「声優になってアニメの悪役をやりたい」ニューヨークの本屋で日本語を「音読」するアメリカ人

日本語を独学しているグレゴリー・ジーンさん
日本語を独学しているグレゴリー・ジーンさん

ニューヨークの紀伊国屋書店の日本語教科書コーナーで、熱心に教科書を選んでいる人を見かけることは珍しくありません。が、あるとき、30歳くらいの男性が小声で教科書を「音読」していました。ここまで熱心な人を見たのは初めてだったので声をかけると、なんと、10年以上も独学で日本語を学んでいるということでした。

日本人と話すのはキンチョーする

100年早いんだよっ!

「ビデオゲームでこの言葉を聞いたとき、笑ってしまいました。すごくクール!」

グレッグ・ジーンさん(30歳)は、高校時代から、毎日ひとりで日本語を勉強しています。日本のアニメやビデオゲーム、テレビドラマ、Jポップなどで聞いた台詞や歌詞をノートに書き写し、鏡の中の自分に向かって何度も繰り返し言ってみる、という方法で。

「アニメは難しい。方言などが出てきて。でも、おもしろい。東京方言と大阪方言は違う。例えば、『本当ですか?』は、大阪では『ホンマですか?』。北海道の方言もわかります。『じゃあ、また』と言うところ、北海道では『したっけ』。それもアニメで覚えました」

さらには、スマホのアプリを使って、日本のことわざを読んでくれました。

明日は明日の風が吹く。

あとは野となれ山となれ。

日本語のことわざをスマホで見せてくれた

学校で授業を受けたこともなく、日本人の友だちもおらず、たまに日本語を試してみるのは、バンド仲間である日本人とのハーフの友人、そして、バリスタとして働くカフェにやってくる日本人客だけです。

「ときどき日本人のお客さんが来る。キンチョーするけど、短いフレーズを試してみます。『ご注文は?』とか、『お待たせしました』と言うと、(お客さんは)『スゴイですねえ』」

どうして日本人だとわかるのかというと……。

「(支払いのときに渡される)カードに名前が書いてある。『まことさん。あ、日本人!頑張って、頑張って』(と、心の中で自分を励まして)『おはようございます』すると、『あ、日本語できるの?』、『はい、少しできる』……」

グレッグさんはちょっと照れくさそうに、でも、うれしそうに話してくれます。慣れない外国語でネイティブスピーカーに話しかけるときのドキドキとワクワクが、こちらの喉もとにも伝わってきます。

日本人のバンドかと思ったら

もちろん失敗もあります。

あばよ!

「お店に日本人のお客さんが来たときに使ってみたら、お客さんに『その言葉は古いから、もう使わない方がいいよ』と言われました」

グレッグさんのノート。「関西弁」が列挙されていた

せっかく言葉やフレーズを覚えても、どういうときに使えばいいのか、逆に使ってはいけないのかわからない……。これが独学の悩みです。

あるとき、フェイスブックを見ていると、「Akari」というバンドがベースギターのメンバーを募集していました。

「あ、日本人のバンドだ!」

Xジャパンやビジュアル系など、Jロックに影響されてベースギターを始めたグレッグさんは、早速コンタクトしますが……。

「会ったら日本人のバンドじゃなかった。でも、いいですよ。ドラマーはハーフジャパニーズだった。このバンドで2年間活動しています。『日本語能力試験受けてみます』と言ったら、『頑張って』と言ってくれた。でも、試験は失敗しました」

侍のマインドセットや修行に興味がある

現在20代や30代で日本語を学んでいる人の多くがそうであるように、グレッグさんが日本語を学び始めたのもアニメがきっかけでした。

「『僕のヒーローアカデミア』というアニメの『平和の象徴です』という言葉が気に入った。『大丈夫、俺が来た』というフレーズにも、すごく感動しました」

夢はアニメの声優になって、日本語で台詞を言うこと。声がハスキーなので、悪役をやりたいそうです。人がよさそうなオーラを放射しているグレッグさんは、たとえ声優でも冷酷な極悪人には向かないかもしれませんが、シャイでどこかお人好しな悪役ならハマリそうです。

カフェで働いている。日本人の客が来ると、思い切って日本語を試してみる

グレッグさんにとっての日本語の魅力ですが、言葉そのものだけでなく日本人のbehavior(態度)にもあると言います。

「先輩が後輩に喋るとき、後輩が先輩に喋るとき、友だちどうしで喋るときで話し方が違います。仕事では『何にいたしますか?』、友だちなら『何飲む?』。そういう使い分けがクール!」

「侍のマインドセットや、侍になるための修行や鍛錬にとても惹かれます。侍、刀、お辞儀の仕方、切腹、徳川の歴史に興味があります。もっと勉強したい」

外国語の勉強をしたことのある人なら、途中で何度か嫌になって勉強を投げ出しては再開する、という経験をした人も少なくないでしょう。強いモチベーションがあっても語学を学び続けるのは難しいものです。なのに、なぜグレッグさんは10年以上も、それも独学で勉強してこられたのでしょう。答えは明快でした。

「(勉強を続けると)決心したから。」

「日本語の勉強は楽しいし、独学はピースフル。いつも何か新しいことを覚えます。それが楽しいんですよ! いつか完璧に日本語を理解したい。でも、ほんと、難しいです」

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