鉄道路線の「乗りつぶし」 30代鉄オタが全国制覇できないワケ

現在でも長期的な運休が続く、日高本線・様似駅に停車中のキハ40=2013年11月撮影
現在でも長期的な運休が続く、日高本線・様似駅に停車中のキハ40=2013年11月撮影

鉄道をこよなく愛する鉄道ファン。さまざまなタイプのファンがいるのですが、列車に乗ることを主目的とする人達のことを「乗り鉄」と言います。

一口に「乗り鉄」と言っても、配備されたばかりの新型車輌に乗ることを趣味としたり、または廃止予定の列車に乗ることを趣味にしたり、あるいは時期限定の観光列車に乗ることを趣味にしたりなどさまざまで、ひとくくりにはできません。

中には、日本全国の鉄道路線に乗ることを趣味としている人もいます。これは俗に「乗りつぶし」と呼ばれています。

「乗りつぶし」を始めて7年、95%の路線を制覇

「乗りつぶし」をする人は少なくないようで、乗りつぶしを記録する専用のノートや専用サイト、アプリなどがあります。また、近年では「ステーションメモリーズ!(駅メモ!)」と呼ばれるゲーム形式のスマートフォンゲームも登場しています。

筆者も7年前から「乗りつぶし」を趣味としている一人です。元々はローカル線の旅を趣味にしていたのですが、鉄道路線の乗車記録を管理できるスマートフォンアプリに出会ったこと、そして鉄道路線を通じた日本の風景というものを、頭の中で繋げたいと思い立ったことから、本格的な「乗りつぶし」を始めました。

乗りつぶしの対象には日本全国のJR線だけでなく、私鉄や公営鉄道、路面電車やケーブルカーなどの軌道も入れています。

そんな中、筆者は、日本全国の95%以上の路線に乗車済みです。「ここまでくればもうあと少しじゃないか」と思う方もいるかもしれません。しかし実のところは、ここからが本当の戦いだと言えます。

只見線会津川口~只見間でも長期の運休が続く=2007年8月、只見線大白川駅(新潟県魚沼市)にて

全国にある“乗りつぶせない”路線

この夏、筆者は北海道の主要路線の乗りつぶしのために旅行をしました。JR北海道が発売する7日間有効の「北海道フリーパス」を利用して、5日間ほど旅をしました。道南方面は既に乗り終えていたため、残る道央・道北・道東のエリアを乗りつぶそうとしたわけです。

「北海道フリーパス」は特急の自由席も乗り放題の切符のため、一部特急が走っていない路線があるにせよ、主要路線は快適に乗りつぶすことができました。しかし、根室本線の東鹿越駅(南富良野町)~新得駅(新得町)間だけは乗れませんでした。2016年8月に発生した台風10号の影響で、不通となっているためです。

この他にも、苫小牧市から襟裳岬の手前までを結ぶ日高本線の、鵡川駅(むかわ町)~様似駅(様似町)間も、2015年1月に発生した高波による線路流失により、運行できない状態が続いています。幸いにして筆者は、日高本線については災害発生以前に乗りつぶせていたのですが、根室本線の一部区間については乗れずじまいでした。

乗りつぶし_4

この日高本線と根室本線の不通区間は、災害発生から2年以上が経った今でも、復旧工事の目処さえ立っておりません。仮に復旧を終えたところで、採算がとれるかわからないからです。まだ結論は定まっていませんが、このままバス転換し、廃線になるという議論も起きてます。

被災して鉄道復旧できずに、バス転換する場合もある=2014年5月、気仙沼駅にて

「乗り鉄」目線で見るとすれば、廃線にならない以上は鉄道路線として乗りつぶしの対象になるため、復旧して運行再開をするか、正式に廃線になるまで何年も「乗りつぶせない」ことになるわけです。

このような不通が続く路線は全国にあります。2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震などによって、全国に9路線ほどあったのですが、大変不幸なことに、2018年7月に発生した「西日本豪雨」や、9月に発生した台風21号、そして北海道地震などによって17路線増え、現在26の路線が「乗りつぶし」たくてもできない状況となっています(2018年9月18日時点)。

乗りつぶし_5

復旧で乗車できるようになった路線も

一方で、復旧によって乗車できるようになるケースもあります。福岡県久留米市と大分市を結ぶ久大本線が、2017年7月に発生した九州北部豪雨で一部区間が不通となっていたのですが、2018年7月14日に約1年ぶりに全線復旧しました。

主要路線である久大本線はこうして無事復旧できたのですが、同じ災害で不通となった北九州市と大分県日田市を結ぶ日田彦山線の添田駅(福岡県添田町)~夜明駅(大分県日田市)間は、復旧工事の目処さえ立っていません。復旧か、廃止してバス転換か、議論がまとまっていないためです。

鉄道路線の「乗りつぶし」を趣味として以来、いかに日本が自然災害大国であるかを痛感させられます。復旧して乗れるようになったからといって、油断してはいられません。乗れるにうちに乗っておかなければ、いつ災害が起きてまた乗りつぶせなくなるかわからないからです。

最後に、西日本豪雨をはじめ、大雨による自然災害の被害に遭われた方々、そして台風21号や北海道地震の被害に遭われた方々の一日も早い復興をお祈り申し上げます。

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河嶌太郎 (かわしま・たろう)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。アニメコンテンツなどを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「週刊朝日」「AERA dot.」「Yahoo!ニュース個人」など雑誌・ウェブで執筆。ふるさと納税、アニメ、ゲーム、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。DANROでは、アニメ・マンガ・ゲームの「聖地巡礼」について執筆する。

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