YouTubeが流行れば流行るほど「陰謀論」が加速するのはなぜか?

今や一人娯楽の王様と言っていいほど、世間に浸透したインターネットの動画投稿サイト。

僕は以前からニコニコ動画を贔屓にしていたが、最近はYouTubeに面白い動画があつまるようになっており、ここ数年でかなりYouTubeを見るようになった。

YouTubeを見るようになって驚いたのが、動画を見ているうちにどんどんフロントページが最適化されて、自分の興味のありそうな動画ばかりが表示されるようになることだ。

ユーザーを「タコつぼ」に誘導するYouTube

ニコニコ動画では、自分にとってまったく興味のない動画であっても、再生数などが多ければ人気の動画としてフロントページに出てくる。また以前のレイアウトでは、タグが前面に押し出され、それぞれのジャンルでどのような動画が人気かが表示されていた。

しかしYouTubeの場合は、自分の興味のあるチャンネルを登録していればもちろん、登録していなくても、自分の見た動画と同じチャンネルの動画や、その動画に近しい内容の動画ばかりが表示される。

YouTubeでは比較的チャンネル同士のコラボ企画が多いというのは以前から気づいていたが、コラボをすることでお互いのユーザーのフロントページに動画が表示されるからコラボが多いのか、と納得させられた。

こうしてユーザーは、他人の好みではなく、自分の好みに近い動画にどんどん誘導されていくのである。

もちろん、料理動画をたくさん見たい人にとっては、そこにアニメ紹介動画や政治系の動画が出てきても興味がないというのは分かる。だが、それは一方で、ユーザーの興味の範囲が「タコツボ化」していくことも意味している。

自分の興味のある動画しか表示されないということは、それ以外の動画の存在がほとんど目に入らないことを意味する。

ニコニコ動画のように流行っている動画をフロントページに表示するようなサイトであれば、わざわざ意識しなくても「別の動画がある」ことをユーザーは自ずと認識させられる。

しかし、別の動画が見えなければ、自分の見ている動画だけが、さもみんなが見ている標準的な動画内容であるかのごとく認識されるようになってしまう。

アメリカ大統領選の「陰謀論者」が増殖するワケ

実際の事例で言えば、先日行われたアメリカ大統領選挙。もはやどう考えてもバイデンが勝利したことは明らかなのだが、これを必死に「本当の勝者はトランプ」「バイデンは不正選挙を行った」と、今でも主張し続ける人たちがいる。

もちろん昔からこの手の陰謀論者はいたが、概ね政治的にはほとんど影響のない存在であった。しかし今回の大統領選挙では、大統領自身が自分の支持者として明確に認知するほど大きな勢力となっている。

こうした陰謀論を声高に叫ぶことができるようになったのも、動画サイトやまとめサイトといったネットメディアが、彼らの考え方を強力に下支えしているからだ。

彼らは、自分の行動について、「ネットで多くの情報を得て、自分で判断をして、常識的に結論づけている」と思い込んでいる。しかしその「多くの情報」は、「バイデンが不正選挙を行った」という単一の政治的視点からの情報であり、数は多くとも決して多様な情報とは言えない。

しかし、YouTubeのような強力な誘導に従うことで、その他の情報は当人の目から排除され、さも自分の選んだ情報が、世間のみんなが主張している常識であるかのように誤認してしまうのである。

インターネットがこの社会に出てきたばかりの1990年代、インターネットの世界は我々の視野を大きく広げてくれる拡張ツールとして期待されていた。

私たちの知らない世界や別の考え方を発見し、自らの体験や知識をより幅広いものにしてくれることが期待されていた。

しかし結局、多すぎる情報は情報選択の混乱を生み出した。

人々は自分の知見を広めるために混乱を受け入れることよりも、自分好みの情報ばかりを取り寄せる安寧に価値を見いだすことを選んだ。忙しい中、たまの休日に動画を見るなら、自分が興味ない動画よりも、興味ある動画を見たい。そう考えるのは、自然なことである。

その結果、インターネットのキュレーションは、和洋中と幅広い料理の情報を集めるためには利用されなくなり、たらこパスタを好む人がバージョン違いのたらこパスタの情報を大量に集める、といった形で利用されるようになった。

そうしてユーザーは一見、自らの望む多くの情報を得ているという満足感に浸りながら、実際のところは、単純な情報ばかりに誘導されてしまっているのである。

そうした「本人の望む情報」ばかりを提示するやり方が、強力なマーケティング手法であることは否定しない。

だが、その結果、我々が考えるべき多様な意見が裏に隠され、見る人にとって気持ちのいい情報を得たいという欲望のみが達成されてしまうのは、情報社会の退化だと思う。

とはいえ、それを望む人が多いからこそ、YouTubeは動画投稿サイトのメインストリームとして君臨し続けている。

とにかく興味のある動画だけを表示する、という単純さ故にわかりやすく、わかりやすくて人が集まるから、そこにお金も集まる。

このような仕組みがベストだと納得することはできない。だが、我々はその功罪を理解した上で、YouTube的なビジネスモデルと付き合っていかなければならないのだろう。

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赤木智弘 (あかぎ・ともひろ)

フリーライター。1975年生まれ。就職氷河期世代としての問題意識を中心にいろいろと発信中。最近は、スーパー銭湯などのサウナ施設を回ったり、辛い料理を食べることがマイブーム。一人暮らしなので、すこしでも生活に潤いを生み出して行きたい。

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