コロナワクチンの副作用とは? 米国で「ワクチン接種」を受けた歯科医が明かす体験談
新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるための切り札として期待される「ワクチン」。日本では2月中旬から、医療従事者向けにワクチン接種が始まりました。米国や英国、シンガポールなどでは、日本よりも早く、医療従事者や高齢者を中心にワクチン接種が進められています。
米国では昨年12月からワクチンの接種が始まりました。米国メリーランド州で歯科医師として働く私は、12月下旬と1月中旬にコロナワクチンの接種を受けました。そのときの体験と副作用の具体的な様子についてお伝えしたいと思います。
あくまでも私個人と周囲の人々の体験談ですが、これから日本でワクチンを受けようとしている方の参考になれば幸いです。
ワクチン接種はあっという間に終わった
私は、世界最古の歯科大学であるメリーランド大学歯学部に勤務しています。医療従事者で、エアゾルを使用する業務だったため、州内の接種開始からまもない12月28日に1回目のワクチン接種を受けました。ファイザー社製のワクチンです。
アレルギーの既往歴などを確認したうえで、看護師から上腕に筋肉注射をしてもらいました。ワクチンの量は一般的なインフルエンザワクチンよりも少なく、あっという間に注射が終わりました。
接種してから15分間は、看護師がいる部屋で待機していなければいけません。アナフィラキシーなどの重篤な副作用が出ないかどうか、確認するためです。特に問題が起きなかったので、そのまま帰宅しました。
ところが、接種した日の夜中、腕の痛みで目が覚めました。そのまま痛くて眠れなかったほどです。翌日も服を着たり脱いだりするのが大変なくらいの痛みがありました。これは、ワクチンの副作用ともいえますが、注射針のゲージが一般のインフル予防のものより太かったことも関係しているかもしれません。
一日たつと腕の痛みはおさまりました。私の場合、それ以外の副作用は特にありませんでしたが、周囲では、少数ですが39度台の発熱があった人や倦怠感が2〜3日つづいた人などがいました。
少なくとも私の周りでは、重篤な症状に至ったという話は聞きませんでした。そのため、「副作用については、そんなに心配しなくてもいいかもしれない」というのが、1回目のワクチン接種後の感想でした。
微熱や体の痛み、倦怠感がしばらく続いた
私が接種したファイザー社製のワクチンは、1回目の3週間後に、2回目の接種を受ける必要があります。それに関しては、米国食品医薬品局(FDA)が「2回目のほうが副作用が強く出る場合が多い」と発表しています。
そのため、2回目のワクチン接種の際には、翌日は出勤しないことを想定したり、イブプロフェンなどの鎮痛剤を服用したりすることが推奨されています。
ワクチンの副作用には、発熱や喉の痛みなど、新型コロナウイルスの初期症状と共通するものも含まれます。このような症状が出た場合、出勤できなくなる職場も多いので、ワクチン接種の翌日は出勤できない可能性があるということです。
私が2回目のワクチン接種を受けたのは、1月19日。副作用に備えて、接種直前から鎮痛剤を服用しました。さらに、翌日の業務をリモートに切り替えられるものにして、接種にのぞみました。
ワクチン接種の当日はなんともありませんでした。注射後にできるだけ腕を動かすようにしていたため、1回目のような腕の痛みも生じませんでした。
しかし翌朝、悪寒と体の痛みという高熱が出る直前のような症状があらわれました。そこで「職場に出勤しないほうがいい」と判断して、リモートワークに切り替えました。
動けないほど辛い状態ではないけれど、鎮痛剤を飲んでいるのに微熱がおさまりません。体の痛みや発汗、倦怠感といった症状が12時間ほど続きました。その症状は、風邪をひいたときと似たような感じでしたが、辛さについて、個人的には「ひどい二日酔いよりはまし」と感じました。
体温は37度台で、高熱というほどではありませんでしたが、私の職場は「微熱でも発熱があれば原則として出勤禁止」という規則だったため、自宅で仕事をすることにしたのです。
副作用の程度は人によって様々です。私の大学の関係者の中には、
・高熱と倦怠感で数日間、起き上がれなかった
・腋窩リンパ節が腫れて、数日間、腕を動かせなかった
・接種から数時間後に血圧が下がって、ERを受診した(65歳以上で基礎疾患あり)
など、顕著な副作用が出た人も、少数ながらいます。しかし「半日から一日程度の体調不良」を経験した人が多いように思います。
このようにワクチン接種の副作用は、個人間でかなり差があります。また、ワクチンのメーカーによっても差があり、接種の1回目と2回目でも差があることに注意が必要でしょう。
「ワクチンの副作用はそんなに心配しなくてもいいのでは」
私が新型コロナウイルスのワクチンを接種してから、1カ月以上がたちました。
米国では多くの人がワクチン接種を受けましたが、ファイザー社製・モデルナ社製ともに、特に2回目については、副作用が出たという人がかなりの数に上っています。しかし、ワクチン接種の人数が増えるにつれて、「多少の副作用が出るのは当たり前」と受け取られるようにもなっています。
私の勤務先は医療系の大学のため、各学年130人いる学生たちも順次、ワクチン接種を受けています。そのたびに学生たちから「私も具合が悪くなった」「俺も!」とか、「XXちゃん見てない?」「昨日2回目の接種をしたから休んでます」といった声を聞きます。
たとえるならば、風邪が流行したときの雑談と似たような感覚で、コロナのワクチン接種の話題が語られているのです。
それぐらい「コロナワクチンの副作用」が当たり前になっているわけですが、ワクチンを接種する場合、特に2回目の接種の際には、副作用が生じることを前提に準備したほうがいいでしょう。
具体的には、接種後1〜2日は自宅で療養できる備えをしておくことが望ましいです。体調不良でも口にできる飲み物や食べ物を用意しておくほか、鎮痛剤などの薬が手元にあると安心です。また、仕事を含めた予定についても、キャンセルの可能性を想定しておいたほうがよいでしょう。何の副作用も起きないこともあるでしょうが、備えあれば患いなし、と言います。
もちろん、新型コロナウイルスのワクチン接種は義務ではありません。接種後に多少の副作用が出るリスクはありますし、長期の副作用については未知数です。そう考えると、絶対に接種すべきと断言することはできません。接種するかしないかは、各自が判断すべきことです。
ただ、私は、自分と周りの人をコロナから守るための手段の一つとして、ワクチン接種を前向きに検討してもよいのではないかと考えています。接種すべきかどうか迷っている人から、副作用について聞かれたら? 私は「個人的にはそんなに心配しなくていいと思っています」と答えるでしょう。