広島優勝と応仁の乱、17年間「しびれたこと」をメモし続ける男
自分が「しびれた」ことは、なんでもメモ帳に書き記す。東急ハンズ新宿店で働く西智(にし・さとし)さん(57)が、17年間も続けている習慣です。
手のひらサイズのメモ帳には、お米の銘柄、応仁の乱の人物関係図、ヒンズースクワットのやり方、焼肉屋のレシート、ボーナスの金額など、西さんが「しびれた」ものが、脈略なく書きつらねてあります。広島が優勝したときの新聞の切り抜きが貼られたページも。
現在は、男性向けスキンケア用品を扱うコーナーを担当する西さんに、こうしたメモに込めたこだわりについて聞きました。西さんは、マラソンや自転車、俳句といった多趣味ぶりが評価されて、この売り場に抜擢されたといいます。
ーーそもそも、どんなきっかけでこうしたメモを取るようになったのでしょうか?
西:中谷彰宏さんの本で『しびれる仕事をしよう』というものがあるのですが、17年前にそれを読んだとき、「自分もしびれた事柄をメモしよう」と思いたちました。ちょうど40歳だったので、何かを始めようと思っていたのもきっかけのひとつです。
ーーメモにはイラストが添えてあるページが多いですが、もともとイラストは得意だったのですか?
西:いいえ。一度も描いたことはありませんでした。だから今でもへたくそですよ。
ーーそれでもメモをとり続ける西さんの原動力とは、いったいなんでしょうか?
西:私がよく言うのは、「人間は記録と記憶で遊べる唯一の動物だ」ということです。あとでメモ帳を読み返すと、楽しいんです。
ーーしかし、習慣にするというのは、なかなか難しいと思います。
西:そこで人に勧めているのが「日記をつける」ということです。居酒屋で友達に日記帳を見せると、必ず爆笑がとれます。ポイントはまず、1日3行程度しか書かないこと。私はパイロットのパーソナルダイアリーを使っていますが、小さくて、たくさん書こうとしても書けません。
もうひとつは、事実だけを書くこと。「何を食べた」「どこに行った」といった事実だけを書くんです。これなら、時間もかかりませんし、続けられると思います。事実を書くだけでも、あとで不思議と笑えるものになりますよ。
ーー40歳を機に「しびれるメモ」を作り始めたとおっしゃいましたが、今、その世代の人たちを見ていて、どのように感じていますか。
西:30代、40代の男性は、未来の自分を見すえて投資する人と、まったく何も考えていない人の両極にわかれていると思います。
ーー西さんは、57歳とは思えないほど若々しいですね。
西:それでも、あと3年で定年です。私は40歳になるころ「このままでは衰えていくだけだ」と思って、ジョギングと自転車、そしてサーフィンを始めました。そこまでじゃなくても、たとえば、ウォーキングを始めるだけでも違ってきます。
ーー西さんが担当しているコーナーは「おとこっぷり商店」という名前がついていますが、スポーツによって「男っぷり」があがるということでしょうか。
西:はい。身体を鍛えて、さらにスキンケアやヘアケアで見た目の「おとこっぷり」をあげれば、おのずと自信がついてくるんです。30代から40代のみなさんには、そんな自信をもって仕事やプライベートに臨んでもらいたいですね。