日本が「萌えキャラ」を輸入!? 台湾発「たかめ少女」に注目集まる
アニメやゲームの舞台を旅する「聖地巡礼」。近年では、地方自治体が自ら乗り出している例も珍しくありません。こうした中、アニメ「聖地」を抱える全国の自治体や、ご当地キャラクターなどを集めたイベント「アニ玉祭」が10月半ば、さいたま市大宮区のソニックシティで開かれました。
今年で6回目の開催で、全国各地の自治体や民間企業など過去最多の103団体が出展。中でも遠方から出展していたのが、キャラクターデザインなどを手がける「サイモンクリエイティブ」。台湾に拠点を置く企業です。
台湾のご当地キャラが日本でメディア展開
ブースを見渡すと、様々なキャラクターが描かれたイラスト集が置かれていました。一見すると、キャラクターの見た目は日本のそれと見分けがつきません。しかし、手に取ってみると、中の文章が繁体字の中国語で書かれています。話を聞くと、ここにあるキャラクターの大半が台湾の行政機関や交通機関の「公認キャラクター」で、そのイラスト集を販売しているとのことです。
「サイモンクリエイティブ」の代表作と言えるのが、台湾第二の都市、高雄市の地下鉄の公式マスコットキャラクター「高捷少女(日本名:たかめ少女)」です。「たかめ少女」は2014年11月に高雄メトロに「公認」されると、たちまち台湾中の人気キャラクターとなりました。現在ではライトノベルをはじめ、ゲームや音楽CDなど様々なメディアに展開しています。2017年6月には日本でも展開が始まり、ライトノベル「進め!たかめ少女高雄ソライロデイズ。」(ソフトバンククリエイティブ)が発売されたほか、京都の京福電気鉄道嵐山本線(嵐電)が高雄メトロと観光連携を締結し、「たかめ少女」のラッピングトレインが運行されました。
サイモンクリエイティブは、こうした取り組みを日本でもPRするため、アニ玉祭や、コミックマーケットなどのイベントに2017年ごろから積極的に出展しています。創業者でプロデューサーを務める楊家宇さんは、「イベントへの出展を通じて、日本の皆さんにもっと気軽に私たちの作品に触れてもらいたい」と話します。
アイドリング防止研究から始まったキャラクタービジネス
楊さんによると、元々この取り組みは「大学の卒論から始まった」と言います。楊さんは台湾最南部の屏東県にある国立屏東科技大学工学部で、自動車工学を専攻していました。環境対策のために「アイドリングを防止する」というテーマで研究に取り組んでいましたが、そこで思い至った結論が、「空気を擬人化するキャラを作り、みんなを啓発しよう」でした。
この取り組みは2013年6月に「空気少女Air」というキャラクターで現実のものとなり、日本の文部科学省にあたる、行政院教育部の助成金を受ける事業にもなりました。楊さんはイラストを描けないため、絵が描ける知人に発注しているといいます。
「空気少女Air」は台湾のSNSなどで話題となり、これはビジネスになると、楊さんは確信します。その後、2014年4月に大学がある屏東県の特産品、桜エビを擬人化したキャラクター「絢桜」が県の観光キャラクターに公認されました。そして2014年11月の高雄メトロ「たかめ少女」へと続きます。
「『たかめ少女』は台湾だけでなく、高雄市を訪れた日本人のSNS投稿などによって、日本でもひとりでに人気が出ていました。これは萌えキャラの“本家”日本でもいけると思い、打って出ることにしました」(楊さん)
日本では今のところイベント出展を中心とした取り組みですが、会場では多くの日本人がイラスト集を手に取り、買っていくそうです。
今後は日本でゲームを展開していきたい
そんな楊さんですが、休みの日は日本のアニメを見るほか、経営管理の本も読んでいるといいます。
「アニメ・マンガ産業での企画は、日常生活の経験から着想を得ることも多いので、できるだけ様々なことを経験してアイデアを得るようにしています。好きなアニメは、『ガンダムUC』や『キノの旅』、『四月は君の嘘』や『響け!ユーフォニアム』などですね」
日本では今後、ゲームを中心に展開していきたいと楊さんは言います。
「すでに台湾では『たかめ少女』のゲームが人気を集めているので、これを一日も早く日本でも展開していきたいと考えています。日本の事業者と協業する可能性を積極的に求めることで、より多くの日本の皆さんに台湾からの作品を見てもらうように頑張りたいです」
果たして台湾発のキャラクターが、萌えキャラの“本場”である日本のゲームやアニメで見られる日が来るのでしょうか。今後の展開に注目です。