「頼むから普通の人を紹介して!」アラフィフ女性の婚活リアル

(イラスト・古本有美)

30代女性が婚活する理由の一つに出産リミットがあるだろう。では、アラフィフ世代は結婚に何を望んでいるのだろうか。私の高校時代の友人で、アロマセラピストの木下智美さん(仮名・49歳)は、10年前に結婚相談所に入会。しかし、未だ理想の相手とは出会っていない。木下さんは斉藤由貴似の美人。高校時代は彼氏もいて、私たち男子は羨望の眼差しで見ていた。

起業と失恋で婚期を逃した!?

「高校時代からつき合っていた彼と当然、結婚するつもりでいた。でも、22歳のときに色々あって別れたの。当時勤めていた会社にも気になる人はいたんだけど、私、熱しにくくて、冷めにくいタイプだから。相談していた同僚がいつの間にかその人と連絡を取ってて、遊びに行ったりしてたみたい。裏切られたって感じ!」

短大卒業後に就職した会社では総務部秘書課に配属された。女子社員にとっては花形の部署だったが、社内は不倫カップルが多く、うんざりしていた。そんな木下さんを癒やしてくれたのは、会社帰りや休日に通っていたアロマセラピーだった。アロマオイルの魅力にのめり込み、アロマセラピストの資格を取得し、29歳のときに独立した。

「OL時代に貯めた結婚資金でビルの一室を借りてアロマスタジオを作った。婚期を逃すのではないかって親が心配したから、安心させるために結婚相談所に登録したけど、結婚する気なんてなかった。男性会員も紹介されたけど、もちろん断ったわよ。社会勉強にはなったけどね」

アロマセラピーの仕事も軌道に乗りはじめた34歳のときに5歳年上の彼氏ができた。木下さんの仕事を理解し、応援もしてくれる、いわば心の支えだった。そして、交際から3年後にプロポーズされた。嬉しかったが、巷の女子のようにその気持ちを可愛らしく表現することができなかっため、その場がヘンな空気になった。彼氏はそれ以降、結婚について口にしなくなった。

「今思えば、なんて私はバカなんだと思うけど、当時は自然な成り行きで結婚すると思ってた。でも、お互いに結婚の意思の有無を確認し合わなきゃ始まらないわよね。結局、プロポーズから2年後に彼の方から去って行ったわ」

彼氏との別れを機に、結婚願望が芽生えた。しかし、当時はすでに39歳。すぐに結婚したとしても出産リミットを考えざるを得なかった。そんな危機感から、今度は自らの意志で結婚相談所の扉を叩いた。親の心配もあり、3カ所の相談所に入会した。

「もう年齢も年齢なので、顔や見た目、学齢、身長など相手に求めるのは良くないと思った。私が出した条件としては、私の仕事を理解してくれて、生活が安定していることと、実家の近くに住んでいることくらいかな。相談所の人からはサラリーマンの方が良いと言われたんだけど、私の実家が自営業ということもあって、サラリーマンの家庭がイメージできなくて」

39歳とはいえ、斉藤由貴似の美人である。入会してすぐに相談所から面会を希望する男性会員を紹介された。木下さんもネットでプロフィールを見た男性会員に面会をリクエストしたが、お見合いにまでは至らなかったという。

紹介されるのは「売れ残り」ばかり

今まで会ったのは10人くらい。仕事はメーカーの研究や開発、製造といった、いわゆる理系男子が多かった。中学、高校、大学、そして職場においても、女性とはほぼ無縁の生活を送っていたと思われる。相談所の担当者が勧めたのは、婚期を逃したオジサンばかりだった。言い方が悪いが、「売れ残り」しかいなかったのだ。

「食事へ行こうと思っていた店を下調べしていなくて、その日は定休日。車の中でフリーズしてしまった人とか、自分が通っていた大学院の博士課程修了書を持参して、まるで裁判所の前で『勝訴!』みたいに自慢げに目の前でそれを広げた人もいた。テニスが趣味という人とテニスコートで待ち合わせしたら、地味顔に似合わない派手なイエローのウェア姿。しかも、今どきセカンドポーチを小脇に抱えて。容姿にはこだわらないって決めていたけど、どうしても無理だった」

女性と縁がないのであれば、スナックやキャバクラへ行って少しでも女性慣れする努力をすればと思うが、きっと、その勇気もないのだろう。しかも、そんな男性を「自分にぴったりの相手」だとか、「きっと幸せな結婚ができると思う」と勧めてくる相談所にも嫌気が差してきた。

40代前半までは男性会員から面会のオファーは少なからずあったが、半ばを過ぎた頃にはめっきりと減った。と、いうか、ほぼ無くなった。49歳となった今、結婚についてどのように考えているのだろうか?

「そりゃ結婚したいし、しなきゃいけないとは思ってる。さすがにもう子供は諦めざるを得ないけどね。このまま一人で生きては行けないから、一緒に人生を歩んでくれる心優しいパートナーがほしいよね。恋人同士のベタベタとした関係ではなくて、精神的な繋がりを求めてる。相談所には、頼むから普通の人を紹介してって言いたい」

結婚相談所に登録する20代、30代の女性は、経済力を求めるあまり同世代の男性よりも40代以上の男性との結婚を望んでいると聞く。そうなると、アラフィフ女性の結婚はますます難しくなる。木下さんに春が来ることを祈るばかりだ。

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