仕事は断らず、全力で。面白いから〜荒井宏之さんに聞く(後編)

荒井宏之さん(撮影・斎藤大輔)
荒井宏之さん(撮影・斎藤大輔)

フルタイムの会社員の傍ら、新人経営者の夜のメンターを始め、パラレルワークの道を歩むことになった荒井宏之さん。定時出社なし、仕事はミッション単位で引き受け、休みたいときに休む生活を支えるポリシーは「仕事を断らない、そして全力でやる」という、至ってシンプルなものでした。

【前編】パラレルワークで将来の不安消えた

チャンスは誰にでも来る

――プログラマーから始まって、経営者のメンター、人材研修、広報など多才な仕事をされていますよね。どうしたらそんなにいろんなことができるのでしょうか?

荒井:チャンスは誰にでも平等に来るんです。僕のように普通にサラリーマンをやっていた人でも来ます。大事なことは、チャンスが来たことに気がつくかどうか、そして躊躇せずに手を伸ばすかどうか。多くの方はチャンスが来た時に逃しているんじゃないかと思いますね。経験がない仕事のオファーは「やったことがありません」と言って断ってしまう。

でも、どんなプロでも最初は素人。僕はやったことのないことでも「~と~と~をやったことがあるので、できます」と答えます。そして必死でやります。

仕事は断らない、そして全力でやる。これが僕のキーワードです。

――できるかできないかではなく、やるかやらないか、ということですか?

荒井宏之さん(撮影・斎藤大輔)
荒井宏之さん(撮影・斎藤大輔)

荒井:そうです。僕が今までして来たことは、ほとんどが初めての経験ばかり、そして教わったことのないことばかりでした。

例えば、プログラミングを始めたのは中学校1年生のとき。英単語を学ぶ教材を、教頭先生が自分でプログラミングして作っていたのですが、それを見て興味が湧いて、自分も雑誌を買って研究して作り始めました。授業中、ノートにプログラムを書いたりしていましたね。もちろん学校では何も教わっていません。

――とにかくすぐやる、は中学生の頃から始まっていたのですね。

荒井:大学に入ってからは、たまたま大学の先輩にあたる不動産屋の社長さんから「ホームページ(HP)を制作してみない?」と言われたことがきっかけで、HP制作にハマってしまいました。当時は簡素なHPでも高額な請求をする会社もあって、中小企業は簡単にHPを作れなかったんですね。そこに商機があった感じです。

家に帰る時間がもったいなくて、ゼミ室に泊まって、近くのジムに入会してそこのお風呂を利用していましたね(笑)。多い月は20~30個ぐらい作って、500万円ぐらいの売り上げがありました。

その時だってもちろん最初は、仕事としてHPを作ったことはなかったんですよ。ただ、中学時代から趣味でプログラミングをやっていたのでできると思います、と答えただけで。

――就職活動はしなかったのでしょうか?

荒井:新卒で就職する時は法科大学院進学を考えていたのですが、絶対受かると思っていたのに(笑)、何と不合格。院試の結果の不合格が出た時にはもちろん、新卒の採用試験は終わっていました。

そこで、2月の2週目に中途採用の枠で6社試験を受けてみたのですが、6社とも合格してしまいました。社会人経験はありませんが、個人事業主としてずっとHPを作って来たので、と面接で答えていたら、すべての会社に受かったんですよ。そして、2月の3週目には入社して働いていました。

――社会人になってからも同じですね。

荒井宏之さん(撮影・斎藤大輔)
荒井宏之さん(撮影・斎藤大輔)

荒井:そうです。メンターをやらないかと言われた時も、ベンチャーキャピタル(VC)に勤めていた訳ではないし、上場経験があるわけでもない。その時はメンターという言葉すら知りませんでした。研修や人材評価の仕事をいただいた時も、上司としての経験しかありませんでした。広報の仕事ももちろんそう。

でも、一つ一つ経験を積んでいくことで、自分にできることが増えて、自分に価値がつく。そうやってパラレルワークが可能になったんです。戦略的にキャリアを積んだわけではありませんが、積み重ねの結果を次へつなげる方法は、早い段階から考えていたと思います。

――ところで、今日もそうですが、いつもピンクの洋服を着ているのはなぜでしょうか?

荒井:セルフブランディングです。ゲーム会社の次に転職した会社の社長に命じられたのが、広報の仕事だったのですが、経験はありませんでした。記者の方を紹介してもらったり、勉強会に出席したりして、メディアの方々と何とかして関係を築こうと努力していたのですが、興味を持ってもらえず、顔を覚えてもらえなかったんですね。

荒井宏之さん(撮影・斎藤大輔)
荒井宏之さん(撮影・斎藤大輔)

占いの会社だったので姓名判断をして「荒井宏之、」という名刺を作ってみたこともありました。縁起の良い画数にするには、姓名判断で1文字足りないということがわかったので。

――俳優の藤岡弘さんの「藤岡弘、」のような感じですね。

荒井:そうです。でも、効果がありませんでした(笑)「これ何ですか?」とは聞かれましたが、すぐ覚えてもらえるものでもなかったんですよ。

そんなある日、広報関係者の勉強に行った時に、ピンク色のベストを着ていたことがあったのですが、これは目立つなと気が付きました。広報の女性はおしゃれで華やかな雰囲気の方が多いのですが、男性はダーク系のスーツの方が多いですよね。それからピンク色の服を着るようになりました。

――確かにピンク色は目立ちますね。

荒井:以来、洋服はピンク色で、名刺交換の時にも「いつもピンクの服を着ているので、よかったら覚えてください」と言っています。そしてFacebookにはビジネスについての真面目な意見を書くんです。そうすると、何かきっかけのあった時に覚えてくれていて、声をかけて頂ける、といういい流れが今はできています。

やりたいことをやる。会いたい人に会いに行く

――ちなみに、パラレルワークに向いている人はどんな人ですか?

荒井:好奇心旺盛で圧倒的行動力を持った人でしょうか。面白いと思ったらやる、会いたいと思った人がいたらすぐに会いに行く。

複数の仕事をしていますが、収入を得るための「サブワーク」だと思ってやっていることは一つもありません。副収入という考え方は時間の切り売りでアルバイトと変わらず、自分の価値の向上にはつながりませんよね。

荒井宏之さん(撮影・斎藤大輔)
荒井宏之さん(撮影・斎藤大輔)

収入のための仕事はなるべくやらない。だからこそ自分の価値も上がって、収入が上がっていくのだと思っています。経験やスキルアップを目的ともせず、ただ面白いからやる。そして自分の市場価値を確かめるためにまた別の仕事をする。その繰り返しが市場価値の上昇を生んでいます。

――ひとりで何か始めてみたい、と思っている方にアドバイスはありますか?

荒井:一番簡単な最初の一歩は、自分の得意分野で情報発信することだと思います。ブログやSNSに何か書いてみる。これなら誰でもひとりで簡単にできますし、情報発信をし続けると、周りがプロと誤認してくれます(笑)。

周りに認識してもらって後から自分を追いつけても、成果物さえ整えればよいのです。それが成長の機会になる。とにかくやりたいことをやって、会いたい人に会いに行く。ただそれだけだと思います。

【前編】パラレルワークで将来の不安消えた

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