毛が抜ける「衝撃」を体験してみた…1日に90人が利用する駅ナカの「鼻毛脱毛」

駅ナカの鼻毛脱毛、施術中の様子
駅ナカの鼻毛脱毛、施術中の様子

駅の構内、いわゆる「駅ナカ」に鼻毛脱毛の専門店があります。渡辺優弥さん(35歳)がひとりで経営する「ekibana(えきばな)」です。料金は1000円(税込)。施術はわずか数分だといいます。筆者はこれまで美容にまったく興味がなかった42歳のおっさんライターです。でも先日、取材で男性向けブラジリアンワックスを経験し、大人の階段をひとつのぼりました。その勢いで、鼻毛脱毛にも挑戦してみました。

鼻毛脱毛専門店「ekibana」は、複数の地下鉄の駅を、1週間ごとに移動して営業しています。5月はいずれも都営新宿線の駅で、馬喰横山駅(中央区)、市ヶ谷駅(千代田区)、新宿三丁目駅(新宿区)を巡回します。テレビ番組で店が紹介された際には「鼻毛が伸びるサイクルに合わせて移動している」と説明されていました。

筆者が訪れたときは、市ヶ谷駅の構内、都営新宿線の改札を出たところに、その小さな店舗はありました。

駅の構内に設置された小さな店舗

店主の渡辺さんに、初めて来たこと、取材で来たことを告げると、2つあるブースのひとつに通されました。「ブース」といっても、パーティションで区切った一畳ほどのスペースにイスが置かれたシンプルなものです。ここで、隣のブースのお客さんの施術が終わるのを待ちます。

ちなみに筆者は、鼻の毛に白いものが混じり始めたお年頃。ふだんは電動の鼻毛カッターで処理していますが、仕事中ときどき「あれ? このファサッ……という鼻の感覚、もしかして俺、鼻毛出てるんじゃ……」と不安になって、トイレに駆け込み確認することもしばしばです。

隣で施術するあいだにも、お客さんが次々とやってきます。渡辺さんは「20分ほどお待ちいただきます」、「30分ほどお待ちいただきますが……」と対応に大わらわです。あとで聞いた話では、筆者が訪れた平日の15時ごろは、それでも比較的空いている時間帯だそうです。

「鼻毛の脱毛は『マイナス』を『ゼロ』にするためのもの」

5分ほどで、筆者の順番がきました。まずは、鼻の穴の内側にオイルが塗られます。これは保湿のためのものだそうです。

「肌が乾燥していると(脱毛の)衝撃が大きくなるんです」と渡辺さん。木のヘラの先端に脱毛用のワックスを少しつけると、筆者の鼻の左の穴に差し込みました。温かなワックスの熱を感じます。続けて、右の穴にも同様にヘラが差し込まれます。ワックスは10秒ほどで固まるそうです。

ワックスがついたヘラを持つ渡辺さん

そして、筆者の鼻をつまんだ渡辺さんがひとこと「衝撃がきますよ」。

次の瞬間、バッ!と一気に左のヘラを引き抜きました。まさに「衝撃」。「痛い」と似ているようで、また違った感覚が鼻を襲います。抜き取られたヘラを見せてもらうと、数えきれないほどの鼻毛がついていました。

今度は、右のヘラが抜かれます。同じく「あっ!」と言いたくなるような衝撃があります。渡辺さんによると、脱毛を行うのは鼻の入り口付近のみ。鼻の奥は「必要な毛」として残しておくそうです。

ekibanaは2017年にオープン。脱毛サロンで働いた経験のある渡辺さんが、「靴磨きのような手軽さでできれば」と、東京都交通局と交渉したといいます。「僕自身、きらびやかな雰囲気が苦手だったんで、おしゃれ感を出すと敷居が高いと感じる人もいるだろうと思い」、現在の形態にしたそうです。

ちなみに、駅から駅へと一週間ごとに店を移すのは、その駅しか利用しない人にも立ち寄ってもらうため。それが、ちょうど鼻毛が伸びるサイクルと重なったのだと渡辺さんは教えてくれました。

施術の様子に話を戻しましょう。左右1回ずつ脱毛したあと、もう一度、同じことを繰り返します。1回目は穴の入り口付近の上半分を、2回目は下半分と、分けて行っているそうです。2回目の脱毛では、ちゃんと白髪も抜けていました。

「鼻毛は(他の部位の脱毛と異なり)『マイナス』を『ゼロ』にするためのものですから」と渡辺さん。「1本でも残っているとカッコ悪いんで」と、計4回のワックス脱毛のあとは、毛抜きで残った毛を抜いていきます。ワックス脱毛を何回やるかは、抜け具合などによって変わってくるそうです。

筆者の場合、これで脱毛はおしまい。再び鼻の穴にオイルを塗ってもらって、施術は完了です。最後に「毛穴が開いているため、汚い手で鼻を触らないように」との注意がありました。

いろいろと話を聞きながらだったため、施術時間は8分程度でした。そのあいだにも数名の客が店にやってきました。多くは会社員のようでした。

施術後の鼻の穴。入り口付近に鼻毛は見当たらない

サッと寄って、バッと抜く。人によっては、3分ほどで済む鼻毛脱毛。身構える前に終わってしまう印象です。

渡辺さんによると、今では1日に90人前後がekibanaを利用し、うち2割が女性だといいます。取材したこの日も、なにごともなかったかのようにブースを出ていく30代くらいの女性客を見ました。店構えがシンプルであるからこそできるわざなのでしょう。

リピーター率が8割以上と高く、近頃は「キャパオーバーになってきた」と、渡辺さん。新たなスタッフとともに2人体制で経営する準備を進めているとのことです。

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土井大輔 (どい・だいすけ)

ライター。小さな出版社を経て、ゲームメーカーに勤務。海外出張の日に寝坊し、飛行機に乗り遅れる(帰国後、始末書を提出)。丸7年間働いたところで、ようやく自分が会社勤めに向いていないことに気づき、独立した。趣味は、ひとり飲み歩きとノラ猫の写真を撮ること。好きなものは年老いた女将のいる居酒屋。

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