AIがぴったりの日本酒を教えてくれる!?(未来日本酒店:YUMMY SAKE)

和食ブームなどを背景に世界中で人気が高まる日本酒。農林水産省によると、輸出量はこの10年で倍増しています。一方、国内出荷量は減少を続け、ピーク時には170万キロリットルを超えていましたが、近年は60万キロリットルを割り込んでいます。

こうした中、自分に合った日本酒を知ってもらい、お酒をもっと楽しんでもらおうと、ユニークなサービスを提供している酒屋があります。東京・代官山の「未来日本酒店」が提供する「YUMMY SAKE(ヤミーサケ)」は、人工知能を活用して、「自分の舌にマッチする味わい」を教えてくれるといいます。いったいどのようなサービスなのでしょうか。

全国各地の豊富なお酒

全国各地の地酒で彩られた冷蔵ショーケース(撮影・齋藤大輔)

代官山駅から徒歩3分。落ち着いた雰囲気の通りに未来日本酒店はあります。店内に入ってまず目に入るのは、所狭しと並べられた冷蔵ショーケース内の日本酒の数々。都内ではあまり流通していないお酒を中心に、全国各地の地酒、約150種類があるといいます。飲食店として日本酒を飲むこともできますが、物販も行っており、日本酒のセレクトショップでもあります。

テーマは「地酒の中でも小さい蔵元さんのお酒を伝える」。お店を立ち上げた山本祐也さん(32)は、「問屋経由で市場に流通している日本酒のほとんどは、生産量で上位10%の蔵元のブランド。しかし、残りの90%の中にも、おいしい日本酒を作る蔵元さんが数多くいる。そういったがんばっている蔵元さん、若手の蔵元さんのお酒を伝えていきたい」と話します。

クラウドファンディングで企画された「未来性のある商品」を置くようにしているという山本さん

「おひとり様は大歓迎」

お酒は一杯400~500円で飲めます。飲み放題は2時間制で3780円(税込み)。酒の肴(さかな)を持ち込むこともできます。全国の日本酒が楽しめるということで、お酒の飲み比べを楽しみに来る人だけではなく、利き酒師(ききざけし)などの資格を取るために通う人もいるということです。

店長の寺田祐貴さん(32)は、もっと多くの人に日本酒を楽しんでほしいと訴えます。

「お酒のマーケットでは、日本酒は6.4%しか消費されていません。悪酔いするとか、太りやすいといったネガティブなイメージがまだまだあるようですが、実際にはそんなことはないんです。全国にはクラフトマンシップ(職人魂)を持っている蔵元のいいお酒がたくさんある。そういう日本酒を知ってほしいです」

店長の寺田さんは、7年半のアパレル業界での経験を経て日本酒の世界へ

客層は30代の女性が中心で、香りが華やかで白ワインのようなテイストのお酒が人気。ひとりで訪れる人が多く、ショッピングの後や仕事帰りに立ち寄る人が多いということです。店内には長いカウンターがあり、おひとり様でも訪れやすい雰囲気になっています。

「おひとり様は大歓迎です。お酒の種類が豊富なので、お酒との出会いの場所と捉えてほしい。お酒に詳しい人もそうでない人も、気になったお酒があればどんどんスタッフに聞いてほしいです」(寺田祐貴さん)

おすすめの肴は、ハイパー干物クリエイターによる「鯖のみりん干し」

人工知能によるオススメのお酒

銘柄が表記されていない10種類の日本酒をテイスティングする

未来日本酒店は今月15日、ユニークなサービスの提供を開始しました。人工知能を活用して、好みの日本酒のタイプを教えてくれる「YUMMY SAKE」。10種類の日本酒をテイスティングして、専用のWEBページの指示に従い、それぞれのお酒を評価します。

お酒を評価するほか、味覚に関する質問にも答える

好き嫌いを5段階で評価するほか、「シュワシュワ」「スルスル」「キュンキュン」など味覚のイメージに近いオノマトペ(擬音)も選びます。評価を終えると、自分に合った日本酒のタイプを12タイプの中から選んでくれます。テイスティング用の日本酒の選定や味覚判定のAI技術は、利き酒師とともに開発されているということです。

評価を終えると、自分に合った日本酒のタイプが表示される

開発に携わった山本祐也さんは、「ブランドやラベルなどの情報によって人間の味の感じ方は左右されてしまう。このサービスを利用することで、情報に惑わされずに自分の味覚にあった本当においしいと思えるお酒のタイプを知ってほしい」と話します。

通りからお店を見かけて、ひとりで立ち寄ったという藤原りべかさん。サービスを利用して、「ぴったりのお酒に出会えた」といいます。

「くるくる」タイプのお酒が好みだとわかった藤原さん

「どんな日本酒が好きかと聞かれてもうまく答えられなかったので、自分が好きなお酒に巡り合えたらと思ってサービスを利用しました。あっさりとした日本酒が好きなんですけど、飲んだ後の余韻がないのも嫌なんです。そんな私にぴったりのお酒が出てきました」

利用者にアンケート調査をした結果、約90%の人が満足しているとのこと。今後は、さまざまな飲食店に導入してもらい、ゆくゆくは海外にも広めていきたいと考えています。

「まずは自分の舌の好みを知って、好きなお酒のタイプを知ってほしいです。日本酒に詳しい人でも自分の好きなタイプに先入観を持っていたりするので、ぜひ試してほしいです。きっと新しい発見があると思います」(寺田祐貴さん)

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