「ラブライブ!」マンホール汚損事件、容疑者逮捕でファン「一日も早い再設置を」

汚損される前の高海千歌のデザインマンホール(提供・あきらさん)
汚損される前の高海千歌のデザインマンホール(提供・あきらさん)

アニメやマンガ、ゲームなどの物語の舞台を旅する「聖地巡礼」。夏休みに入り、全国の行楽地では賑わいを見せています。

いま、一番盛り上がっている「聖地」はどこでしょうか。筆頭としてあげられそうなのが、静岡県沼津市です。人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」(以下「サンシャイン」)が2016年7月に放映されて以降、連日大勢のファンがこの街を訪れています。

こうした中、今年5月には「サンシャイン」のキャラクターが描かれたデザインマンホールが、沼津市中心部に設置されました。ところが3週間も経たないうちに、故意に傷つけられる事件が相次いで、一時的に撤去されました。先月、その容疑者が逮捕されたことを受け、マンホールの再設置を望む声が強まっています。

「サンシャイン」放送前から始まった沼津市の取り組み

伊豆箱根鉄道駿豆線を走る「サンシャイン」のラッピングトレイン(HAPPY PARTY TRAIN仕様)

「サンシャイン」は、9人の主人公たちが自分たちの通う高校の統廃合を阻止するために、スクールアイドルグループ「Aqours(アクア)」を結成し、活躍する物語です。「サンシャイン」の前身となる作品は、人気アニメ「ラブライブ!」。作品に登場したスクールアイドルグループ「μ’s(ミューズ)」の声優たちが、2015年の紅白歌合戦に出場するなど、社会的注目を集めました。

沼津市と「サンシャイン」の繋がりは、アニメの放送前から始まっています。企画が決定した段階から、「ラブライブ!」の次回作の舞台は沼津であると発表され、「Aqours」の声優が複数回、沼津市を訪れています。

伊豆箱根鉄道駿豆線では、アニメ放送前からキャラクターが描かれたラッピング電車が運行されているほか、放送後はバスやタクシー、そして船といったあらゆる乗り物で「サンシャイン」の姿を目にするようになりました。市内中心部の複数の商店街でも、キャラクターが描かれたタペストリーが飾られており、沼津市は「サンシャイン」一色となっています。

巨大タペストリーのもと賑わう沼津仲見世商店街
「ラブライブ!サンシャイン!!」のラッピングがされたボートと沼津市内浦地区(右奥)
「ラブライブ!サンシャイン!!」のラッピングバス

クラウドファンディングで設置されたデザインマンホール

桜内梨子のデザインマンホール(提供・あきらさん)

こうした中、2018年5月には主人公9人が描かれたデザインマンホールが、沼津市中心部で設置されました。設置にあたっては、インターネット上で資金を集める「クラウドファンディング」が実施され、沼津市の協力のもとファン主導で設置されました。開始30時間で目標額の2217万円を集めるほどの人気だったといいます。

ところが、このマンホールが設置されて3週間も経たないうちに、故意に傷つけられたり、白い塗料が塗られたりするといった事件が相次ぎ、一時撤去される事態となりました。市は沼津署に被害届を提出。警察による捜査が行われていましたが、7月2日、ふたを傷つけた器物損壊の疑いで、埼玉県春日部市と東京都練馬区の男子高校生2人が逮捕されました。25日には白い塗料を塗りつけた容疑で、埼玉県草加市の男子大学生も逮捕されています。

一日も早い再設置を望むファン

容疑者の逮捕を受け、沼津市は、マンホールの再設置について「なるべく早く再設置できるよう、安全性の確保や回遊性の向上の観点を踏まえつつ、場所や時期等を検討してまいります」とホームページに掲載しました。

再設置の時期は未定のようですが、ファンを中心にいち早い再設置を望む声が上がっています。「ラブライブ!」の長年のファンで、沼津市内浦でコスプレイベントの運営に携わる、あきら(28)さんはこう話します。

「マンホールは、『聖地』沼津へのファンの気持ちが形になったものなので、事件発生当初は憤りを覚えていました。でもこうして容疑者が捕まってよかったです。再発防止策をしっかりと練る必要がありますが、一日も早い再設置を楽しみにしています。沼津に通うファンは皆いい人なので、みんなで守っていけると信じています」

夏休みに入り、沼津市には「サンシャイン」のファンだけでなく、観光客や海水浴客など多くの人が訪れています。デザインマンホールは、こうしたファン以外の人たちにも、沼津が「聖地」であることをアピールするきっかけになるかもしれません。マンホールの再設置が待ち望まれています。

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河嶌太郎 (かわしま・たろう)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。アニメコンテンツなどを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「週刊朝日」「AERA dot.」「Yahoo!ニュース個人」など雑誌・ウェブで執筆。ふるさと納税、アニメ、ゲーム、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。DANROでは、アニメ・マンガ・ゲームの「聖地巡礼」について執筆する。

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