もう指ナメでドン引きされない 「湿潤器」で指先に潤いを(ひとりと文具 4)
ある日を境にストン!と音を立てて気温が落ち、いきなり過ごしやすくなった。突然の秋だ。
文房具ライター的には、秋は手帳シーズンだったり新製品ラッシュが続いたり、とそれなりに騒がしい時期ではあるのだが、それでも夜には窓を開けて、部屋に涼しい風を入れつつ、ひとりで本でも読もうか、というゆとりがある。
読書といえば、四十を過ぎたあたりから、ちょっと困ったことが発生している。指先からアブラっ気が抜けたせいで、本のページが極端にめくりにくくなっているのだ。
以前までは、職場の上司が書類をめくる際にいちいち指をぺろっと舐めるのを見て「うわぁ…」と辟易していたのだが、なるほど、あれはこういうことだったのか、とようやく得心がいった。
紙の上を指が上滑りしていくあの感じは非常に不愉快だし、また、面白い本を読んでいるときなど、早く次のページをめくりたいのにめくれずイライラが募る。
そこで最近は、読書の共としてテーブルの上に湿潤器を加えることにした。これひとつでずいぶんとストレスが減り、ページをめくる速度も上がるのである。
最新の湿潤器は「最適湿度」を保つ
湿潤器といってもピンとこないかもしれない。他にも「切手濡らし器」「スタンプ・モイスチャー」「海綿入れ」「事務用スポンジ」と名前はいろいろあるが、ようするに郵便局の窓口なんかに必ず置いてある、水に浸したスポンジである。
このスポンジの水分によって、紙をめくる指先や切手の裏側を濡らすというツールで、歴史的にも相当に古くからあるレガシーなもの。
そんな古めかしい道具に最新もへったくれもないだろうと思われるかもしれないが、さにあらず。
CHIRORIの「name LUNA(ネームルナ)」は、今年発売された進化版の湿潤器だ。ちょこんとかわいらしい三日月型をした陶器のケースは、秋の夜長の読書にもよく似合う。
この三日月の中央にある青い円盤をスッと軽く撫でると、うっすらと水分が付いて、カサカサの指先をほどよく潤してくれるという仕組みだ。
先にも述べたとおり、従来のレガシーな湿潤器はスポンジや天然の海綿などを水に浸して使う。
水をたっぷり含んだ状態はまだいいが、しばらくすると表面が乾いてくるので、指をグッと押しこんで水分を表面に染み出させないといけない。するとビシャッと溢れてきた水で指先はずぶぬれになってしまい、そのまま本をめくろうものならページの端がシワシワに。これは非常に使いにくい。
ところが「name LUNA」は、ケース内に水があるかぎり、円盤(吸水体)の表面は常にしっとりと適度にぬれている。ビシャッもずぶぬれも無しだ。
使う際には、まず三日月ケース内に水を注ぎ入れてから、青い吸水体をセット。この吸水体は多孔質の焼き物(おそらく珪藻土)なので、毛細管現象によりケース内の水分を吸い上げ、表面に導く仕組みである。
実際に水を注いでみると、乾いた吸水体の表面がじゅわっと潤っていき、最終的にはごく薄い水の膜が張った感じに。この水分の膜が常にキープされるので、触れるたびに、ちょうど紙をめくるのに良い程度の水分が指先に移るのだ。
いちいちスポンジを押し込むことを意識せず、触れるだけで常に多すぎず少なすぎずの潤いが得られる。これなら、意識を余分なことに取られる心配なしで読書に没頭できる。
読み進めて、スッと吸水体を指で撫でて、ページをめくる。スッ、めくる、のリズムがいちど身についてしまえば、もう無意識でどこまででも読み進めていけるはず。指先カサカサのストレスがないだけで、読書が本当に快適なのだ。
もちろん読書だけではない。職場のデスクにも一台おいておけば、若者に指ペロの瞬間を見られて「うわぁ…」とドン引きされる心配もないだろう。
これから冬に向けて、さらに肌が乾燥していく季節。指先の潤いに自信を失った我々世代にとっては、ビジネスの場でもプライベートでも、最新型の湿潤器がマストなツールになるのではないか。
ちなみに「name LUNA」という名前は、ローマ字読みの「舐めるな」が由来。これもダジャレ好きなオジサン世代の道具っぽくて面白い。