絶品「蜂蜜」が採れる空港へひとり旅 「萩・石見空港」の知られざる魅力
何を目指して旅に出るかは人それぞれですが、今回の私は「空港」を目指して旅に出ました。その名も「萩・石見空港」。中学生の時、修学旅行で行った「萩」は山口県。でも「石見(いわみ)」は島根県。なぜ、2つの県の土地の名がついた空港があるのだろうと気になっていたのです。
日本で唯一、蜂蜜が採れる空港
確認してみると、「萩・石見空港」は島根県の益田市に位置しています。この空港は、島根県にあったのですね。フライトは、羽田空港との間を往復する全日空(ANA)の2便のみ。この潔さがなんだかカッコいい。
到着してみると、とても小さな空港でした。現役空港の滑走路を走るマラソン大会を、日本で唯一開催するなど、ユニークな取り組みをしていることでも注目されています。
昨年は開港25周年だったそうで、記念にウェディングフォトを滑走路で撮影できるサービスをおこない、大反響だったとか(私も刑事ドラマの「Gメン’75」みたいな写真を撮ってみたい、とリクエストしておきましょう)。
でも、私がこの空港に来たかった理由は別にありました。それは「空港はちみつ」。2017年の「ハニー・オブ・ザ・イヤー」最優秀賞を取ったという実力ある「空港はちみつ」は、なんと萩・石見空港の敷地内に設置された養蜂場で採れたものなのです。
特別に、養蜂場を見せていただくことができました。元気な蜂たちが懸命に集めてきた蜜が巣の中に蓄えられている様は、神々しささえ感じるほど。蜜源の花や採取された季節によって色合いや味が違い、季節ごとに違う味や香りが楽しめるのだそうです。
何より、空港好きとしては、空港コードが書かれたシンプルなパッケージがうれしい! 蜂蜜そのもののほか、ラングドシャやマドレーヌなどのスイーツ、ほかにはちみつ酢なるものも見かけましたので、お買い物にもいい空港です。
28万枚の石州瓦でできた施設
空港を堪能したあとは、益田市内へ。美術館と劇場が一体となった「グラントワ」という施設へ行きます。2017年にはMr.Childrenが島根県で初めての公式ライブを行ったことでも話題となりました。
見えてきたのは、石州瓦(せきしゅうがわら)。島根県の石見地方で生産されている瓦で、日本三大瓦の一つに挙げられます。以前、島根を初めて訪れたとき以来、この石州瓦が好きになってしまった私。独特の赤褐色の表面がキラキラ光って、美しい!
グラントワでは、屋根瓦12万枚、壁瓦16万枚の合計28万枚という想像を絶する数の瓦が建物を覆い尽くしていますが、壁にこの瓦を使うのは全国でも初めてのことだとか。
天気や時間によって見える色やイメージが変わるこの総瓦の建物を眺める時間は、石州瓦ファンとしては至福の時としか言いようがありませんでした。この日は残念ながら、美術館も劇場もお休みでしたが、ぜひまだ訪れてみたい場所のひとつです。
ゆっくり時間が流れる一軒家の喫茶店
そして、益田市に来たならぜひここに行ってみたかった、という場所へ。知る人ぞ知る、畑の中の喫茶店「喫茶 トラカイ」です。「えっ、こんなところに店があるの…?」と言われそうな立地で、田畑の間を車で走ると見えてくる、ぽつりと建つ一軒家がお店です。
まるで絵本の中に出てくるような自然豊かで美しいたたずまいの店は、ご主人の石川剛さん自身の手によって建てられました。不思議な「トラカイ」という名前は、リトアニアの地名なのだそうです。
「以前、バルト三国に旅をした時、リトアニアの家を見て感激したんです。家があって、庭には果物の木があって…。そういうお店を作りたいと思い、元は農地だったところに建築するところから始めました」(石川さん)。
その夢の通り、庭には果樹園が作られており、ここで採れたリンゴやモモなどの果物を使ったスイーツも提供されています。おとぎ話の中に迷い込んでしまったかのような店では、なぜだかゆっくりと時間が流れていきます。
つかのま、日常を忘れた贅沢な時間を過ごしたら、また「萩・石見空港」から東京へ帰ります。ほんのひとときだけの、空港を目指したプチトリップ。今度はゆっくりと時間を取って、この地域を楽しみに来たいと思っています。