早起きすることで気がついた「ひとり時間」を持つことの価値
苦手なものは何か?と聞かれたならば、「早寝早起き、蚊、夏の暑さ」と即答していた私がこんなに早起きに慣れるとはわからないものである。
子供の頃から朝早く起きるのが苦手で、恐怖すらおぼえていた。だから朝早く出発するイベントはたいがい苦手で、前の日から非常に憂鬱だった。釣りや登山、スキーなど、夜も明けきらないうちに家を出るようなイベントは特に苦手で、天候不良などで延期にならないものかとひそかに願っていたものである。
どうも寝付きが悪く、眠るまで時間がかかる体質だったから、ちゃんと早く寝られるかどうかのプレッシャーが大きかったのだと思う。
もちろん早起きの効能みたいなものはそれなりに理解しているつもりだし、早起きがいかに素晴らしいかといった本は何冊も読んだ。著名な経営者の多くが早起きをしているのをみては、少しでもあやかろうと早起きを心がけることもしばしばあった。
しかし、三日と続かない。早起きが何よりも苦手だし、仮に早く目が覚めても時間に余裕があると結局また寝てしまう。早起きは好きではないが、二度寝、三度寝は好きなのだ。
早起きになったのは意志の力ではなく強制力
そんな自分が、今では早起き生活を続けている。人間変わるものだなと我ながら思う。別に歳を取って朝勝手に目が覚めてしまうというわけではないし、何も私の意志が固くなったわけではない。単なる強制力の問題である。家庭環境の変化により、早く起きなくてはならなくなっただけである。この事実を突きつけられた時はどうしたものかと思ったが、こうなったらいっそのこと前向きに取り組もうと考えた。
夜は何時までに寝て、朝は何時に起きるか。目覚ましはスヌーズ付きで複数回、設定する。朝起きたらキッチンに立つ。こうした一連の所作を決め、その通りに行動することにした。いわゆるルーティンである。
早起きを始めた頃は早朝に起きなくてはならないプレッシャーから、布団に入るたびに神妙な思いにとらわれていたが、1週間、2週間、1カ月、2カ月と経つうちにどうということもなくなった。これが習慣化ということであろう。
よくよく考えてみれば、毎朝会社に定時に着くためには、絶対に起きなくてはならないタイムリミットがある。それが8時だろうが5時だろうが、とにかく起きなくてはならないのは同じだ。夜中3時まで夜更かしして8時に起きるのと、12時に寝て5時に起きるのは、睡眠時間としては同じ5時間だ。そうしてみると、毎朝5時台に起きるのもたいしたことではないと思えてきた。
こうした日々をもう2年近く続けられている。ひとえに強制力の賜物ではあるが、こんな私が続けられているのは驚きである。本当に早起きが何よりも苦手だったのだ。大学生の頃などは、どうしても午前中に起きることができなくて、自分にはまっとうな会社勤めは無理なのではないかとあきらめていたほどだ。
早起きで気づいたいくつかの得
早く起きるようになったので、家を出るのも早くなった。早めに出勤することにはいくつか利点がある。まず通勤電車が空いている。空いているとは言っても都心に向かう電車なので、がらがらということはないが、それでもピーク時と比べれば混み具合が全然違う。早めの電車に慣れてくると、もう混雑した電車には戻りたくなくなってくる。たとえ早起きしなくてよい日であっても、率先して早めに家を出るようになったのは、ひとえにこの電車の影響が大きい。
誰もいない会社で仕事をすることのメリットも大きい。今では出社時刻の1時間半から2時間くらい前に会社に着いている。この時間帯は集中できるし頭も働く。皆が出社してくる頃にはひと仕事終えた気分になっている。
時々、通勤途中のカフェに寄る。出社前なので、何をしてもいい自由な時間である。仕事以外のことをしてもいいし、会社の仕事をするとしても、普段なかなか手が付けられない(でも重要な)ことに時間を使うことができる。
ひとり時間を持つことの価値
朝早い出勤はひとりの時間である。話しかけられることもないし、メールもチャットもほとんど来ない。ひとりで仕事をすることのメリットを存分に享受できる。もちろん社内コミュニケーションも大事だからバランスが必要だろうが、ひとりで集中できる場所と時間を持つことは、仕事の質を高めるうえで重要だと改めて実感するようになってきた。
最近ではリモートワークを取り入れる企業も増えてきているが、会社の中にとどまらず、自分が集中できる環境でひとり業務にいそしむというのも時には良いのではないだろうか。もちろん業務内容によってはそうはいかないケースもあるとは思うが、ひとりで進められる業務であれば、ひとりきりになれる環境を作り出すのも時には効果的ではないか。
そういえば以前勤めていた会社では、打ち合わせなどで自由に使える席があって、たまに集中したいときは、そこでひとりで仕事をしていたものだ。ふらりとひとりになれる場所があるかどうかというのも、オフィス環境にとって今後ますます重要になってくるのかもしれない。