1時間2000円の「レンタル彼氏」と1万円の「レンタル彼氏」を呼んで、比較してみました

みなさま、はじめまして。作家の内藤みかと申します。

私はひとり身です。16年前に離婚して以来、恋人と呼べる存在がいないまま、ひとりで生きてきてしまいました。

正確に言えば、シングルマザーで、子どもが2人いるので、完全にひとりというわけではないのですが。もうずっとひとり寝の日々が続いているので、気分はおひとりさまです。

そんなひとり寝のベテランの私が経験したひとり遊びを、今回から紹介していこうと思います。

しょっぱなは、なんと、「レンタル彼氏」のお話です。

時給の異なる「レンタル彼氏」を比べてみると・・・

あまりにも長い間、ひとり身が続くと、男の人とどう過ごしたらいいのかわからなくなってしまいそうなので、私は自分にあるノルマを課しています。それは、月に1度は男の人とお茶する、ということ。そんなノルマでもないと、自分が女であることからどんどん遠ざかってしまいそうだったから……。

幸いにも友人知人の男性と、時には打ち合わせ、時には取材などという名目でお茶をすることが多く、そんな時にはちょっとオシャレしたりもするので、どうにか女を忘れずに今日までやってこれました。

でも時には、誰も相手をしてくれる人がいない!という哀しい事態が起きます。そんな時は、レンタル彼氏を利用してしまうこともありました。

ちなみにレンタル彼氏(出張ホスト)は、開業の際に警察に届け出が必要なのだそうで、サイトに「無店舗型性風俗特殊営業届出番号」を明記しているところを選ぶと安心、と聞いたことがあります。私が利用するのもそうしたところです。

レンタル彼氏は、人気があるホストと新人ホストとで時給にかなりの差が出ます。ナンバーワンクラスだと時給1万円の人もいますが、新人だと2000円程度の人も。

どう違いがあるのか知りたくて、以前、1万円の人と2000円の人を連続してカフェに呼んでみたことがあります。どちらも1時間のみの利用なので、合計1万2000円のささやかな実験でした。

時給2000円のホストが口にした「意外な言葉」

まず現れたのは、2000円のホストさん。顔立ちは瞳が大きくイケメンなのですが、どこか薄汚れています。聞くと、家出中でネットカフェに寝泊まりしていて、そこのシャワールームで慌ただしく入浴している程度なのだとか。チェックのシャツもヨレヨレで、袖口はほつれていました。

そして驚いたことに、爪と爪の間が真っ黒だったのです。掃除のバイトも掛け持ちでやっていて、その汚れが爪に入ったとのことでしたが、どこまで本当かもわからず、ゾッとしてしまいました。

私はそうしたオプションは頼んでませんが、レンタル彼氏では「抱きしめ」などのサービスを追加でつけることができる店もあります。女性に触れるかもしれないのに、その爪なの!? と頭が真っ白になり、そのあと、どんな話をしたかも覚えていません。そして約束の1時間が過ぎたその時、彼はこう言ったのです。

「店で決められた料金は2000円だけど、別にそれ以上払ってくれてもいいよ。さあ、あなたが妥当だと思った額で、どうぞ!」

そう言って両手を広げる彼に「いや、2000円で」と真顔で答え、私は彼を帰しました。その爪で、規定以上のお金をせびった彼が、とても恐ろしかったです。すべての新人ホストがこうではないと思いますが、やはり安いだけのことはある、と痛感しました。

さあ、次はナンバーワンホストです。

現れました! ブルーのロングコートにさすがのストール姿。巻きかたもおしゃれで、全体的に小綺麗です。少し長めの茶髪もなんだか王子さまみたいな彼からは、香水のいい匂いがしました。席に着いた後も、じっと優しく私を見つめてくるので、こちらがどぎまぎしてしまいました。

「僕は、この仕事で終わるつもりはないんだ。今は、稼いだお金で古着屋さんを開こうと準備している。店の場所は下北沢って決めているんだ」

お茶をしながら彼は夢を語ってくれる。私も「古着なら、下北沢はぴったりだね」などと、いつの間にか彼を応援したくなっていました。無理やり貢がせるのではなく、女性客が自らの意思でお財布を開くのを、彼は待っているのでしょう。さすがすぎます。

プロは人の心を動かす

彼は、私の話もウンウンと聞いてくれるし、時には親身になってアドバイスもしてくれるしで、とても有意義な時間が過ごせました。お水をついでくれたりと何かと尽くしてもらえたし、帰るときはコートも着せてくれて、とても心地よいお姫様気分を味わえたのです。

そしてお金を受け取ったら、すぐに帰ればいいじゃないですか? 彼はね、帰らないんですよ。「次の予約まで、まだ時間があるから」と私と一緒にいたがるのです。延長料金もいらないと言うのです。

(私と一緒にいたいの? どうして? 私だけに優しいの? それとも誰にでもこうなの?)

気に入ってもらって、次も連続指名してもらうためのサービスなのでしょうけれど、男の人に優しくされるなんて久しぶりで、ドキドキして頭がぽうっとなり、溶けてしまいそうでした。

忘れていたときめきを思い出させてくれるなんて、さすがナンバーワン! 乱暴に料金を上乗せしようとしてきた安ホストとは大違いです。「1万円の価値は、ある!」と思いましたね。

2000円と1万円。8000円の差は、びっくりするくらい大きなものでした。どちらとまた会いたいかというと、迷うことなく1万円のホストのほうです。でも、そのあとしばらくしたら彼は退店してしまい、それっきりでした。ちなみに、2000円の人は、あの黒い爪を見たくないので、もう二度と会いたくありません。

プロは、人の心を動かすんですね。そして人は、心を動かされたものに対しては、高いお金を支払ってもいいと思えるんですね。なんだかあの時、とても大切なことに気がつけたような気がします。

最近は、気軽にお茶できる男友達が増えたので、しばらく「レンタル彼氏」を利用していませんが、今度機会があったら、料金が安いホストと高いホストと私の3人でお茶をして、2人の差をじっくり見比べてみたいなと思っています。

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内藤みか (ないとう・みか)

作家。慶應義塾大学文学部卒(通信課程)。著書80冊以上。大学時代に官能小説でデビューし、ケータイ小説で話題に。その後電子媒体を中心に活動。原作&脚本の舞台「男おいらん」が再演を繰り返し、脚本参加のラジオドラマ「婚活バスは、ふるさとへ」(YBS)が文化庁芸術祭優秀賞など脚本でも活動。複業のイケメン評論家として、ホストや出張ホストなどにも詳しい。著書に「美男子のお値段」(角川学芸出版)「男はときどき買えばいい」(マガジンハウス)「いじわるペニス」(新潮社)など。

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