「マインドフルネスヨガ」やってみた ひとり瞑想で脳をストレスから解放

座位のヨガ
座位のヨガ

グーグルやインテルなど、名だたる企業が取り入れている「マインドフルネス瞑想」。脳の神経メカニズムが変わり、ストレスを和らげ、生産性や自己管理能力を高め、思いやりや優しさ、慈悲の気持ちを豊かにできるといわれています。マインドフルネス瞑想とヨガを組み合わせた「マインドフルネスヨガ」を体験しました。

ひとりでもできるストレス解消法「瞑想(めいそう)」

脳を鍛えてストレスを和らげる

NHKの「みんなで筋肉体操」という番組が注目されるなど、昨今、健康づくりのひとつとして筋トレが注目を集めています。確かに筋トレをして筋肉量を維持、増強することは、病気を予防し健康的な生活を送る上で欠かせないことです。

一方、ストレスフルな時代を生き抜くために、心の健康を保つことも大事です。国立がん研究センターが、1990年(または1993年)から2012年まで、40歳から69歳の男女約10万人を対象に自覚的ストレスの程度とすべてのがんの罹患リスクを追跡調査しました。その結果、自覚的ストレスが高いほど、全てのがんに罹患するリスクが高まることが分かったのです。心の健康は、身体の健康と表裏一体と考えていいでしょう。

そこで、今回、ひとりでもできるストレス解消法のひとつとして「瞑想」に注目してみようと、最新の科学的理論に裏付けされたマインドフルネスヨガと、古来より仏教の世界で伝わる阿字観(あじかんめいそう)瞑想を体験してみました。

働く人は強いストレスにさらされている

マインドフルネス瞑想

厚生労働省が5年に1度行っている「労働者健康状況調査」によると、「仕事や職業生活でストレスを感じている」労働者は年々増え続けていて、約6割の人が何らかのストレスを感じているそうです。

私の場合、満員電車での通勤や時間に縛られるというストレスはありませんが、常に忙しく、いつも何かに追われている気がします。一時は徹夜続きで、家政婦さんか主夫希望者を募集しようと思ったほどです。

忙しいとどんどん心の余裕がなくなり、食べることに走りました。ある日、かかりつけの病院で血液検査をしてもらったら、中性脂肪などに黄色信号が点滅し、医師からスポーツクラブに行くことを勧められたのです。そこで出会ったのが「マインドフルネスヨガ」でした。

ヨガで体を温めて瞑想に導く「マインドフルネス瞑想」

立位でアクティブに動き、体を体幹から温める

阿字観瞑想は、空海が瞑想を続けている高野山(和歌山県)の寺院の静けさの中で行いますが、マインドフルネスヨガは、あえてかすかなざわめきが聞こえる中で行います。隣のスタジオの人の気配やジムエリアの音を感じながら瞑想に入るのです。会議中の会議室や電車の中など、どんな環境でも脳が瞑想モードに入れることを目指しています。

マインドフルネスヨガのプログラムを開発したオージースポーツによると、「マインド(心の注意)がフル(満たされている状態)とは、『起きていることを瞬間瞬間判断せず、主体的に意識化する』。すなわち、心がどこかに拡散しているのではなく、自分の周りで起きている事象に100%集中している状態のことを言う」そうです。この意識化(気づき)が、マインドフルネスヨガの肝なのです。

意識化するために、まず、ボディスキャンと言って、1本1本の指から始まり、身体の各パーツごとに意識を集中していきます。「ボディスキャンは身体と心をリンクさせるために行うもので、ヨガの準備をしている段階です。、意識を向けたところにエネルギー(気)を持たせた状態で身体を動かし、マインドフルネス瞑想の効果をさらに高められるプログラムになっています」

ボディスキャンでエネルギー(気)をためた状態でヨガを行うと、より高い効果を得られる

阿字観が、ずっとあぐらをかいて、そのままの姿勢で瞑想するのに対して、マインドフルネスヨガは、ヨガで身体を動かして、芯から温まったところで行うのも特徴のひとつです。

瞑想と優しさ

身体を動かすことで、心地よく瞑想に導いていく

この記事を書くまでに4回マインドフルネスヨガを体験しました。ヨガで普段使わない筋肉や内臓を動かし、便通が良くなるなど身体的な心地よさは感じましたが、すぐにストレスを和らげ、生産性を向上できたかというと、そうではありません。

マインドフルネス瞑想は、脳そのものをより良い状態に変えていく瞑想なので、何度も繰り返し継続する必要があるのです。筋トレをしても、すぐには筋肉がつかないのと似ています。阿字観瞑想が「脳を変える」という目的を持たず1回ごとに完結するのとは異なり、習慣として瞑想する時間を持つ必要があります。時間を投資して、中長期的な視点で自分を変えるということです。

ただひとつ、マインドフルネスヨガと阿字観瞑想の共通している部分があります。それは「優しさや思いやりの感情を育む」ということです。

あおり運転に見られるように、私たちは攻撃的なモードのスイッチをいとも簡単に入れられます。しかし、瞑想によって余裕が生まれ、優しさをひとり、またひとりへと連鎖させることができたら、人生をより豊かなものにできるのではないかと思いました。

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渡辺陽 (わたなべ・よう)

大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく伝える」をモットーに医療から気軽に行けるグルメ、美容、ライフスタイルまで幅広く執筆。医学ジャーナリスト協会会員。ダイエットだけでは飽き足りず、マラソン大会出場を目指して、パーソナルトレーナー指導のもと、ひとり黙々とトレーニングに励んでいる。

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