総額210億円の「ストラディヴァリウス」展「この楽器の本当の価値を知ってほしい」

世界最高峰の弦楽器「ストラディヴァリウス」を一堂に集めた展覧会が、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで10月15日まで開催されています。展示されているヴァイオリンやギターなど21挺の楽器の推定総額は、約210億円。代表キュレーターで日本ヴァイオリン株式会社社長の中澤創太さんは「名前と値段ばかりが先行していると感じますが、ストラディヴァリウスの本当の価値を知ってもらいたい」と語っています。

300年間の演奏家の思いが凝縮
ストラディヴァリウスとは、17~18世紀にイタリアのアントニオ・ストラディバリが製作した弦楽器です。ヴァイオリンが有名ですが、ヴィオラやギターなども含まれています。現在は世界に600挺ほど存在。中澤さんは、製作から300年ほどたった今も「生きた楽器」だと表現しながら、その魅力を次のように語っています。
「完成度の高いフォルムの美しさと独特の音色です。これまでの約300年間、国をまたいで世界的な音楽家の手を渡ってきました。その演奏と人の思いの蓄積が音色にすべて凝縮されています」

展示されている21挺は、制作年の順番に並んでいます。ストラディバリが死ぬ前年の92歳の頃の作品「Roussy(ルーシー)」や、ZOZOの前澤友作社長が購入したことで知られる「Hamma(ハンマ)」も展示されています。21挺のそれぞれの特徴は、展覧会の公式サイトで紹介されています。

中澤さんが特に思い入れがあるのは、装飾的な意匠が施された「Rode(ロード)」(推定金額・20億円)。王侯貴族に献上するために作られたと言われているそうです。
会場に来ていた20代の男性は「これまでの長い間、いろんな人に演奏されて受け継がれてきたのだと思うと、一個一個のストラディヴァリウスが生きているように見えました」と話していました。また、40代の女性は「歴史的背景や楽器の成り立ちを知らなかったので、勉強になりました」と語っていました。
ストラディヴァリウスの「生演奏会」を実施
今回の展覧会は「見る」だけでなく、「聴く」ことができるのも特徴です。1日に2、3回の「生演奏会」を開催しています。展示中のケースの中から楽器を取り出し、プロの音楽家が演奏します。さらに、音響設計家の豊田泰久さんなどをゲストを招いたトークセッションを行います。

中澤さんは来場者に向けて、次のように語っています。
「ヴァイオリンを広めることで、クラシック音楽全体を盛り上げたいです。日本でこれまで素晴らしい音楽祭はたくさんありましたが、あくまで主役は『音楽』や『音楽家』でした。今回のように『楽器』が主役なのは初めての試みではないでしょうか。ぜひ、展覧会でストラディヴァリウスの本当の魅力を知ってもらえたらと思います」
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