年末年始に読んでおきたい! 2018年「退職エントリ」7選
2018年もたくさんの人びとが、それまで勤めていた会社を辞め、ブログでの退職報告、いわゆる「退職エントリ」を書きました。そこには、会社と個人をめぐる様々な考察が表現されていました。
「ひとりを楽しむ」をテーマにした記事を発信するDANROでは、ネットで話題となった「退職エントリ」のなかから、「ひとり」でじっくり考えたことが伝わってくる記事や、「個人にとって会社とは何か?」について深く考える機会を与えてくれる記事を、7つ、年末年始に読むべき「退職エントリ」として選んでみました。
1:6年勤めたNTTを退職しました
NTTの研究所で働いていたソフトウェアエンジニア、くまさんのエントリです。周りの人間関係に恵まれ、勤務体制や給料について「悪くない」としつつも、会社の将来を見すえたときに「絶望」した経緯が綴られています。くまさんの転職先がGoogleであることから、多くの人が国内企業のあり方を考えるきっかけとなりました。この後、NTTを辞めた人の「退職エントリ」がいくつか続いたのも、注目すべき点です。
2:書店員を辞めました(退職エントリを書くつもりだった)
「退職エントリ」といえば、システムエンジニアやプログラマなど、IT系の職に就いている方が書くイメージが強いなか、こちらは投稿者の潮見惣右介さんが「書店員」だったという点で目を引きました。本をはじめとするコンテンツが、インターネットを介してあらゆる人、とくに若い人に届いてほしい、という願いを込めたメッセージとなっています。
3:日本経済新聞社を退職しました
テレビCM「日経電子のバーン」でおなじみ日本経済新聞電子版にシステムエンジニアとして関わっていたというsisidovskiさんのエントリです。「新しい取り組みにどんどん挑戦していけるカルチャーや環境」があったとする一方で、会社には「強烈な縦割り構造が存在し、年功序列、終身雇用といった古き良き日本社会の副作用がそこかしこに内在」していたと振り返ります。辞める理由の1番目に挙げられていた「僕らは会社の犬じゃない。納得は全てに優先する」という言葉が、印象的です。
4:フロム・ソフトウェアを退職しました。ゲームプランナーとして学んだこと
テレビゲームのメーカーで「プランナー」として働いたClamさん。「30までに面白くて売れるゲームを個人で作りたい欲望があふれ」、退職を決意しました。他の退職エントリと大きく異なるのは、「ゲームプランナーとはどんな職業なのか?」「ゲームにおける面白さの本質とは?」というテーマの解説に、記事の大部分を割いている点です。「こういう会社でした」「こういう仕事でした」という情報だけでなく、自分の職種についてわかりやすく伝える配慮がなされています。
5:退職エントリから始まる日報があってもいい
こちらはゲーム業界のなかでも「音楽プログラマ」という聞きなれない職業に就いていたじーくどらむすさんのエントリ。裁量労働制の自由な環境で働くなかで、自分自身にある「目標」を課したことが遠因となって、次第に体調を崩したことに言及しています。じーくどらむすさんは、そこから、どのように考えを変えていったのでしょうか。「仕事と自由」について、深く考えさせられるエントリです。
6:住友化学を退職しました
大手化学メーカーで「農薬を作る部署」にいたという、ひでシスさんのエントリです。こちらも、退職エントリではあまり見かけない職種です。会社と「ミスマッチ」であったことを認め、新卒入社からわずか11カ月で退社した理由を書いています。そこには、大企業であるがゆえのセクショナリズムや、寮から会社までの長い通勤時間に対する不満のほか、「ものづくりがしたかった」という点が挙げられています。実際に就職してみて初めて「自分が本当にやりたかったこと」に気づくという「入社1年目退職エントリ」の代表として、あげてみました。
7:退職エントリー的ななにか
退職した理由がユニークな退職エントリです(退職は前年)。「面白法人カヤック」で働いていたフロントエンジニアのnabettuさんは、妻がつくった保育士のための情報サイトの運営に加わるため、退職を決断します。妻の負担が大きくなりがちだった家事や育児を、フリーランスになることで、「立場を逆転させていこう」とする試みです。子育てと仕事の関係を考えるうえで、示唆に富む内容です。
退職エントリには働く者の「本音」がある
2018年に話題となった退職エントリは、他にもたくさんあります。しかし、今回改めて読み返そうとすると、いくつかはすでに「非公開」設定になっていたり、記事が削除されたりしていました。そんな記事のなかには、非公開とした理由を「大人の事情で」と書いたものもありました。
退職エントリが多くの人の関心を引きつけるのは、退職したからこそ書ける会社の実情やそこで働いていた人の本音が表現されているからでしょう。優れた退職エントリは、読み手に、自分の会社や仕事、自分が本当にやりたいことについて、じっくり考えるきっかけを与えてくれます。
2019年は、あらゆる業種・職種の人たちが、契約に反しないかぎり自由に「退職エントリ」を発表できる。そんな1年になることを願わずにいられません。