「ひとり暮らしYouTuber」増加中 「古民家」の静かな生活を発信
コロナ禍の巣ごもり生活で「YouTubeの動画を観る機会が増えた」という人も多いでしょう。YouTubeにはさまざまなジャンルのチャンネルが次々と生まれていますが、「ひとりを楽しむ」をコンセプトに掲げるDANRO編集部が注目しているのが「ひとり暮らしYouTuber」です。
文字通り、ひとり暮らしの生活を動画で撮影して、自分で編集してYouTubeにアップしている人たちです。ひとりで食事をする様子やひとりで旅行したときの風景をあげている人もいれば、自分のひとり暮らしの生活について、淡々と語っている人もいます。
YouTubeでは、さまざまな形の「ひとり暮らしの世界」をのぞくことができます。そんな「ひとり暮らしYouTuber」をテーマごとに紹介していきたいと思います。
登録者20万人のチャンネル「古民家ひとり暮らし」
1回目のテーマは「古民家暮らし」。その代表格といえるのが「古民家ひとり暮らし」というチャンネルです。登録者数約20万人ですから、人気YouTuberと言っていいでしょう。
しかし、このチャンネルが配信している動画は、いわゆる「YouTuber」っぽい賑やかなものではありません。地方の古民家での手触り感のある生活が、美しい映像と静かな音楽とともに淡々と紹介されます。
「長く勤めた会社を辞め、海の近くの空き家を借りて一人暮らしを始めました」
こんな説明文がついた「プロローグ」というタイトルの動画を見てください。「田舎のひとり暮らしも、悪くないなぁ」と思うのではないでしょうか。
この「古民家ひとり暮らし」というチャンネルを運営している男性が移住したのは、西伊豆のある町。古民家を借りて、ひとりで暮らしています。仕事はフリーランスで、「パソコンを使ってできる仕事」をしているそうです。
地元でもらったナマコを自分でさばいて料理を作ったり、庭に自作した窯でピザを焼いたり、家庭菜園の畑を手入れしたり。田舎ならではの暮らしを楽しんでいる様子が動画から伝わってきます。
「いいなぁこういうのどかで穏やかな生活!心が落ち着くというか。。毎日イライラせずに過ごせそう」
こんな視聴者の感想がコメント欄に並ぶ「古民家ひとり暮らし」。なかでも、再生数約150万と多くの人に視聴されているのが、「冬の夜のルーティン」を紹介した動画です。映し出されるのは、ジョギングをしたり、料理をしたり、ハミガキをしたりといったごく当たり前の日常なのですが、なぜか惹きつけられて見入ってしまうから不思議です。
築90年の実家にひとりで住む60代女性
「私はひとりが好きです」
そんなテロップで始まるのは、「実家の古民家にひとり住む」というチャンネルの動画です。
チャンネル運営者は、ある地方都市に住む60代前半の女性。25年間東京で暮らしたあと、実家のある地方都市にUターンし、現在は築90年の大きな古民家でひとり暮らしをしています。
「人生後半からの自分らしい豊かなひとり暮らしとは? 平凡な日常に感謝し自分自身と対話を重ねて過ごす日々を綴ります」
こんなコンセプトを掲げて、自宅のインテリアを工夫したり、干し野菜を作ったりする様子を伝えています。
「60才私はひとりが好きと素直に言える」というタイトルがついた動画の後半では、女性の愛読書がメッセージつきで紹介されます。たとえば、メイ・サートンの『独り居の日記』。シングルの女性の日記ということで共感する部分が多いのでしょう。
「孤独は内面を充実させる創造のための時間」「自然の中で喜びを見つけ自己探究する日々」。そんなメッセージが画面に映し出されます。
また、「ルームツアー」と題された別の動画では、彼女が暮らす実家の部屋や庭の様子が紹介されます。これがとても立派で、歴史を感じます。特に庭の素晴らしさはため息が出るほどで、「こんな家にひとりで住むのは大変なのでは?」と余計な心配もしてしまいます。
鎌倉の古民家で「ひとり暮らし」のアラサー女性
最後に紹介するのは、鎌倉の古民家でひとり暮らしをしているアラサー女性「Sogum」さんの動画です。築60年以上の庭付きの平屋住居に引っ越してきてまもない日々を「Vlog」として記録しています。
古い建物ですが、全面的にリフォームされていて、室内はとても綺麗です。東京近郊で暮らすアラサーの女性ということもあるのでしょう。部屋の中には「IKEYA」や「無印良品」の家具があちこちに置かれていて、古民家にうまくなじんでいます。
「Room Tour」と題された動画では、そんな部屋の様子が丁寧に紹介されます。
ひとり暮らしを快適に送るために、心がけていることはあるでしょうか? Sogumさんには「自分を大切にするための7つの習慣」があるそうです。
「何気ないけど大切なこと」として、動画の中で「毎朝のコーヒー」や「自分のために作る、美味しい料理」など7つのことを挙げています。それらはどれもごく普通のことなのですが、習慣として意識的に行うことで、自分の心を落ち着かせる効果があるのでしょう。
「古民家ひとり暮らし」YouTuberの共通点
住んでいる場所や性別・年齢はそれぞれですが、いずれも「古民家」にひとりで暮らしている3人のYouTuber。たまたまかもしれませんが、いくつか共通点がありました。
一つは動画のスタイル。3人とも、自分自身の姿を映しつつも、顔がはっきりとわからないような撮り方をしています。また、ナレーションを入れず、画面上のテロップで説明する方式も共通しています。
その結果として、古民家のひとり暮らしの「静かな雰囲気」が自然と感じられるようになっています。「素敵な時間を見せていただきありがとうございます」。こんなコメントが寄せられるのも当然かな、と思います。
また、3人とも、家の周囲の自然との関わりを楽しんでいて、動画を通して、その土地の季節の移り変わりをうまく伝えてくれています。おかげで、YouTubeを見ているだけで、心が豊かになった気がしてしまいます。
そして、もう一つ。3人はいずれも「読書」が好きなようです。自宅の古民家でひとり、本を読む。それが印象的なシーンとして伝えられていて、なんとも贅沢な時間を過ごしているように感じられるのです。
そもそも読書をするためには、ひとりの時間が必要です。「ひとり暮らし」を送るYouTuberの動画の中に読書のシーンが登場するのは、ごく当たり前のことなのかもしれません。