自分の婚活本を、離婚後に読み返してみた・下(50代からの独身日記 9)

シンプルに簡素に大切なものだけを身の回りに置いておきたい。
シンプルに簡素に大切なものだけを身の回りに置いておきたい。

2010年に出版した『婚活バカ矯正講座』(小学館)。その時は既婚者だったが、今は50歳過ぎの独身のおっさん。もう一度新婚旅行に行くぞ! と決めてから自著を読み返して、婚活をリスタートしたことは前回のコラムで書いた。その後、さあどうなった!?

数多くの女性へのアドバイスは「とにかく捨てよう」

そもそもこの本を書くきっかけは、大手町でレストランを経営していた時代の、多くのアラフォー独身女性へのアドバイス経験なんですね。みなさん、お客様だからいい加減な助言はできません。ワインを飲みながら、さまざまな体験談や悩みを聞きました。ざっと200人くらいだったでしょうか。大手町という場所柄、仕事において専門分野を持ち自立している女性がほとんどで、それは例えば1回の飲食費にひとり1万円の予算を使うといった方々です。

彼女たちにはいくつかの共通項目があることがわかりました。細かなところは本に書いてあるのですが、ひとことでいうと、「男性」以外、全部持っているんです。専門性を活かせる仕事と、それに伴う年収、留学経験、マンション、ペット、着物に歌舞伎といった趣味、ワインやグルメ情報など。ですから「たくさん持っている女性には、男性は寄り付かないのではないか」という仮説を立ててみました。

その時のワタシからのアドバイスは、「とにかくいろんなモノやコトを捨ててみましょう」だったのです。

それを、独身になったオトコのワタシに当てはめて既婚当時を振り返ると、まあいろいろ持ってましたな。車こそなかったものの、世田谷のマンション、ペット、膨大な数の靴、衣類、CD、今や化石となったVHS、そしてビジネス本などなど。部屋の中はモノで溢れかえり、探し物だけでもひと作業でありました。

それが、とある事情で離婚ということになったときに「これをきっかけに全部捨てるか」と決心。

連載第1回目に「モノ無しライフ」について書きましたが、最初の引越しのときに、マンションから持ち出したのは段ボール箱4つと寝具のみ。引越しを手伝ってくれた友人もビックリで、ワゴン車1台で余裕だったのです。

モノ無しライフは、当時ほぼ一文無しだった生活を劇的に格上げしてくれるきっかけとなったわけであります。しかし、恋愛運については、かするくらいはあったものの、どうもうまくいきません。

そこで、自分で書いた婚活本を読み直してみよう! となったのでありました。

自著のセルフ評論に戻りましょう。

『婚活バカ矯正講座』。田舎のおふくろがたくさん買い込んでいてくれて嬉しかった。

ふたたび「婚活本」の中身より

第5章、「ひと工夫して誘う」。ここには2回目のデートは温泉に誘え! とあります。なんでこんなこと書いたんだろ。普通引きますよね。

「ねえ、次はふたりで温泉にいこう。貸切露天風呂があるいい宿を知ってるんだ」なんて。

バブルの頃だって通じねえぞ、こんなセリフ。ああ、意外に書いたことを忘れているものですね、著者なのに。 しかし、思い起こすと40歳にもなって20代のように愛を育む時間なんてないわけですよ。世の中スピード、スピード。全速力で突っ走って、ダメならさっくり諦める。そんな時代を意識して書いたのかな、と思います。

二人で旅すると早い段階でクセや習慣がわかることは間違いない。

さ、今ならどうか? こんなことしたら逃げられちゃいますね、ほんと。しかし2回目のデートで思い当たるのは、食事以外ですと、たいして見ない映画とか(すぐ寝ちゃうんですワタシ)、行ったこともない遊園地(そもそもあまり好きではない)ではまったくもって面白くない。はて、どうしたものか。

実はこの時点で、9年前に書いた本のコンテンツがまったく今の時代に合わないことに気づいたのです。結婚や恋愛、お付き合いの形など、あの時は使えたぞ!というものが、時代と共に大きく変わっているのです。

第6章、「ひとりで行動する」。 まさに「ひとり時間を楽しむ」ネットメディア『DANRO』のコンセプトを先取りしていたかのようなタイトルではありませんか。出会いの確率を上げるという意味では、集団で行動するよりひとりでいたほうが、声をかけたりかけられたりすることは多いと思うのですよ。

そこで登場するのが、ワインバーというようなカウンターがある店。何度か通っていると、ソムリエが「こちらのお客様はですね……」など隣の紳士を紹介してくれることもある、と書いてあるが、ぼくは淑女を紹介されたことがない……。ダメじゃん! たまたまなのか、店が悪かったのか、自分に問題があったからなのか? うーむ。

オオクニヌシが力を授けられる瞬間。出雲大社にひとり旅。

時折出かけるひとり旅はいいかもしれない、とは思います。しかし、未知なる旅先で劇的な出会いがあれば! と気持ちは高まりますが、現実はそう甘くはありません。この夏に、岩手・宮古から東京まで車でひとり旅を試みましたが、まったく「そんなこと」はなかった……。

期待するとだめなのかな、と気落ちする自分にカツを入れるものの、今年ももうあとわずか。あっという間にクリスマスのジングルベルが鳴り響き、すぐに年の瀬と新年がどどっとやってきます。電車が発車しそうなのに待ち人現れず、という状況は避けたい。しかしここまでくると、ひとり旅に期待するどころの話ではないなあ。

第7章、「成婚者の生活習慣をまねる」。ここには4つの習慣が書かれています。掃除、早起き、料理、神社巡り。ちょっと待てよ。全部当てはまっているのに、今の自分にはまったく効き目がない。

第8章、「ダメなら次! 決して諦めない」。前回も書いたように、昨年のクリスマスに女医さんとの合コンで打ちのめされて以来、すっかりしょぼんとしている自分。でも読み返すといいことが書いてありますよ。

「あきらめと後悔からは何も生まれない」。確かにその通りだ。

「人を好きになる力に勝るものなし」。そうだったのか。

おいおい、自分で書いたんだろって。すみません、拙著を思い出しながらセルフカバーしてるみたいですが、書いたことをそのまま実践しても、うまくいくはずはありません。これは仕事でもなんでも同じであります。

やはり、過去の行動パターンの進化系で動いてもダメですな。この時点で、まったく使えないということはないけれども、その当時の経験や事例が限りなく古くなっているということです。いわゆる「オワコン」です。

さて、そんなことを考えつつ目の前にある仕事やタスクをこなしていく、極めて日常的な時間が過ぎていく日々。50代で独身になってはや3年と4か月。天候大荒れな今年の日本のすでに冬ではありますが、少し風向きが変わったのか、「いいこと」が突然やってきました。

悶々とした時間が長いほどいいことは一瞬で決まるのかもしれない。

出会いは新幹線の中で突然に

出会いは、新幹線の中で劇的に起こりました。長野県へヴァンダンジュ(ワイン用ぶどうの収穫)に行くツアーをビジネスとして企画した時のこと。友人との繋がりで参加した女性に、なんと人生初の「ひとめぼれ」。お米の名前じゃないですよ。幸運にもすぐにいい感じで意気投合してしまいまして、その後、東京でワインを共に楽しむほろ酔い交際状態が続いているわけであります。

こう書いてしまえば実になんてことはないですね。

いろいろ頑張ってみたけど、意外にあっさりと決まるときは決まる。どんなに努力してもダメなものはダメ。人生長く生きていると、道理では考えられないことが起きるものです。

しかし、そうは言っても何か理由があるかもしれない。

その答えは推測でしないのですが、評論に走らず、人様の悪口を言わず、常に動いている人に運気はゆっくりと巡ってくるような気がしてならないのです。そしてそれに気づくかどうか。思い起こせば「あのときもしかしたら」なんてことはありますよね?

結論。9年前に書いた自分の本など読まずに、現在の自分に自信を持っていればいいのかな。マイペースで動きながら、アンテナは常に張っておく。電波はきっと、いつも飛んでいますからね。

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嶋啓祐 (しま・けいすけ)

地方創生という大きなテーマの中にある「食」をテーマにした「地域起こし」に従事。北海道生まれではあるが、島根県に異常に詳しい。ミョウガやネギ、クレソンといった癖のある野菜を好む。古事記に出てくる舞台をすべて巡り、10年前から御朱印を収集。コンビニの便利さが嫌いで、近寄らない。蒲田に引っ越し、酒場巡りの毎日を過ごす。

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