みんな恋愛のことばかり考えすぎじゃないですか?~「ぼっちの恋愛観」

世の中の人はなんで恋愛のことばかり考えているのだろう (イラスト・古本有美)
世の中の人はなんで恋愛のことばかり考えているのだろう (イラスト・古本有美)

「ぼっち」であることに誇りを持っている

「ぼっち」の恋愛観について書いてほしい、と言われてずいぶんと悩んでしまった。

「一人でいるのが好き」と色々なところでコラムを書き続けた結果、世間から「ぼっちの人」と認識されるようになった。そうなると、メディアなどで「恋人がいない」「未婚」「孤独死」といった文脈で取り上げられることが増えた。

しかし、私はこれには常々、違和感を覚えていた。恋人の有無や、未婚かどうかを憂うというのは、そもそも前提として「恋人がほしい」・「結婚したい」といつも思っている人だ。つまりこの場合、自虐の意味で「ぼっち」を使うわけである。「一人はダメ」、「一人はみじめ」、「友達が多くて、パートナーがいることこそが正しい」という考え方のもとに。

そうではない。私は「ぼっち」であることに誇りを持っていて、好きでそれを選んでいる。恋人がいようが、友人の輪の中にいようが、私は私である、というメンタリティー。「一人でいる」ライフスタイルを「悪」ではなく、肯定する自分でありたい、と思っている。その上で、恋愛や結婚についてが、心底どうでもいいのである。どうでもいい、というのは、「したくない」ではない。あればいいし、なければないでいい、という意味だ。

「30歳までには結婚」という価値観に疑問

女性誌が謳う「愛され女子」には、なぜいちいち媚びを売らなければならないのか、と思っていたし、「30歳までには結婚」というのも「だから何?」である。子どもがほしいと強く思っていて、年齢的な問題が最重要課題になるならばまだわかる。しかし、そうではない人まで「30歳」と言う。

冷静に考えてみてほしい。偶然、10進法が使われている今の世の中で、「30」がたまたまキリよく見えるだけではないか。もしこの世界で使われているのが7進法とかだったら絶対に30じゃなかっただろう。バビロニアとか、古代ギリシアとか、インド人とかが発見した数字の、10進法の、ただの「30」であろう。29歳から30歳になる、誕生日のたった一日の間に、人の体は劇的な変化を遂げるとでもいうのか。否。

また、幾度となくされてきた「結婚願望はある?」という質問も、よくわからない。「ある」というのが当然で、「ない」と答えるのは奇特な人間とでも言いたげな顔で人は問う。答えはいつだって、「ある」でも「ない」でもなく、「考えたことがない」だ。

みんな恋愛のことばかり考えすぎ!

世の中の人はなぜ、いつもこんなに恋愛のことばかり考えているのだろう。

バラエティーではグラビアアイドルが結婚願望について聞かれ、ワイドショーでは結婚や不倫のことばかり。飲み会へ行くときは恋愛話のひとつやふたつ引っ提げていかないといけない。そんなことより私はメタルキングを倒すことのほうが興味がある。恋愛の話に使う時間があったら、ドラゴンをクエストしたい。

「ぼっちの人」として認識されるようになって一番よかったのは、こういった世間での「恋愛」を中心にした価値基準から“降りる”ことができた点だ。「ぼっち」の看板を持って歩くことで、「触れてはいけない珍味」として扱ってもらえる。いいのか悪いのかわからないけれど、恋愛市場において「あ、自分、そういうんじゃないんで」と戦場に赴くことなく我が城に籠城していられるのはとてもラクだ。余は戦いなどしとうない。城の中に引きこもっていたい。「ぼっち」は恋愛戦線への赤紙が来ない免罪符! モテそうモテなそうというランク付けをされなくていい生活! ワンダフル!

自分を取り繕わなければならない恋愛は苦手

時代ごとに少しずつ移り変わりはあれど、「モテる顔」「モテるファッション」「モテる仕草」など、ある程度「モテ」の基準があり、人々はそれを目指して女磨きに邁進する。やりたくてやっているならばいいけれど、基本的には学校や会社という集団生活の中で、頼んでもいないのに勝手に戦場に引っ張り出される、という感じだ。いつだって品評の土俵に乗せられて点数をつけられるから、いい点数をもらうために、皆ロールプレイをしている。恋愛だけではなく、友人関係も、広げようとすればするほど、ロールプレイの側面が出てくるのではないかと思う。

人が一生のうちに本当に仲良くなれる人なんて一握りだ。性格、趣味趣向、バックグラウンドなど、相性を構成するバリエーションはあまりに多い。広く人に好かれようとすると、自分に嘘をつく要素はそれだけ増える。だから、私は大勢の人に囲まれてワイワイするようなタイプの人は苦手なのだ。その場で浮かないために、“無難でいる”ために、本心を何も言っていないように感じる。

髪を巻いて、ノースリーブのワンピースを身にまとい、「趣味はゲームです」とは口が裂けても言えないような恋愛は苦手だ。自分を取り繕わなければならないくらいなら、そんなものはなくてよい。次回からは、世間の恋愛に感じる疑問について、もう少し具体的に掘り下げていきたい。

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朝井麻由美 (あさい・まゆみ)

ライター/編集者/コラムニスト。著書に『「ぼっち」の歩き方』(PHP研究所)、『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA/中経出版)。一人行動が好きすぎて、一人でBBQをしたり、一人でスイカ割りをしたりする日々。

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