都会にいても手軽に開放感を味わえる 「イス活」のススメ
イスさえあれば、誰でも気軽にすぐできる。気の向いたときにイスをもって、近くにでかけるだけ。それが「イス活」である。
気軽にふらりと旅気分にひたりたい。そんな人類すべての夢を、「イス活」は簡単にかなえてくれる。ネットで買った1000円程度の折りたたみイスが、イス活の最強の相棒である。
イス活は、ひとりを基本とするので、マイペースでのんびりできるのがいいところ。「チェアリング」ともいうらしいが、そんな洒落た名前はいらない。「イス活」のほうがしっくりくる。イス活はただぼんやり、のんびりするだけ。ほかに目的はもたない。
「イス活」はこうやって楽しむ
まずは、公園の空いたスペースにイスを置いて座り、気にいった景色を楽しむのだ。絵を書こうとか本を読もうとか考えると別の意識が働いてしまい、ぼんやりできない。
写真を撮るほどでもないふつうの景色のほうが、視点が定まらないのでなおいい。行き交う車や緑を眺めながら時間を過ごすのだ。人が少ない公園だと、ますます気分がよくなる。天気が良ければ鳥のさえずりの中に身を置いたりもできる。
イス活をはじめると、ベンチの配置がなぜこんな方向なのか不思議に思えてくる。
その日によって光の差し方がちがったり、緑の豊かさがちがったりするのに、固定されたベンチは一つの方向だけを見ている。毎日変化する風景を見るのに、ベンチは向いていない。
逆に、自分の好きな場所で、好きな方向を見て、見たい景色を好きな時間、好きなだけ眺められるのが「イス活」のいいところだ。
公園のほかでは、野球練習場のそばに座るのもおすすめだ。イス活をすれば、金属バットの音が楽しめるし、野球練習場を走るユニホーム姿を見ていると、運動しなくとも練習に参加した気分になれる。
あるいは狭い公園でも、東京タワーが合間から見えると、なんとなく幸せ気分にひたれる。
イス活とは現代の「縁側」である
このあいだ多摩川沿いの名物茶屋「たぬきや」が閉店した。青空と川を見ながら酒が飲める、酒飲みには絶好の場だった。残念ながら閉店してしまったので、あの解放感はもう味わえない。
ところがイス活なら、ひとり「たぬきや」もできる。名物のおばちゃんはいないけれど、青空と川はある。眺めのいい場所を発見したら、さっそくコンビニで飲みものを買う。座って飲み物を飲むだけ。楽しい。一瞬で「たぬきや」である。
都会生活に必要なのは、解放感と爽快感なのだ。キャンプはしたいが、フル装備ででかけるのは手間がかかるし、誰かと集まるのは面倒くさい。思いついたとき、気まぐれにふらりとでかけたいというわがままな欲求に、イス活はこたえてくれる。
適当なイスに座って、時間の許すまま外を眺める。これはなにかに似ている。そうだ、縁側だ。イス活とは「現代の縁側」なのである。
現代社会には、何気ない風景を何気なく眺める機会があまりにも少なすぎる。
ぼんやり、のんびり。ぜひ、イス活をおすすめしたい。