京急・立会川駅近くの「龍馬」なぜブーツを履いてない?~駅前の偉人を訪ねて
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福山雅治、小栗旬、浜田雅功、武田鉄矢。彼らの共通点といえば? 映画やテレビで「坂本龍馬を演じたこと」です。龍馬は幕末の志士として、今なお人気の人物です。その像が東京にもあると聞き、見に行こうと思いたちました。「この人物が、なぜここに?」と首をかしげたくなる駅前の銅像、いわば「駅前の偉人」をひとり訪ねる旅。今回の目的地は、京急・立会川(たちあいがわ)駅(品川区)です。
像は、立会川駅を出て、左に徒歩数十秒の場所にありました。東京には、筆者が確認できたものとして、2つの坂本龍馬像があり、そのひとつがこれです(もうひとつは港区)。高さは、台座を含めて3mほどでしょうか。数年前、JR高知駅(高知県)で見た龍馬像ほど大きくはありませんが、右手をふところに入れたポーズは同じです。
しかしこの像には、他の竜馬像と異なる、ある特徴があります。龍馬のトレードマークのひとつ、「ブーツ」を履いていないのです。龍馬といえば、長身、縮れた毛髪、袴(はかま)にブーツ、拳銃……。多くのドラマや小説では、そんなイメージで描かれてきました。なのに、この龍馬は珍しく草履(ぞうり)ばきです。なぜでしょうか?
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土佐藩の命令で駆けつけた若き日の龍馬
坂本龍馬は、薩摩(鹿児島)と長州(山口)の「薩長同盟」成立のために奔走した明治維新の立役者のひとりです。ただ、立会川駅近くに立つ「龍馬」は、そんな活躍をするずっと前、まだ20歳のころの姿だといいます。
そのころ龍馬は、生まれ育った土佐藩(高知)の許しを得て、江戸へ剣術修行の旅に来ていました。時を同じくして、アメリカからペリーが来航(1853年)。幕府は各藩に、現在の東京湾の警護を命じました。龍馬もまた、立会川駅近くにあった土佐藩の屋敷で、ペリーの艦隊と対峙したとされます。のちに脱藩する龍馬も、このときはまだ藩の命令に従う若者。ゆえに、武士の多くがそうであったように、草履を履いているというわけです。
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せっかくなので、土佐藩の屋敷があったあたりまで歩くことにしました。来た道をそのまま直進します。途中、「涙橋」と呼ばれる橋を見かけました。江戸時代、処刑される罪人とその親族とが、この橋で別れたため、その名がついたそうです。
住宅街の路地を歩くこと3分ほどで、児童公園に着きました。ここが、かつての屋敷跡です。土佐藩がペリーの再来航に備えて設置した大砲のひとつが復元されていました。湾の警護を命じられた藩のなかには、大砲を用意できず、丸太を海に向けてそれらしく見せたところもあったようですが、土佐藩は本物の大砲を8つ置いたそうです。
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大砲が向けられた先を眺めてみると、川を挟んでマンションやビルが並んでいます。埋め立てられているのです。そのせいで、今この地を訪れると、「なぜこんなところでペリーの艦隊を迎え撃とうとしたのだろう」と不思議な感覚に陥りました。
ネットで調べると、立会川駅の隣「鮫洲(さめず)駅」の近くに、山内容堂の墓があることがわかりました。容堂は、土佐藩最後の藩主。龍馬を扱う作品では、悪役のように描かれることが多い人物です。しかし酒を愛し、自ら「鯨海酔侯」(クジラのように飲む人物)と名乗った容堂にどことなく親近感を抱く筆者は、酔って、いや、寄っていくことに決めました。
墓までは1キロ弱。いったん草履ばきの龍馬像まで戻って、歩き始めます。おっさんひとり、休日の散歩です。
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ちなみに、長崎県にある亀山社中記念館の近くには、「龍馬のぶーつ像」というブーツだけの像があるそうです。草履ばきの龍馬像より古いもので、東京の龍馬像に合わせて作られたわけではないのですが、もしかすると、ブーツはここで、日本を変えようとする龍馬がやってくるのを待っているのかもしれません。
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