「皆さん、ギャル男になりましょう」笑いの絶えないシャンソン講座

「この発音は、ギャル男の相づちです。皆さんもギャル男になってみましょう」。そんなジョークがどんどん飛び出すのが、東京・神楽坂の商業施設「la kagu(ラカグ)」で開催されている講座「フランス語で一曲歌えるようになる」です。講師の中島万紀子さんがフランスの歌謡曲「シャンソン」の歌詞の発音を伝授します。参加者は最終的に1曲を歌えるようになるのが目標です。まるで一人漫談のような雰囲気で、会場は笑いが絶えません。6月中旬に開かれた10回目の講座にお邪魔して、中島さんに話を聞いてきました。

歌で言葉を覚えると早い

中島さんは早稲田大学などでフランス語の語学講師をしています。また、フランスの作家、レーモン・クノーの作品などの翻訳者でもあります。もともと歌が趣味だったそうです。バッハの合唱曲やフラメンコのカンテ(歌)などを歌っており、大学のフランス語の授業でも歌うことがあるそうです。

「歌で言葉を覚えるのは早いんですよね。洋楽を聞いて英語を勉強するみたいな。そういうノリでやっていけたらと思ったんです」

講座「フランス語で一曲歌えるようになる」講師の中島万紀子さん

この日の課題曲は『パリの空の下』。フランスのシャンソン歌手、エディット・ピアフが歌った名曲です。毎回、衣装にもこだわりがある中島さん。この日は初期のエディット・ピアフをイメージしたといいます。「知り合いのメイクの先生にお願いして化粧をしてもらって。ちなみに、この襟はネットで300円ちょっとだったんですよ(笑)」

「ふりがな」を読めば大丈夫

「フランス語で歌う」と聞くと、ハードルの高さを感じる人も多いかもしれません。しかし、中島さんは「最初はふりがなを読めば大丈夫」と言います。「一緒に歌ってもらって、発音を体感的にわかってもらえればいいんです。どうやって口の形を作るか、細かく説明しています」

とはいっても、そこで出てくるのはダジャレやジョークの数々。冒頭の「ギャル男の相づち」の他にも「同じアホなら踊らにゃ損々のソン」など独自の表現が連発します。「昭和ネタが多いですよ」と中島さんはいいます。

発音の説明であるものの、中島さんは全身を使ってダイナミックに表現します。講座というよりは、ダンスや演劇のパフォーマンスを見ているようです。笑っているうちに、フランス語の歌が歌えるようになってきます。

ふりがなつきの歌詞を見せながら説明してくれます。

フランス語の発音の仕方を説明するとき、赤と青に色分けされた独特の「ふりがな」を使います。これは中島さんが開発した独自の方法。「赤い字は口を緊張させる。青は脱力させます」。日本語を読んで、緊張か、脱力かを考えるだけなので、とてもシンプルです。「特許を取ろうかと考えてますよ」と笑いながら語っていました。

最前列に座っていた40代の女性(出版社勤務)は、「フランス語ができなくても歌えるようになる」との紹介に惹かれて参加しました。最初に来たときは、中島さんが先生だとは思わなかったそうです。「飾っておらずユニークな女性がいるなと思ったら先生だったんです」。このイベントがきっかけで、フランスの歌手・シルヴィ・バルタンの来日公演に行ったと語っていました。

笑いの絶えないシャンソン講座。「なぜこういうスタイルに?」。そう尋ねると、中島さんはこう語っていました。「来てくださる皆さん、ギャグが通じますね。楽しんでもらえたら嬉しいですね。シャンソンは、聞いているだけでなく、歌ったほうが面白い。一緒に楽しく歌ってもらえたらと思っています」

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