創業155年、服装チェックあり モナコ伝統のカジノに行ってみた

カジノ・ド・モンテカルロの外観=吉野太一郎撮影
カジノ・ド・モンテカルロの外観=吉野太一郎撮影

バーチャルカーレース「グランツーリスモ」の世界大会を取材するため訪れたモナコ。

モナコと言えばカジノです。ギャンブル大好きな同行者が初日から誘ってきます。

個人的にギャンブルはまったくやりません。麻雀、競馬、パチンコは高校、大学時代に通過儀礼として一通り手を出しましたが、初期の段階でまったく才能がないことを思い知らされ、のめり込む前に撤退しました。

ただ、カジノはモナコの数少ない観光名所でもあります。せっかく来たのだからと、カーレース終了後に、日本からの同行者3人と一緒に訪ねてみました。(取材・吉野太一郎)

断崖絶壁に建物が張り付くモナコの街=吉野太一郎撮影

人口約3万人。面積は、東京ディズニーリゾート2個分にあたる約2平方キロメートル。地中海に面した断崖絶壁の小国を、観光大国に変えたのはカジノでした。1863年に建てられた歴史ある「カジノ・ド・モンテカルロ」はかつて国家収入に多大な恩恵をもたらし、今もモナコの中心で富裕層や観光客を引き寄せています。

入り口には「黒服」が=吉野太一郎撮影

カジノは系列の他のホテルにもありますが、ここだけはドレスチェックがあり、入り口に服装チェックの「黒服」が立っています。公式サイトには「ジャケットとネクタイ必須」と書かれています。ネットの画像を見ていると、蝶ネクタイの超正装ばかり写っているので、びびって東京からいちばんいいやつを持参してきました。

カジノの向かいにあるレストラン「カフェ・ド・パリ」=吉野太一郎撮影

まずは向かいにあるレストラン「カフェ・ド・パリ」で腹ごしらえ。

カフェ・ド・パリのメニュー=吉野太一郎撮影

ハンバーガープレートが29ユーロ(約3700円)。物価が恐ろしく高いモナコです。

同行者の一人(左)とこんな格好で入りました=吉野太一郎撮影

いよいよドレスチェック。黒服の男性は私や同行者の服装を一瞥するなり、言いました。
「Oui Parfait!」(完璧だ)

同行者の1人がジャケットを持っていなかったので、仕事用に持ってきたもう1着を貸しましたが、ジーパンにスニーカー、ノーネクタイでもジャケットさえ着ていれば、ドレスチェックをパスできました。

カジノ・ド・モンテカルロの入り口=吉野太一郎撮影

カジノがある部屋への入場は18歳以上に限られ、外国人はパスポートが必要です。入り口で17ユーロ(約2180円)を払います。ここから先、目指すプライベートルーム(いわゆるVIPルーム)は撮影ができません。

ルーレット、ブラックジャック、スロットなど一通りありますが、その中でもひときわ目立つのが、部屋の中央にある木製のルーレットです。ここでチャレンジすることにしました。

装飾が美しいカジノ・ド・モンテカルロの室内=Photo by Getty Images

黄金色に輝く天井の装飾は美しく、うっとりと見とれてしまいます。しかしその重みがルーレットの上にのしかかり、初心者には何となく敷居が高い感じもします。

まずは100ユーロ(約1万3000円)を賭けました。

50ユーロ札2枚が、ディーラーによってテーブルの細長い穴に手際よく押し込まれ、オレンジ色のチップが20枚、マットを滑ってきました。つまり1枚5ユーロ。この薄いプラスチックのチップ1枚が、500円玉にほぼ等しいわけです。

ルーレット(イメージ写真)=Photo by Getty Images

ルーレットは、ビー玉大のボールをぐるぐる回る円盤の上に投げ入れ、最後にボールが落着する位置を予想して、その数字にチップを賭けるゲームです。

ややルールは複雑ですが、数字は0から36まであり、1つの数字だけに賭けて的中すると、1ユーロの賭け金に対して35ユーロの配当が支払われます。17・18と線の上に2点賭けなら17ユーロの配当。32・33・35・36と4点賭けなら8ユーロと配当金が下がっていきます。

ルーレット(イメージ写真)=Photo by Getty Images

当然、まんべんなく山を張った方が当たる確率は上がります。初戦、8枚を4点がけにしてみたところ、1枚がひっかかり、9枚のチップが戻ってきました。

熱くなってくると、このチップが500円玉だということは、きれいに頭から消え去ります。

写真はイメージ(Photo by Getty Images)

自分がチップをどこに置いたかは、自己申告です。私が当たったチップの場所を忘れた結果、誰も名乗り出ずに、ディーラーが「Qui?」(誰?)と呼んだことがありました。幅広く山を張ってチップを置いていると、こういうことも起こります。

周囲を見回すと、参加者は圧倒的に高齢の男性。私のような一見の観光客は遠巻きに見ている人が多数です。フランスの果てという地理的な理由もあるのか、アジア系、特に中国・韓国の人が極端に少ないのも意外です。

時間は流れ、順調に手持ちのチップが減っていき、気がつけばあと3枚。

ギャンブル狂の同行者が耳元でささやきました。

写真はイメージ(Photo by Getty Images)

「ディーラーの手もとをよく見るんだ。あいつら、どの番号が出るか、投げる前から分かってるんだ。そこを見極めろ」

いや、見極めろったって無理だそんなもん。そんなことを言っている同行者も、ハイリスク・ノーリターンの勝負を挑みまくってチップをどんどん失っているのですが・・・

こうなったら、有終の美を飾るほかはありません。

今年最下位に終わった阪神タイガース。物心ついて以来のファンとしては、福留(背番号8)、藤浪(背番号19)、糸原(背番号33)の3人に、来シーズンの活躍を期待して、残った3枚をそれぞれ「1目賭け」で託すことにしました。

すると・・・

糸原キター!!!=Photo by Getty Images

ボールが選んだのは糸原でした。来シーズンの選手会長、3人の中では順当な期待値です。やったぜ阪神タイガース。個人的には来シーズンこそ藤浪に期待しているんだけどなあ。

チップと現金を交換する換金所=吉野太一郎撮影

すでに同行者は100ユーロ札を3枚蒸発させており、まだまだつぎ込む気満々です。ここで一文無しになられたら面倒見るのは私なので、ひとまず撤収することにしました。換金すると、100ユーロが175ユーロに。1.75倍、まあまあのビギナーズラックです。

写真はイメージ(Photo by Getty Images)

マカオやラスベガスといったカジノのメッカで、最新式の機械に囲まれてお祭りのような高揚感を味わいながら…という雰囲気とはほど遠いモナコのカジノですが、歴史と伝統を味わうという口実のもと、一見さんの観光客にもさほど抵抗なく、たしなむ程度に楽しむことができました。

現在は改修工事のため実施されていませんが、午前9時から午後0時半までは、観光客を対象にした館内ツアーもあります。

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