彼女いない歴21年のプロギャンブラーが語る恋愛観「勝率が低い結婚というギャンブルは賭けにくい」

世界中のカジノを渡り歩きながら、15年間もギャンブルだけで生きてきたプロギャンブラー・のぶきさん(本名:新井乃武喜/47歳)。結婚歴はなく、恋人に至っては21年間もいないといいます。そんな破天荒な人生を送っているのぶきさんに、なぜ恋人を作らないのか、結婚しないのか、子どもはいらないのか、そしてこの先どうするつもりなのか、などについて聞きました。

“黒歴史”の経験が結婚以外の幸せに気づかせた

──のぶきさんは今、結婚したいと思っていますか?

のぶき:20代前半までは結婚へのあこがれを抱いていましたが、年を取るごとに減りました。

──なぜですか?

のぶき:今の日本の離婚率は35%。ということは、毎年3組に1組は離婚しているってことですよね。離婚までには至らずとも、仮面夫婦や別居など、結婚生活が破たんしかけている夫婦を入れると、50%を超えていると予測できますよね。そう考えると、結婚は勝率が低い勝負だと言わざるをえません。そんな勝負に本気でトライしたい気持ちって、起きにくいんですよね。

──結婚を勝率で考えるとは、さすがプロギャンブラーですね。

のぶき:結婚とは一生を賭けた勝負。「この人とだったら自分の人生を賭けてみたい」という女性がどんな人なのか、自分でもよくわかっていないんですよ。

──今までに結婚したいと思った女性は?

のぶき:自分から積極的に「この人と結婚したい」と思う人はいませんでした。ただ、20代の頃、付き合っていた彼女と結婚を考えたことはあります。

──その時なぜ結婚しなかったんですか?

のぶき:不可抗力というか、やむにやまれぬ事情があり(笑)。22歳くらいの頃、付き合っていた彼女に「結婚したい」と言われて、断る理由もないから前向きに考えていました。でも、彼女が浮気したんです。しかも、僕が紹介したバイト先の男と。僕は恋人に浮気されたら、瞬殺で終わらせます。2度と100%信じることができない相手といても、人生の負けにつながりやすいので。

ちなみに、彼女は「もしあなたが浮気したら、このビルの屋上から飛び降りて死ぬから」って言ってたのですが、僕が浮気された場合の飛び降りってどうなるんかい! って。これ、かなり黒歴史なんですが(笑)。

その後、彼女がいない身軽さから25歳で日本を飛び出し、プロギャンブラーになって15年間、世界を放浪しつつ勝負し続けました。そのまま21年間、彼女すらいないんですよ。

──じゃあ、その浮気事件がなかったら結婚していた?

のぶき:もちろんしていました。ちなみに日本を出る25歳までに、お付き合いした女性は4人いますが、そのうちの3人に浮気されているんですよ。

──浮気女の引きが強いですね。

のぶき:結構高い率ですよね。

──もしかして、その黒歴史がトラウマになって、21年間も彼女を作らなかったとか?

のぶき:それもゼロではないと思いますが、それよりも自分の天職を見つけたことが大きいですね。彼女に浮気されたことを1つのきっかけとして、自分のやってみたいことをとことん考えてみました。プロギャンブラーになってからは人生がめちゃめちゃ楽しくなって、彼女がほしいという気すらなくなったんです。

ギャンブルと恋愛の両立は不可能

──ギャンブルしつつ恋愛も楽しむというのはできないんですか?

のぶき:ポーカーのテクニックの1つに、他人の行動からその人の心を読み抜く“テルズ”というものがあります。それを自分自身へ応用すると、自分の行動から自分の気持ち、考えが把握できる。自分のことを把握するって、難しいですから。もし彼女がほしいのなら、世界を転々としながら稼ぐプロギャンブラーという職業は絶対に選ばないわけです。

例えばアメリカの場合、滞在できるのはビザの関係で最長3ヵ月。その後は1カ月くらいアメリカ以外の国へ出ないといけません。当時は友人によく「来月はどこで何してるの?」って聞かれても、僕ですらわからない。「地球上のどこかでギャンブルか、旅してる」と答えるしかなかった。そんな生活をしていて、彼女なんてできるわけがないですよね。もし本当に彼女がほしかったら、定住して定職に就きますよ。何より、プロギャンブラーになって勝ち続けようと思ったらもっと無理です。

──勝負の邪魔になる?

のぶき:敗因にはなりますよね。勝負に勝つためには膨大な時間と精神的エネルギーを必要とします。もし彼女がいると、勝つために努力をする時間も経るし、ケンカをしてれば勝負への集中力も削がれる。勝負って目の前のことにどれだけ集中できるかで決まるので、自分の時間を100%ギャンブルのために使えなくなってしまうと負ける確率が高くなるんです。

21年間も彼女がいない男はモテない!

──今は日本に定住してるから彼女を作ろうと思えば作れますよね。今もほしくないんですか?

のぶき:ほしくないと言えば嘘になりますね。

──のぶきさんと付き合いたいという女性はたくさんいるでしょう。めちゃくちゃ知り合い多いし。

のぶき:そんなことないです。知り合いはおかげさまで多くなってうれしいかぎりですけど。よくいろんな人から「そんなこと言って、実はモテるんでしょ?」 って言われるんですけど、いやいや、21年間も彼女がいない男はモテない!(キッパリ)

──でも、今も言い寄ってくる女性はいるんでしょう?

のぶき:ゼロではないです。

──じゃあ付き合えばいいじゃないですか。

のぶき:いやいや、よく考えてみてくださいよ。僕、21年間も彼女がいないんすよ? ギネスレベルですよ。そうなるともう好きなタイプとか、この女性とどのくらい付き合いたいのかとか、わかんなくなってくるんですよ。正直、「もう誰でもいいんじゃないのか」と思ったことすらあります。

──誰でもいいなら、とりあえず付き合ってもいいですよね?

のぶき:そうなんですけど、やっぱり考えちゃうんですよね。本当にこの人と付き合っていいのかって。それでそのまま時間だけが経っちゃって、そういう話もいつの間にか立ち消えになってしまうんです。一方的に僕がいけないんですけど。

──21年も彼女がいないから、彼女の作り方とか恋愛の仕方がよくわかんないってことですか?

のぶき:そんな感じですね。でも決して彼女がいらないというわけじゃないんですけどね……。今思ったんですが、勝つためには“want”、つまり「~したい」じゃダメなんですよ。よくいるじゃないですか、もう長いこと「○○したいなあ」って言ってるだけの人。それではいつまで経っても勝てない。挑む勝負に勝ったり、夢や目標を実現するためには“must”、つまり「絶対~する」って決断しないとダメ。だから僕の場合、恋愛や結婚に関しては“want”レベルなので、結果も実ってないのかと。

──それはなぜなんでしょう。

のぶき:やっぱり彼女がいなくても毎日が充実していて楽しいからでしょうね。プロギャンブラーとして世界中を周って勝負をしていた時も、旅をしていた時も楽しかったし、今は人のために働けるのが楽しい。今のメインの仕事は講演なのですが、そこで話して主催者や聞いてくれた人に感謝されると、自分のためだけに生きていた頃とは比べ物にならない喜びを得られるんです。

それと、将来政治家になって世の中をよくしたいと本気で思っているので、今はそのために自分のもてる時間と労力、能力のすべてを投入したいし、そうするのが楽しいんですよね。だから今、彼女の必要性がどこまであるかというと、もちろんいたら素敵ですけど、いなくても全然素敵なんですよ。満たされまくっているから。

子どもはいらないとは言い切れない

──なるほど。ギャンブラー時代と同じってことですね。ではひとりでいることのデメリットは?

のぶき:ほぼないですね。人生の軸って3つあって、一番大事なのは時間。2番目は夢・目標。3番目はお金。この3つをどう動かすかで人生は決まりますけど、ひとりだと全部自由にできます。自由だと責任がないから楽ですよね。結局、人間は自分の幸せのために生きていくべきなので、幸せであればひとりでも全く問題ない。ただ1つ挙げるとすれば、子どもが作れないだけです。

──ということは、子どもはほしいということですね。

のぶき:47歳で言うのも何ですが、まだ「僕の人生に子どもはいらない」とは言い切りたくないんです。その理由は複合的にあります。まず、「子どもなんて作らなければよかった」と後悔しているお年寄りに出会ったことがないからです。だから子どもをもつことは素敵なことと思うんです。他には、生物の使命として種の保存があるということを学んでいるので、子どもを作った方がいいのかなと洗脳や自己暗示していたり。

また、両親が健在のうちに子どもを見せてあげてもいいかなという思いもあります。あとは、何かの記事で40代の女性が「子どもを作らないと決めた」と言っているのを読んだ時、心がざわついたんです。ということは、裏を返せば子どもがほしいという気持ちがあるんだと感じたんです。

──でものぶきさんなら、もし子どもがほしいという目標を立てれば、その実現に向けて人の何倍も努力しますよね。やってないってことは……

のぶき:そうなんですよ! そこなんですよ! 本当に子どもがほしいと思えば、まず彼女を作って結婚するわけですけど、具体的な行動を何も起こしていないということは、まだそれも、さっき話した“want”レベルなんですよね。

孤独死上等。すべては流れのままに

──今後のことについてお聞きしたいんですが、絶対結婚したくないわけじゃないし、子どももあきらめたわけじゃないんですよね? ではこの先はどうするつもりですか?

のぶき:そうですね。僕も子どもがほしいという思いがもっと強くなったら、今の「政治家になる」という目標に「子どもを作ること」も加味し、そのために結婚も含めてシフトするでしょうね。素敵な人と付き合えて、お互いに子どもがほしければすぐ結婚すると思いますよ。ただ、それが21年間なかったので、ギャンブラー的に言うと、この先の21年間もない可能性が50%ありますよね(笑)。いや、いま気づいたけど、若い方が結婚しやすいと考えると、50%どころか、80%以上はなさそう。さすがに、さらに21年経った68歳にはあきらめてると思いますけど(笑)。

──確かに今のひとりの生活に満足していて、やりがいのある仕事に打ち込み、大きな目標もあるから、恋愛や結婚の必要性を感じていない。となると、この先彼女がほしいとか結婚したいと思う可能性って、ものすごく低いですよね。

のぶき:あはは(笑)。“want”レベルは今でもあります。けど “must”レベルは確かに低そうですね。

──この先ひとりのまま60、70、80歳になっても全く問題ない?

のぶき:全然OKです。今僕が住んでる「ソーシャルレジデンス蒲田」というシェアハウスには260人もの住人がいるんですけど、そのうち40代の独身が60人もいるんです。ほぼ男性で、毎日のように共用スペースで楽しく飲んでます。「ひとり」という感覚がなくていっぱい仲間がいるから、寂しいどころの話じゃない。それがそのまま50、60代に移行して、年を取ってひとりでも、みんなでおもしろおかしく暮せるから楽しみしかないですね。

──将来の不安や悩みもない?

のぶき:全然ないですね。もし僕がひとり暮らしをしていて孤独死しても、全然OKですね。ひとりで突然死、孤独死みたいな死に方は嫌だ、だから結婚したいという人が多いですが、孤独死の何が嫌か全然わからないです。何が問題なんですかね? だってみんないつかは死ぬし、死ぬ時って一瞬ですよ。そんなことを心配するよりも、大事なのは今を楽しむことです。

精一杯に自分のやりたいことをやって生きたいように生きていればいいんです。その過程で自然と素敵な女性と出会えればお付き合いして結婚すればいいし、出会えなければ無理に結婚しないって選択もひとつの生き方かと考えてます。

~取材を終えて~

のぶきさんとは歳も近く、未婚、彼女なしと共通点が多い。おまけにどんだけ好きでも浮気されたら無理! とか、結婚したくないわけじゃないけれど、具体的な行動は一切起こしていないという点も同じ。唯一違うのは彼女がほしいという点のみ。それも彼女を作るために何の行動もしていないという点は同じ。それだけにのぶきさんの話にはうなずく点が多く、まるで自分自身と話しているようでした。「今は満たされているからひとりでも全く問題ないし、将来の不安も全くない」という話を聞いて、改めて「自分は満たされてはいないんだな」と気づけただけでもよかったです。現場からは以上です。

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山下久猛 (やました・ひさたけ)

1969年愛媛県生まれ。アラフィフ独身のフリーランスライター・編集者にしてDANROの愛読者でもある。某呑み会で編集長に直訴してDANROライターに。人物インタビューを得意としており、雑誌・Webの他、仕事紹介系書籍の執筆や、経営者本の構成も数多く手がけている。趣味は居酒屋巡りと写真撮影とスクーバダイビング。

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