだけが自分の身体ではないような、今まで味わったことのない感覚をおぼえました。
このとき、脱毛したカ所に一部、肌の赤みがありましたが、翌日には引いていました。一帯の毛穴が開いた状態になっているため、風呂あがりに化粧水などを塗って保湿するよう言われました。なお、今回の工程は、女性への施術と同様ということです。
衣服を身に着けたら、ここでお会計。最初から最後まで個室内で済みます。料金は、初回お試し価格ということで7980円(税込)でした。2回目以降は9980円(税込)で、だいたい1カ月から1カ月半後の利用を勧められました。ある程度の間隔がないと、ヘアが短く、ワックスでの脱毛が難しいとのことです。
この男性向けブラジリアンワックス、さぞ美容意識の高い男性が利用しているのかと思えば、そうとも限らないと言います。
「この時期は、外回りの営業や工事現場で働く方など、暑い季節に外で働く男性が多くいらっしゃいます。皆さん、ヘアがあると『蒸れる』とおっしゃるんです」。5月の大型連休中は、予約が特に多かったそうです。
なるほど毛量が多い筆者も、夏になると「蒸れる」ほどでなくとも、不快感を抱くことはありました。「きれいさっぱり」な状態になった今、それだけで涼しく感じられるというのは容易に想像できます。パートナーのための「見せる」脱毛でなく、自分自身が快適に過ごすために脱毛する人が多くいるというのは、新たな発見でした。
また筆者としては、「怖い」「痛い」と思っていたブラジリアンワックスが、実際はそれほどでもないとわかり、どちらかといえば終盤はリラックスして臨めたことで、自信がついた気がします。脱毛によって「生まれ変わった」というよりは、むしろステップを1段階上がって「大人になった」気持ちになったのが、自分でも不思議でした。