プロレスの「入口」はこの団体でした。ひとり観戦が趣味のプ女子が語る「DDT」の魅力
何かにハマるとき、必ず「入口」となるものがあります。プ女子歴約3年の私にとって、プロレスの入口になったのはDDTプロレスリング(以下、DDT)でした。今回はそのDDTが面白い理由をご紹介します。
以前のコラム「『プロレスは原則、ひとりで観戦したい』ファン歴2年弱のプ女子が思うこと」にも少し書いたように、三田佐代子さんの著書『プロレスという生き方』を読んで、初めて見にいったプロレス団体がDDTです。
あのとき、プロレスという競技に対する、私の勝手な思い込みを覆してくれたDDT。もし初めて見たプロレスがDDTではなかったとしたら、私はプロレスに浸かっていなかったかもしれない、と思うことがあります。
(1)男前な選手が多い
2016年5月29日、後楽園ホール。この日に備え、書籍を読んで少し予習をしていましたが、それまでは「プロレス=長身・長髪でお腹が突き出た、ガタイのいいレスラー同士が戦うもの」ーーなぜかこんな偏ったイメージを持っていました。
でも、現実は良い形で裏切られました。DDTのレスラーは身長こそ飛び抜けて高いわけではありませんが、均整のとれたきれいな筋肉質の体を持つ、ハンサムな選手が多いんです。
目を引いたのはHARASHIMA選手や高尾蒼馬選手、後述するMAO選手、大石真翔選手、勝俣瞬馬選手、竹下幸之介選手などです。
「イケメン好きなミーハーだな!」と思われるのを承知で言うと、こんなにカッコいい選手が揃っているのか、とびっくりしたのを覚えています。
(2)新世界を見せてくれる
私にとって初めてのプロレス観戦だったこの日、大きな出来事がありました。アイドルグループ「NωA(New Wrestling Aidoru、ニュー・レスリング・アイドルの略)」の結成が発表されたんです。
DDTの「大社長」こと高木三四郎さんからの「DDT初の男性アイドルグループを結成するぞ!」との社長命令によるものでした。
団体のキャッチコピーに「文化系プロレス」とあるように、カルチャー要素が濃いDDTは「DDTフェス2016」(同年11月開催)を計画していました。そこで音楽を自前で披露するのにユニットが必要になった、というのが結成の理由です。
そこで、井上麻生選手(当時の名前。2016年6月26日にリングネームをMAOに改名)、大石真翔選手、勝俣瞬馬選手の3人でユニットを結成し、音楽プロデューサーのmichitomoさんを付けて、アイドルとしてのトレーニングを開始しました。
約1カ月後となる6月26日、後楽園ホール大会の第1試合でデビュー曲「ネバギバ☆I LOVE YOU」を初披露したNωA。当時、プロレスファン歴1カ月となっていた私も現場にいて、「1カ月でここまで歌って踊れる、アイドルらしくなった3人、すごいな!」と興奮していました。
あれから2年半ほど経った今、DDTで最も人気と言っても過言ではないユニットは「DAMNATION」です。佐々木大輔選手に石川修司選手(フリー、DDTに定期参戦)、遠藤哲哉選手、高尾蒼馬選手、マッド・ポーリー選手、島谷常寛選手で構成されます。
ユニークなスローガン「群れない、媚びない、結婚しない」やクールな思想が共感を集め、DDT内で毎年実施される選挙「DDTドラマティック総選挙」2016・2017のユニット部門で2年連続1位を獲得しているほど。注目です。
(3)エンタテインメント要素が濃い
ゲイレスラー、男色ディーノ選手も私に驚きを与えてくれました。ディーノ選手といえば入場時に好きなタイプの男性を発見すると、唇を奪いに行くのが恒例。
今でもそのシーンを見て思わずフフフと笑ってしまいます(ターゲットとなる男性の心境はわかりませんが、人気レスラーからキスされるという、レアな経験はとても貴重ですよね)。
その他、第1試合前の「前説」や試合の合間のマイクパフォーマンス等で、面白おかしいことを言って笑わせてくれることも多いです。
プロレスというと、真剣に戦う様を見るだけだと思っていましたが、DDTは音楽だったり、笑いだったり、プロレスビギナーにも楽しい仕掛けがたくさん詰まっています。
(4)プロレスラーになるべくしてなった男、竹下幸之介選手がいる
さて、DDTの選手で私が特に注目しているのは、竹下幸之介選手です。初めて見にいった日のメインイベントで、当時王者だった佐々木大輔選手を破り、DDTが保持するタイトル「KO-D無差別級王座」を初戴冠しました。
当時、21歳の若さ。同時に、最年少戴冠記録も打ち立てたのです。それから2018年4月に入江茂弘選手(2018年9月末にDDTを退団)に敗れるまで、11回に渡って防衛し続けます。こちらも防衛最多記録となっています。
当時、竹下選手の何に惹きつけられたかというと、187cm、95kgという恵まれた体格や鍛え上げられた頑丈な肉体はもちろんですが、なんといっても「目」でした。対戦相手を見つめる目を見ていると、勝負の世界で活躍するために生まれてきた人だな、と感じたんです。
後で調べて、現役高校生レスラーとして2012年にデビューしていたこと、日本体育大学の現役学生(当時3年生)であることなど、類まれな素質を持つ選手だと知ったわけですが、それらの情報を知る前に、凄みを持つ目に吸い寄せられていたんです。
竹下選手について補足
以前、竹下選手にインタビューしたことがあります。高校生レスラーとして話題になり、高い身体能力やプロレスのセンスが注目され、実績を積んでいく竹下選手。彼のことを、メディアは「アスリートプロレス」「エリート」と書くようになっていきました。
それについてどう感じているかと聞くと、決して喜んではいない様子でした。むしろ複雑な気持ちになっていたようです。
「『竹下はサイボーグすぎて感情移入できない』とよく言われる」「生まれながら強いわけじゃない。プロレスラーになろうと決めてから今まで、強くなろうと思ってここまでやってきた」「強いレスラーがいないと競技自体が舐められる」
さらに竹下選手は続けました。
特に印象的だったのは、「プロレスではよく『(選手に)感情移入できるかどうか』みたいなことが言われるけど、感情移入ばかりに目を向けていると、プロレスがメジャースポーツに勝つ日は来ない。野球やサッカーを見て、感情移入云々は言わないですよね」という言葉。
この人はプロレスの未来を真剣に考えているし、良い意味で何を仕掛けてくるかわからないーー。私はそう感じました。小学生の頃からテレビやビデオでプロレスを見続けて、プロレスラーになろうと決め、レスリングを習い始めた後、小学校卒業時に全プロレス団体へ履歴書を送った、幼き日の竹下少年。
唯一返信があったDDT(高木社長)から「中学でスポーツの実績を作ってから、また連絡してきなさい」と言われ、中学時代は陸上の混成競技で全国3位になり、17歳でDDTでデビューを果たしました。
そんな歩みを振り返ってみても、竹下選手はプロレスラーになるために生まれてきたような男。大卒レスラー、20代でデビューするレスラーも少なくないなか、周りより5年近く「巻き」でレスラー生活を送っている竹下選手が、今後何を仕掛けてくれるのか。楽しみでなりません。
【竹下幸之介選手】
1995年5月29日、大阪府大阪市生まれ。2012年8月18日デビュー。KO-D無差別級王座他、数々のタイトルを獲得。2018年3月に日体大卒業。Twitter(@Takesoup)
プロレスビギナーにもやさしく、面白いDDT。入口やきっかけになりやすいと思います。ぜひ一度、会場を訪れて、DDTのプロレスを生観戦してみてください。