モロッコ愛が止まらない!仕込みに8時間かけるモロッコ料理店
コロナ禍で海外旅行に行くのが難しいいま、日本で「世界の料理を食べ尽くしたい」と考えている私。先日の記事では、珍しい多国籍料理が食べられるカフェを紹介しましたが、今回は「モロッコ料理」に注目です!
取り上げるのは、東京・東北沢の「モロッコ料理の台所 エンリケマルエコス」。おいしい料理店はたくさんあれど、この店ほど溢れ出る料理への情熱を感じるお店はありません。
オーナーシェフの小川歩美さんは、世界中を歩いた元バックパッカー。何カ国に行ったのかと聞いたら、「覚えてないけど、4つの大陸には行ったかな」とのこと。国の数を答えると思いきや、大陸で来た!
モロッコ料理に魅せられて本国に移住
エンリケマルエコスは小田急線東北沢駅から徒歩5分、住宅街の中にある一軒家のレストラン。座席数は8、カウンターのみの小さなお店です。
ひとりで行くなら、混んでない平日の時間帯がオススメ。カウンターに座って、小川さんと会話しながら食事するのも楽しいお店です。
小川さんは、大学在学中の4年間にいろんな国を旅しましたが、最後の卒業旅行で行ったモロッコで料理の美味しさに感動。大学卒業後、一般企業に就職するも退職し、モロッコ料理の研究家のアシスタントとなりました。
さらにモロッコ料理を本格的に勉強したいと、モロッコへ移住。ついには本場で有名な料理家に師事するようになり、料理番組・雑誌の調理を担当するアシスタントになったのです。
この経歴だけでもパワフルですが、最初のひとり旅でも、小川さんはスゴかった。当時から料理に興味があった小川さん。おいしいと思ったら、そのレシピを知りたいと熱く訴え、調理場に入って教えてもらっていたのだとか。
そのうちにレストランではなく、モロッコ人のどこかのご家庭で食事をするようになり、結果的に1カ月半の滞在中に、レストランで食事したのは2回だけだったそうです。
モロッコの公用語はアラビア語とフランス語ですが、当時はどちらも話せず、小川さんは英語とゼスチャーで、モロッコ人はアラビア語で会話していたとか。こんな大学生、ちょっといません。
モロッコの本当においしい料理を伝えたい
「モロッコでは、レストランの食事より家庭の料理のほうが断然おいしい」と語る小川さん。イスラム教のモロッコでは、外食する文化はなく、食事は家で食べるもの。女性たちは1日のほとんどを台所で過ごし、時間をかけておいしい料理を作ります。
「基本はスローフード。モロッコのお母さんたちは、時短料理という概念はありません」
その愛情たっぷりで、手間ひまをかけた料理を紹介したいと、2009年に「モロッコ料理の台所エンリケマルエコス」をオープンしたのです。
モロッコ料理といえば、タジンとクスクスが代表料理です。タジンは独特の形をした鍋で作る肉や野菜の蒸し料理。クスクスは「世界最小のパスタ」とも言われる、小麦粉を原料にした粒状の料理です。どちらも、食材を引き立てるためのスパイスとハーブを使った、シンプルでやさしい味が特徴です。
小川さんはひとりでこのお店を切り盛り。営業時間は、ランチはなく夕方からの営業です。ランチをやらない理由を聞いてみたところ、仕込みに時間がかかるからとのこと。なんと朝10時から当日の仕込みを開始しています。
例えば、クスクスの仕込みだけで約2時間。クスクスってお湯で戻すだけかと思っていた。それを伝えると、「それダメー!絶対ダメ!まるで別物よ」と元気に完全否定されました。
「モロッコの家庭では、時間をかけて蒸しあげるもの。お湯で戻すだけのものとは、まるで別物なんですよ」
野菜を蒸し器の下に入れ、その上にクスクスを入れて蒸らすこと1時間。こうすることで野菜の香りが移り、ふっくらと仕上がるのだとか。
そう、この店はクスクス自体がとってもおいしいんです。今まで他の店で食べていたクスクスとは、香りが全く違う。あの独特の匂いがなく、パサパサ感がない。一粒一粒がふんわりとして、とってもやさしいお味。
クスクスってお湯をかけるだけのものだと思っていましたが、蒸すという工程をきちんとすることによって、こんなに味が豊かになるんですね。
タジンのイメージは肉と野菜だった私ですが、魚もあるなんて知らなかった。地中海と大西洋に面したモロッコでは、海辺の人たちはよく魚料理も食べるんだそう。
ほどよいスパイスがアクセントになって、これは絶品。メニュー選びに迷ったら、これをぜひオススメしたい!
ほかにも羊や鶏肉、野菜などのタジンがあり、めずらしいところでは、茶碗蒸しのようなオムレツのタジンもあります。
カウンターで小川さんの話を聞くのも楽しい!
タジンとクスクスは、どちらもメイン料理で、本来はこの2つを同時に食べるということは、少ないんだそう。ひとりならどのように食べたら良いか、小川さんに聞いてみると、「タジンかクスクスのどちらかを選んで、ハリラと一緒にご注文されることが多い」とのことでした。
おひとりで切り盛りしているので忙しそうですが、ちょっと空いている時間には、いろいろと気さくに話してくれます。ひとりで訪れて、カウンターで小川さんの話を聞くのは楽しいものです。
狙い目は平日の夜。料理だけではなく、モロッコの文化や旅について聞いたり。適度にゆるい感じでもありながら、自然体で明るいので、話していると元気になります。
2、3人で訪れる客が多く、週末は賑やかなことも多い店ですが、それを踏まえてもぜひオススメしたい。とにかく料理がおいしく、ホッとする味で、モロッコ料理がきっと大好きになります。
ちなみに、タジンは提供するまで20〜30分かかります。本当のおいしいモロッコ料理には「時短」の概念はありません。その時間を突破できれば、きっと素晴らしい食事が待っています。
モロッコ料理の台所 エンリケマルエコス
東京都世田谷区北沢3-1-15
03-3467-110
火〜金曜18:00〜22:00 (L.O)
土・日曜 17:30〜21:30 (L.O)
月曜定休
ウェブサイト:http://cuisinedumaroc.jp