感染拡大する新型コロナウイルス、「高齢者の行動抑止」に必要なこととは

スマホを使って「ひとり時間」を過ごす(Photo by Getty Images)
スマホを使って「ひとり時間」を過ごす(Photo by Getty Images)

いまだ世界中を脅かしている新型コロナウィルスの脅威。僕がずっと気になっているのは、どうも日本の対応が「若者の行動抑止」ばかりになってしまっている点だ。

若者の行動を抑止するだけでいいのか

まず最初に安倍首相が全国の学校に対して「休校要請」を行った。

さらに厚生労働省が「新型コロナウイルス感染症対策の見解」という文書を出して、新型コロナに感染していても若者が行動することで、感染が拡大すると説明した。

そして、大阪のライブハウスで新型コロナの感染者が発生したことなどにより、さも新型コロナは「主に若者が感染させるウィルス」であるかのように、勘違いしている人が少なくない。

実際、外で遊んでいる子供たちを見た高齢者が学校に苦情を入れたり、ライブハウスに「ライブを止めろ!」という苦情を入れたりということが起こっているという。どうやら「自分たちはウィルスをまき散らす若者に脅かされている」と思い込んでいる高齢者がいるようなのだ。

新型コロナ対策として、若者の行動抑止をする人たちは、このように考えているのだろう。

「高齢者は症状が出やすいから、新型コロナにかかれば、自ら外には出ないはずだ。一方で、若者は症状が出にくいから、自分が新型コロナにかかったと気づかずに、外に出て感染源になってしまうのだ」と。

高齢者の行動抑止を進めるために

しかし、そのように考えている人たちは忘れているのだ。今の高齢者は「少しぐらい体調が悪くても、休まずに働くことが美徳」という時代に生きてきたことを。

新型コロナの症状は軽症であれば発熱やせきであり、普通の風邪と変わらない。

普通の風邪どころかインフルエンザですら「インフルエンザくらいで会社を休むな!」と常々口にしてきた世代であり、そうした人たちが普通の風邪くらいの症状で家でおとなしく寝ていてくれるかというと、やはり休まないのである。

行政は若者に対して「無症状でも感染源になり得るから出歩かないでください」と言うのと一緒に、高齢者に対してもちゃんと「少しでも風邪のような症状があれば出歩かないでください」と言わなければならなかったのである。

しかし、高齢者に対する行動抑止はかなり難しい。

若者であれば、友達とスマホで雑談をしたり、ゲームをしたり、動画を見たりと、一人の時間を楽しむ術をいくらでも持っている。

しかし「少しぐらい体調が悪くても働くことが美徳」という価値観で数十年生きてきた高齢者たちは、平日の昼間から一人で家に籠もるということをほとんど経験していない。

特に男性の場合、仕事にかまけて、家での時間を過ごしてこなかったので、家での過ごし方を知らない人が多い。逆に妻は、自分の世話すらろくにできない夫がずっと家に居ることにストレスを感じてしまうかもしれない。

だからこそ高齢者に対しては、行動抑止をするのと同時に「どのように家の中で過ごすか」を提案する必要があるのだ。

高齢者の「ひとり時間」の過ごし方

まずは「スマホ」だ。もはやガラケーは市場からほとんど姿を消し、高齢者でもスマホを持っているのが当たり前。ならば、一人で過ごすためには、スマホを使うのが一番の近道だ。

中でもわかりやすいのは、映像配信サービスだ。テレビを見る感覚で一人の時間を満足させることができる。

横文字で海外のサービスなので、海外作品や最新の映画ばかりで、高齢者向けの映画はないのではないかと思うかもしれないが、日本の古い名作映画や時代劇なども山ほど配信されている。

映画だけではなく、ドラマやバラエティなど、パッと思いつく映像コンテンツは、その大半がどこかしらのサービスで配信されている。

ただし、映像配信は携帯の通信パケット、今風に言えば「ギガ」をたくさん使うので、スマホの契約形態によっては通信料が膨大な額になりかねない点には注意して欲しい。

また、読書などもスマホで簡単にできる。文学作品やマンガはもちろん、実用書や雑誌も揃っている。動画と比べれば通信料もそれほど気にならない。

昔であればレンタルビデオショップや書店などに出向かなければ手に入れられなかったコンテンツが、家にいながら24時間365日手に入るとは、すごい時代になったものである。

また、普段は妻に家事を任せているという男性の高齢者は、「家事」をやってみる手もある。

間違っても「料理」ではない。普段料理をしない人が料理をしても、材料費と無駄手間ばかりかかって、まぁロクなことにはならない。料理ではなく、掃除や洗濯。また料理の後片付けなどだ。

掃除に手間がかかるというのは誰でも想像できるだろうが、ともすると洗濯に対しては「洗濯機に放り込むだけ」だと勘違いしていないだろうか?

洗ったものを取り込んで、ちゃんと干して、たたんでしまってなど、実際にやってみると意外と大変で、時間を使うことに気づくだろう。

あと料理だって、料理をしている時間より、スーパーで献立を考えたり、食べたあとの食器を洗う時間の方が長くかかる。

普段行わない家事に触れることで、自分の家がどのようにして今の状態に保たれているかを学ぶのは、これからの家族の生活にとっても重要である。

僕は今回、大半の人ができる「スマホの活用」と「家事」について述べたが、いまあなたが見ているこのDANROのサイトには、それこそ、ひとりで何かをするヒントがたくさん詰まっているはずだ。

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