35歳の時、結婚を考えていた彼氏にフラれた瞬間、真の幸せを手に入れた!

津田環さん

50歳までに一度も結婚したことがない人が3割に迫る勢いの大独身時代。大手テレビ番組制作会社のプロデューサー・津田環さん(44)もその中の1人です。しかし津田さんに悲壮感は全くありません。むしろどこまでも明るく、幸せそうです。現に、この先結婚するつもりはないし、その必要性も全く感じないと笑顔で語ります。なぜ津田さんはひとりでも幸せそうなのでしょうか。同じくアラフィフにして独身の、しかし現状にモヤモヤを抱える筆者が聞きました。

30代半ばまでは「結婚したい」と思っていた

──津田さんが結婚しない理由は? 

津田:結婚する必要性を全く感じないからです。私にとっては結婚するメリットが全くない。

──若い頃からそう思っていたのですか?

津田:いえ、30代半ばまでは、結婚もしたいし子どももほしいと思っていました。

──30代半ばに何があったのですか?

津田:直接的なきっかけは35歳の時、3年ほど付き合って結婚まで考えていた彼氏にフラれたことです。

──めちゃめちゃショックだったんじゃないですか?

津田:いや、それが全然悲しくなかったんですよ!(笑) むしろ気持ちがすごく楽になったんです。

──どういうことですか?

津田:フラれた後、よくよく考えてみれば、その彼とはそもそも性格的に合わないところが多かった。要するに本当に好きじゃなかったのに、惰性で付き合ってた。相当無理していたんです。それは相手が悪かったからじゃなくて、相性がよくなかったということです。だから別れて楽になったのだと思います。

──そんな人とよく3年も付き合いましたね。なぜですか?

津田:そうなんですよ。自分でも、よく3年ももったなと思います(笑)。その理由は、もう30代半ばだから独身でいるのも社会的な見地からするとよくないし、今の日本の制度上子どもを産むなら結婚した方がいいし、私の親も期待しているからそろそろ結婚しなきゃいけないんじゃないかと思い込んでいた。つまり、外からの3重のプレッシャーで私自身の気持ちをごまかしていた。

ひとりになったことで、私自身は本当に結婚したいと思っていたわけじゃなかったんだということにようやく気づけたわけです。それで別れた瞬間、目の前を覆っていた霧がばーっと晴れて、清々しい気持ちになりました(笑)。同時に、そういう社会や親からのプレッシャーって恐いなと思いました。自分の本当の気持ちに気づけないくらい追い込まれるわけですから。

あの時、結婚しなくてよかったと心底思っているのですが、フラれた当時、周囲、特に会社の人たちからは“かわいそうな女”扱いをされました。「あの歳でフラれて津田は惨めだ」と言う人が大半でした。でも私は「フってくれてありがとう! よかった!」と思ってるわけですよ。もしあの時、結婚していたら私の人生、台なしになっていたと思います。

いずれ絶対に離婚していたはずなので。社会制度に従うためや親のために結婚しても、それは私の人生ではないんだと思いましたね。だから私の本当の気持ちをごまかして反対のことをしようとしていた30歳くらいの私を怒ってやりたい。「結婚しないと社会的に認められないとか、親からの期待なんかを気にするんじゃない!」と説教したいです(笑)

ひとりの方が「楽しい人生」を送れる

──別れてから人生が一変したわけですね。

津田:超幸せになりました! 私ひとりの方がよっぽど楽しい人生を送れています。

──それ以降、一度も結婚したいと思ったことはないし、婚活もしたことがない?

津田:ないです!(キッパリ) 婚活なんて絶対しない。するわけないですよね。

──誰かと一緒に暮らしたいと思ったことは?

津田:それすらもないんですよ。恋人と一緒に暮らしたいとは思いません。ひとりで何の問題もないので、そこは自由でいい。恋愛さえしてればいいって感じですね。

──今付き合っている彼氏はいるんですか?

津田:います。50歳くらいの人ともう5年くらいになるかな。

──結婚しようという話にはならない?

津田:ならないですね。そもそも、お互いいい歳だから結婚しなきゃいけないとか、男が女への責任を果たすために結婚しなきゃいけないという「愛情の最終形態が結婚」みたいな古い考え方が嫌なんです。彼にも、私がこういう考え方の人間だということは伝えてあるので、彼から「結婚しよう」とか「一緒に住もう」という話は出てきません。だから何の不満もなく、楽しくお付き合いしています。

──子どもはほしいという気持ちは今はないんですか?

津田:ほしいとは思っていましたが、チャンスがなかったってことですね。もう45歳なので物理的に厳しい。今は、男性の精子だけをもらって子どもを産んで、自分ひとりで育てるという「選択的シングルマザー」になる若い女性が増えていますが、私もやろうと思えばやれたんだなという思いはあります。

──恋愛しているから、この先結婚しなくても寂しくないし、不安もないってことですね。

津田:一切ないです。逆に聞きたいんですが、不安って何ですか? 本当に結婚したら不安はなくなるんでしょうか? 結婚していても相手に先立たれたり、自分の方が先に死んだりして、結局は人間、死ぬ時はひとりじゃないですか。そう考えたら何が不安なのかわからないですよね。

──歳をとってからの長い時間をひとりで過ごすのが「不安」ってことなんじゃないですかね。

津田:もしそうだとしたら、相手のことが好きなんじゃなくて、自分の老後の心身の安定を得るために他人を利用するってどうなんですかね? その気持ちは私には理解できません。それに、老人になって、常に夫が家にいることの方がストレスになる可能性も十分ありえますよね。だから熟年離婚が増えているんだと思いますよ。

だからひとりで年を取っても、恋愛をしていればいいんですよ。恋愛は死ぬまで続けられるもの。人生80年どころかこれから100年時代になると言われているわけですから、長いじゃないですか。一生恋愛し続ければ結婚しなくても十分幸せでいられますよね。

独身老人専門のシェアハウスを作りたい

──そう考えるようになったきっかけってあるんですか?

津田:大学卒業後、フランスに留学していたことが大きいと思います。当時ホームステイしていた家のお母さんとは今でも仲がよくて、彼女は今75歳なんですが、1つか2つ年上の彼氏がいるんです。その彼氏のおじいちゃんとは30年くらい付き合っているんですが、結婚はしていないんです。彼氏はその間3回結婚していて、数年前に42歳の女性と結婚して子どもが生まれたんです。

もちろん、その間も彼女との付き合いはずっと続いていて、先日、日本に一緒に堂々と旅行に来て私がアテンドしたんです。いわゆる不倫旅行なんですが、フランスではそれが当たり前。不倫は絶対ダメとか、いい歳なんだから恋愛なんて、みたいなのはなくて、その時、その歳に出会った好きな人と自由に恋愛していてすごく楽しそうなんですよ。そういうのを見ててすごくいいなと。私の恋愛観ってそこに多大な影響を受けていると思いますね。

──なるほど。楽しく、幸せに生きることが至上目的で、そのためには必ずしも結婚をする必要がないと。

津田:そうそう。私にとっても究極の幸せの形は相性のいい人と長い時間を一緒に共有することで、それは結婚じゃなくてもいいんじゃないかなと。そもそも結婚って、日本の社会を維持するための制度、インフラでしかないから、それに縛られる必要はないなと。30代でそれに気づけてよかったです。

それに、仮に今彼氏がいなくても十分幸せだと思います。一緒に楽しく遊べる仲良しの友人がたくさんいるので。むしろこの先、自分が介護される世代になったら、一緒に生活していくのは女友達になると思いますよ。

──もし今の彼氏が結婚したいと言ったらどうします?

津田:う~ん、そもそも私は名字を変えたくないんですよね。変えること自体はいいんですが、どうして、法律で決まっているからって有無を言わさずそうしなきゃいけないのか。この理不尽さにムカつくんですよ。意外と苦しんでる女性は多いと思います。どちらかが病気で倒れて介護しなきゃいけなくなったり、ものすごく貧乏になったら結婚するかもしれませんね。

──今後の展望について教えてください。

津田:ひとりの方がより人生は楽しくなるし、この先も希望しかないですね。恋愛はし放題だし(笑)。やりたいこととしては、独身老人専門のシェアハウスを作りたいと思っています。そこまでいかなくても、独身老人を集めて、みんなでお金を出し合って助け合う互助システムを作れればいいかなと。あまりお金はないけど同じ境遇の人達で楽しく生きていけるなら、結婚に固執する必要はないと思うんですよね。

  ◇

取材を終えて

44歳で独身、子なしでも、人生を謳歌している津田さん。それはあきらめでも強がりでもなく、楽しむことを人生の第一目的として自分の気持ちに正直に生きているからだということがわかりました。重要なのは結婚することそのものではなく、何のために結婚するのか。結婚したいと思う本当の理由は何なのか。それは自分にとって本当に必要なことなのか。ということを、改めて自分に聞いてみるのも大事なのではと思いました。

50歳を目前にして、独身で結婚経験もない私は、自由気ままにそこそこ楽しく生きているとは言えますが、津田さんのように、人生が楽しい! 何の不満もない! 将来に何の不安もない! とは言い切れません。

「今の人生、楽しくなくはないけれど、ずっとこのままでいいのかな…」という明確に言葉にはできない漠然とした不安を抱えていた私ですが、津田さんの話を聞いてそれこそ霧が晴れたような思いでした。そんなしょうもないこと考えていても意味がない。とにかく今を楽しむことを考えればいいのだと。と同時に、どこか満たされていない理由は恋愛をしていないからだということに今更ながら気づけました。私も婚活はいいので、恋活(?)に励もうと思います。現場からは以上です。

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山下久猛 (やました・ひさたけ)

1969年愛媛県生まれ。アラフィフ独身のフリーランスライター・編集者にしてDANROの愛読者でもある。某呑み会で編集長に直訴してDANROライターに。人物インタビューを得意としており、雑誌・Webの他、仕事紹介系書籍の執筆や、経営者本の構成も数多く手がけている。趣味は居酒屋巡りと写真撮影とスクーバダイビング。

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