異色の劇団! 誰も見たことがない進化系「シチュエーションコメディ」を作りたい

「シチュエーションコメディというものを初めて観たんですけど何コレ最高に面白いんですけど!」

「最高だった。本当に最高。全てのシーンが完璧に面白くて笑い続けて泣いた」

「おもしろかったーー!もうすっごく!このスピード感とキレ!作家さん天才なの?」

今年1月、ツイッターで多くの人からこのような激賞を受けた芝居があります。東京の恵比寿・エコー劇場で上演された『わが家の最終的解決』です。上演したのは、アガリスクエンターテイメントという劇団でした。

この芝居が描くのは、第二次世界大戦の開始から3年後、ナチスドイツの支配下にあったオランダのアムステルダムです。主人公は一つ屋根の下に暮らす若い恋人の男女。ところが、女性は当時ナチスから迫害を受けていたユダヤ人、男性はナチスのゲシュタポ(秘密国家警察)というありえない組み合わせで・・・

『わが家の最終的解決』のあらすじ

このような状況を聞くと、第二次大戦下の「悲劇の恋物語」を想像します。しかし、『わが家の最終的解決』が特別なのは、この内容がすべて「コメディで描かれる」ということです。

ナチスの秘密警察で働く主人公が、恋人と結婚するため、恋人にも世間にも嘘をつかなければならない。そんなにもシリアスな状況なのに、腹を抱えるほど笑えて、最後は心を揺さぶられる…。そんな異色のコメディなのです。

この芝居の仕掛け人が、劇作家の冨坂友さん(33歳)です。

アガリスクエンターテイメントの主宰・脚本・演出を務める冨坂友さん

「三谷幸喜さんの作品を見て、こういうものが作りたいと思った」

このように活動の原点を語る冨坂さん。高校の文化祭で演劇に出会い、卒業後自らアガリスクエンターテイメントを立ち上げました。作り続けてきた演劇は、「シチュエーションコメディ」という、イギリスやフランスで発達した喜劇の一ジャンルです。

シチュエーションコメディとは、一つの場所で巻き起こる事件や状況で笑わせる喜劇。たとえば、「浮気相手がいる家に妻が帰ってきてしまう」「娘が連れてきた恋人がお爺さんだった」「殺し屋役の俳優が本当の殺し屋として雇われてしまう」というような、おかしな状況に置かれた登場人物たちが、右往左往することで笑いをおこすコメディです。

劇作家、映画監督の三谷幸喜さんは、その技法を取り入れて、コメディ作家としてヒット作品を数多く生み出しました。最近では、昨年社会現象となった映画『カメラを止めるな!』も、シチュエーションコメディの作品と言えるでしょう。

このように、日本でも人気のシチュエーションコメディですが、アガリスクエンターテイメントはそのなかでも、緻密に計算された伏線回収やワンシチュエーションの熱気の魅力で幅広い層から支持される、気鋭の劇団なのです。

『わが家の最終的解決』終演後の様子

「ゲシュタポの主人公(ハンス)が、ユダヤ人の恋人(エヴァ)を匿う、これ以上にギリギリの状況はないと思うんです。普通コメディで扱わないような題材だけど、これはシチュエーションコメディできる、やりたいと思っていました」(冨坂さん)

基本的にピンチの状況がよく描かれるシチュエーションコメディですが、『わが家の最終的解決』で主人公たちが直面するピンチは、重大な史実を舞台にしたものであり、圧倒的なリアリティがあります。

そこに、主人公ハンスと恋人エヴァのほか、ゲシュタポでありながらゲイであり密かにハンスに想いを寄せるルドルフや、ハンスとエヴァの結婚を認めない厳格な父オットー、ユダヤ人政策に強い信念を持つハンスの上司ゲルトナー、異常に押しの強い隣のご夫婦ヘルマン夫妻など、立場がバラバラの個性的な人々が登場します。

彼らや彼女たちが、自分の信念や愛する人を守るために右往左往し、一つの答えを導き出す物語は、コメディの「芝居」でありながら、どこか「こんなことが本当にあったかもしれない」と思わせます。

「シチュエーションコメディの群像劇は、うまくいくと“お話を見る”のでなくて、まるで“そいつらと会っている”かのように感じられるものになるのが好きです。戦争という大きな悲劇のなかだからこそ、“そいつら”の感情や人間味が笑いとなりえました」

そんな冨坂さんの言葉の通り、我々とは国も時代も違う極限の状況に生きるキャラクターたちがとても身近に感じられ、そのおかしさが愛らしく思えるような素敵な舞台でした。

まだ見たことのない“進化系シチュエーションコメディ”を作りたい

次回作『エクストリームシチュエーションコメディ(kcal)』の稽古風景

アガリスクエンターテイメントは4月6日から、次の作品『エクストリームシチュエーションコメディ(カロリー)』の上演を始めました。4月14日まで演じられるこの喜劇は、出演者が演技しながらいかに多くのカロリーを消費できるか、リアルタイムで活動量計によって計測・表示しながら競い合うというユニークな作品です。

「シチュエーションコメディというジャンルが万人に受け入れられるものだからこそ、なにか一つ独自の視点を持っていたい」と言う冨坂さん。

「この公演は『わが家の最終的解決』とは打って変わって、ストーリーというよりもスポーツや遊びのような作品です。6団体の合同公演ということもあり、『アガリスクにしかできないこと』を詰め込みました。ぜひ、バラエティ番組を見るような気持ちで劇場に足を運んでほしい」

テイストは前作と大きく違うもののシチュエーションコメディの手法で戦争を描いた『わが家の最終的解決』同様、冨坂さんのこだわりと挑戦に満ちた“進化系シチュエーションコメディ”が体験できるでしょう。

吉祥寺シアターで4月上演の「オフィス上の空」プロデュース公演

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