「ひとりぼっちになる勇気を」 春名風花さんに聞く「いじめとの向き合い方」

「はるかぜちゃん」こと春名風花さん(撮影:萩原美寛)
「はるかぜちゃん」こと春名風花さん(撮影:萩原美寛)

文部科学省によると、全国の小中高などで2017年度に把握されたいじめの件数は、過去最多の41万4378件となりました。学校でいじめに苦しんでいる児童・生徒が数多くいることがデータにあらわれています。

こうしたいじめをなくそうと声を上げ続けているのは、女優や声優として活躍する「はるかぜちゃん」こと春名風花さん(17)。2012年、当時小学6年生だった春名さんが朝日新聞に寄せた「いじめている君へ」は大きな反響を呼びました。2018年8月には、その文章をもとにした絵本『いじめているきみへ』(朝日新聞出版)が発売され、話題となっています。

いじめなどで孤立し、悩んでいる人へ著名人がメッセージを送るDANROの連載企画「ひとりぼっちの君へ」。高校3年生になったいまも、いじめに関する情報発信を続ける春名さんに、いじめとの向き合い方について聞きました。

いじめっ子がいじめるワケ

インタビューに答えること春名風花さん

――そもそもいじめがなくならないのは、いじめをする人がいるからだと思いますが、なぜいじめをするのでしょうか。

春名:いろんなケースがあって一概には言えませんが、いじめる人はいじめることで満足感を得ているのだと思います。「承認欲求」に近いものなのかもしれません。いじめることで、いじめをしているグループから認められる。ひどいことをすればするほど認められるため、エスカレートしていくんです。注目を浴びている感覚になってしまっているのではないかと思います。

――著書の中で、「いじめをする人は、自分を守りたいだけなのかもしれない」と書いています。

春名:いじめをする人には、そういう子もいると思います。いじめをやめた途端に、いじめをしているグループから仲間外れにされてしまうことを恐れているということですね。だから自分よりも弱い子を見つけ出し、標的にするんです。自分に自信がないから、他の子を自分よりも下の位置に落とすことで安心しているだけで、本当は「いじめたくない」と思っている子もいると思います。

――「いじめられる方に問題がある」といった意見を耳にすることがありますが。

春名:その意見には、断固反対です。いじめは、いじめられる子のどこかに欠点を見つけ出して行われますが、そもそも欠点のない完璧な人なんていません。いじめている子だって完璧な人間ではないはずです。それでも誰かをいじめるということは、単純にその子を嫌いだったり、クラスの中で一番いじめやすかったりしたからだと思うんです。だから、いじめられている子に原因があるということはないと思っています。

――一方、いじめられている人の中には、「自分にも原因があるからしかたない」と考えている人もいるようですが。

春名:気持ちはすごく分かるので、そう思う子がいるのは仕方ないと思います。太っていることを理由にいじめられていた子が、痩せたらいじめられなくなったことがありました。その子は、痩せたことでいじめられなくなったので、「私に原因があったんだ」って言っていました。確かにその子の場合は、痩せることが有効な手段だったかもしれません。だけど、そもそも「太っているからいじめよう」と思わない人もたくさんいます。痩せてもいじめられ続ける子もいます。いじめられている子に原因があるわけではないんですよ。

「ネットいじめ」の時代

春名風花さんの表情

――春名さんはいわゆるデジタルネイティブ世代で、ツイッターは小学生のころから9年続けています。インターネットの時代のいじめとはどんなものでしょうか。

春名:加工された写真をネット上に流されたり、メールアドレスや電話番号などの個人情報を流されたりします。アダルトサイトに顔写真を使われることもあるみたいです。僕も実家の場所が特定されたり、下品なコラ画像を作られたりしました。しかもネット上の中傷は、「デジタルタトゥー」といって、ネットに残り続けるという特徴がありますね。

――以前、LINEいじめについて指摘していたと思いますが。

春名:LINEのグループから仲間外れにされるいじめがあります。例えば、クラスのみんなが参加するLINEのグループが作られて、ひとりだけ誘われない。そのLINEグループでは、その子についてあることないこと書き込まれる。例えば、「○○さんって○○君のことが好きなんだって」と流される。ぜんぜん好きじゃないのに、クラスのみんなが知っている状態にされるなんてことがあります。

お母さんが携帯を管理している家だと、お母さんにLINEのトーク履歴を見られて、「○○さんが○○君のこと好きなんですって」と、お母さん同士の間でも噂になることがあるようです。そうやっていつの間にか学校中の噂になる。インターネットの時代では、情報が伝達する範囲やスピードが桁違いになっていると思います。

――ネット上の心ない声をどのように受け止めればいいのでしょうか。

春名:ネット上で悪口を言う人たちは、自分にとって大切な人間ではないと思うようにしています。色々と嫌なことをされたけど、僕は周りの人間に恵まれていました。リアルの人間関係で、「大切にされている」と感じることができていたから、自分のことを好きでいてくれる人に目を向けようと思えました。もし悪い方にしか目を向けていなかったら、乗り越えられなかっただろうなと思う。いまは、女優として意地悪な役をすることがあるかもしれないので、ネットで悪口を言う人をよく観察しています。僕の芸の肥やしになれってね(笑)。

いじめられている君へ

いじめで苦しむ人にメッセージを伝える春名風花さん

――いじめで苦しんでいる人はどうすればいいでしょうか。

春名:自尊心を失わないでほしいです。「朝起きた自分、すごい」とか「外に出た自分、すごい」とか、とにかく自分を褒めまくってほしい。自分に価値がないとか、自分が認められる場所がないとか、もしそう思っているのなら、それはいまのコミュニティが合わなかっただけ。世界はいま認識しているところだけではないということを、頭の中に入れておいてほしいです。もしかしたら、別のコミュニティではあなたがトップかもしれないのだから。

あなたの人生において、いじめっ子ってそんなに重要な存在ではないはずです。だって、あなたに良い影響を及ぼしてくれるわけではないのだから。難しいかもしれないけど、いじめっ子のことは考えずに、「世界はもっと広い」ということを意識してほしいんです。

――いじめを親や学校に相談するのはどうでしょうか。

春名:親に相談するのは難しいですね。そもそも親にいじめのことを知られるのは、いじめられていることよりも辛いと感じる子が多いですからね。たとえ親に相談できたとしても、「なんで仲良くできないの?」みたいな、無神経なことを言われたら、よけい傷ついてしまう場合もあります。だから難しいんですよ。

学校もいじめを解決しづらいという現実があると思います。場合によっては、先生に相談したことでいじめが悪化してしまうこともあります。ただ、暴力を受けているような状態であれば、証拠を集めて弁護士に相談したり、警察に対応してもらったりするといいかもしれません。

――無視されている人、「ひとりぼっち」の人はどうすればいいでしょうか。

春名:自分のことを大切にしてくれない人とは、仲良くする必要はないと思います。わざわざ自分のことを嫌っている人に好かれる必要はないですよね。だから「ひとりぼっち」になる勇気を持つのも、一つの選択肢としてあると思っています。

僕は仕事をしながら学校に通っていたこともあって、小・中学校では自分の立ち位置が分からずにフワフワしていました。いじめられていたわけではないけど、クラスに溶け込んでいたわけでもない。同年代の友達はあまりいなくて、ひとりでいることが多かったです。でも、ひとりって、そんなに悪いものじゃないんですよ。休み時間は授業の予習をしたり、絵を描いたり、妄想を楽しんだりといろいろやることはあるんです。僕は妄想が大好きだったから、それがお芝居に生きていると実感しています。

いじめを減らすためにできること

木の前に立つ春名風花さん

――そもそもどうしていじめが起きてしまうのでしょうか。

春名:いまの学校のシステムに問題があると思っています。たまたま同じ地域に住んでいるというだけの子どもを30人くらい集めて、同じ教室で勉強して、運動をして。そうすると、やっぱりその中で優劣ができますよね。学校には勉強と運動っていう明確な優劣の指標があるので、そこでスクールカーストみたいなものができてしまうんです。もちろん人間だから好き嫌いもありますし、そういった環境だと、いじめが起きてしまうのは必然だと思うんです。

――それではいじめを減らすにはどうすればいいと思いますか。

春名:僕はいま単位制の学校に通っているのですが、とてもいいシステムだと思っています。クラスは一応あるんですが、ホームルームの時間に集まるだけで、あとはそれぞれの生徒が自分の時間割を組んでいます。もし嫌いな人がいたら時間割を変えればいい。基本的にみんなひとりで過ごしているので、とても楽なんですよ。こういう環境ではいじめは起きにくいと思います。

その他に僕が提案しているのは、演劇を授業に取り入れることです。演劇は、固定された環境の中で、人間関係に流動性を与える手段です。例えば、いじめっ子といじめられっ子が、親友同士という設定の役を演じることになったとします。しばらく会話を続けたら、二人の距離は縮まるかもしれません。いじめっ子というキャラがついてしまって、そのキャラを外せなくなっている人もいると思います。演劇をすることで、そういうキャラを外せる機会になったらいいなって思うんです。

――いじめシェルターについても、話していましたね。

春名:学校に行くふりができる場所がほしいなって。学校と提携して、教室がある建物とは別に、いじめから逃げられる「シェルター」があるといいと思います。そこには勉強を教えてくれる人がいて、出席扱いになる。いじめられていることを親に知られたくない子もいると思うので、そうやって避難しながら勉強できる場所が学校にあるといいなって思っています。

絵本『いじめているきみへ』(朝日新聞出版)
絵本『いじめているきみへ』(朝日新聞出版)

――春名さんは今後も、いじめに関する情報発信を続けていくのでしょうか。

春名:いじめについての発信は、今後もしていきたいです。『いじめているきみへ』を学校に持って行ったり、朗読劇にしてもらったりして、たくさんの子どもたちに読んでもらえたらいいなって思っています。

――最後に、学校で「ひとりぼっち」で孤立してしまった人にメッセージをお願いします。

春名:繰り返しになりますが、自信だけは失わないでほしい。生まれてきた意味は自分で見つけるものだと思っています。どうせ生まれちゃったのなら、楽しい方がいいじゃないですか。だから、いまあなたが楽しくないと思うのなら、その場所はすぐに捨てなければならない。不幸な目に遭い続けるなんて酷いじゃないですか。そういう場所は捨てて、別のところに羽ばたいてほしいと思います。世界は広いから、絶対にあなたを受け入れてくれる人がいる。それを探してほしいと思います。

顔の前に手でポーズをつくる春名風花さん

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