「片倉小十郎の城」でコスプレ体験 宮城・白石城(ふらり城あるき 5)
![白石城の大櫓で片倉小十郎のコスプレをした筆者](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2020/04/11744528/site_big/d0017d4906141aa6d323ac9b0c23d467.jpg)
午前6時半に目が覚めました。ここは宮城県南部にある白石(しろいし)市の温泉旅館です。前日に福島県で小峰城の取材をして、体力を消耗していましたが、不思議とあまり熟睡できなかったのです。昨日に続いて雨かと心配したけど、窓を開けると雨は止んでいました。ぶ厚い雲が空を覆っています。町をとり囲む山々には、朝霧がかかっていて頂上は見通せません。
知人の自動車に乗せてもらい、旅館から白石城に向かいました。車を5分ほど走らせて水堀を越えると、白石城の外郭に当たる「三ノ丸」部分です。
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白石市役所や病院など公共系の施設が建ち並び、城郭の名残は乏しいです。知人が通っていた高校の前を通ると、統廃合で廃校になっていました。
廃校の先には、こんもりした小高い山があり、いかにも城っぽい三階建ての「大櫓(おおやぐら)」が見えました。これは1995年に木造復元されたもの。小峰城の三重櫓と同様に、他の城の天守に相当する建物です。
土曜日だったので、市役所の駐車場に自動車を停めて歩きました。石垣と土塁に囲まれた丘を数分歩くと、本丸の前に到着です。
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大櫓がある本丸は、入場料400円です。券売機に並んでいると、年配の女性ボランティアが「無料ガイドするよ」と案内してくれました。
一国一城令の「例外」
白石城の歴史は古く、刈田氏が平安時代から居城にしていたと伝えられています。その後は伊達家の支配下に入り、安土桃山時代の1602年、伊達政宗の重臣である初代・片倉小十郎が城主となりました。
1615年に江戸幕府によって一国一城令が敷かれたあとも、仙台藩は例外的に居城の仙台城以外に城を持つことを許されました。白石城は、片倉小十郎を名乗る片倉家の子孫たちが十一代にわたって住み、仙台藩の南端の守りを固めたのです。
毎年10月の第一土曜日には「鬼小十郎まつり」が白石城の本丸で開催されています。「鬼小十郎」として名を馳せた二代目片倉小十郎(片倉重長)が、大坂方の真田幸村と激闘した1615年の大坂夏の陣を再現するそうです。
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幕末の戊辰戦争でも白石城が大きな役割を果たしました。新政府の圧力に対抗するために東北諸藩で「奥羽越列藩同盟」が結成。そのきっかけになったのは1868年に白石城で開かれた「白石会議」でした。
白石城には直接の戦火は及ばなかったけど、明治政府が「賊軍」の城を残すわけもありません。1873年の廃城令で、ほとんどの建物が破却されました。城跡に残る当時の遺構は、土塁と石垣だけです。
大櫓で片倉小十郎のコスプレをしてみた
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江戸時代の絵図や文献を元に木造復元された大櫓は、立派です。石垣の上端から高さ16.7メートルもあり、高知城の天守とほぼ同じ大きさ。真っ白で美しいですが、新築感は否めません。もう何十年かすると、風情が出てくるでしょう。
櫓の内部は木の良い香りがして、小峰城の三重櫓より一回り広いです。白石城は朴訥(ぼくとつ)な小峰城と違って、1階の奥にコスプレコーナーがありました。片倉小十郎や伊達政宗などの鎧武者や、戦国時代のお姫様の格好をして記念撮影できます。
ガイドさんの勧めもあって、知人と2人でコスプレしました。僕は片倉小十郎の格好です。しかし、甲冑(かっちゅう)が重い。10キロ近い重量。肩にずしりときました。
着せてくれた年配の男性は「本当はもっと重かったんだよ」と笑っていました。武将らしく模造刀を構えてみたけど、なかなか気恥ずかしかったです。
階段は急勾配だけど、小峰城よりは幅が広くて歩きやすかったです。これも観光に配慮した結果でしょう。3階には高欄(こうらん)がめぐらしてあって、白石市街を一望できました。「鬼小十郎まつり」では、この場所から忍者たちが下までロープで降りてくるそうです。
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白石城も東日本大震災の被害とは無縁ではなく、この大櫓も壁や瓦に被害が出ました。国の史跡に指定されておらず、国からの補助金はなかなか出なかったそうですが、全国から2000万円近い寄付金が集まりました。「片倉小十郎の城」として愛されていることが分かります。
ここまで僕らを連れてきてくれたガイドの女性が、台湾人の観光客に話しかけていました。「ここは武士が最後に防衛するところ。サムライ、ラスト、ヒアー、わかる?」。必死にジェスチャーしていましたが、残念ながらうまく伝わらなかったようです。
城を見終わったあとは車で移動しました。知人のオススメの白石名物「うーめん」で腹ごしらえです。9〜12センチほどの短い麺。油を使ってないのが特徴で、消化もいいとのこと。江戸時代には、片倉家や伊達家への献上品にも用いられたそうです。
麺自体の味は薄いけど、さまざまなダシの味を存分に吸い込んでいて、非常に美味しかったです。
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