セクハラやネット炎上と戦う「女性アナウンサー」のドラマ NY在住日本人が製作するワケ

セクハラ、盗撮、ステマ、ネット炎上・・・ニューヨークのニュースアプリ会社で働く日本人の女性アナウンサーが「メディアの闇」と戦いながら、新人ジャーナリストとして生き抜いていこうとする。現在製作中の連続ドラマ「報道バズ」は、そんな物語です。

製作しているのは、ニューヨークに住む3人の日本人(2人の女性と1人のゲイの男性)が結成した「デルック」という映像製作チーム。「日本における女性の扱われ方やメディアのあり方について、問いを投げかけたい」という彼女たちは、ドラマの完成に必要な資金を募るため、インターネットでクラウドファンディングを始めました。

主人公を演じる俳優であると同時に、ドラマの共同プロデューサーを務める本田真穂さんは「見た後に人と会話が生まれるドラマにしたい」と話しています。

ドラマ「報道バズ」の出演者たち

主人公はNYで心機一転をはかる女性アナウンサー

「報道バズ」の主人公は、アラサーの女性アナウンサー。日本のテレビ局でセクハラに耐えながらバラエティ番組を担当していました。しかし、もともと報道志望だったこともあり、心機一転。米国ニューヨークのニュースメディアに転職したところから、物語は始まります。

新しい街で新しい仕事を、と意気込むものの、女性であることやバラエティ出身であることを理由に、新しい上司や同僚には信頼してもらえません。さらに、インターネットでは彼女への誹謗中傷が殺到し、必死に事件を追えば追うほど、さまざまな困難が待ち受けていました・・・

主人公を演じる本田さんは、早稲田大学を卒業後、モデルやドラマ出演などの芸能活動を経て、2009年に渡米しました。アメリカの人気テレビドラマ『ニュースルーム(HBO)』などに出演。今年はニューヨークで上演された劇作家・岡田利規さん作の「部屋に流れる時間の旅」にも出演し、米紙・ニューヨークタイムズで批評家が推奨する舞台として取り上げられました。

新人ジャーナリストとして奮闘する主人公を演じる本田真穂さん

行動を起こす「個人」を後押ししたい

「報道バズ」のストーリーは、日本の芸能界時代を経て渡米した本田さんにも通ずる部分があるのではないか。そうたずねると、本田さんはこう答えました。

「人前に出る機会が多い職業の方が経験することだと思いますが、私もインターネットで、不特定多数の匿名の人たちから中傷された経験があります。水着の仕事でテレビや雑誌に出始めたとき、『ブス』『デブ』『O脚』『死ね』などと罵られました。当時は全く免疫がなかったので、傷つきました」

そして、次のように続けました。

「日本では個人としてすごく問題意識を持っていても、組織全体では動けないことが多いから、組織の外に出て声をあげる人がいます。個人で何か行動を起こしたい。そういう人がもしいたら、このドラマを通して、応援できたらいいなと思っています」

映像製作チーム「デルック」。左から、本田真穂さん、川出真理さん、近藤司さん

3人の日本人クリエイターが力を結集

ドラマの撮影は全編を通して、ニューヨークで行われました。製作チーム「デルック」は、俳優である本田さんのほか、監督の川出真理さんと脚本家の近藤司さんの3人で構成されています。3人とも、生まれも育ちも日本ながら、大人になってから米国に渡り、たくさんのカルチャーショックを経験してきました。

脚本家の近藤さんは、ゲイであることを明かしている「オープンリーゲイ」です。女性とゲイの男性の視点から、「女らしさ」や「男らしさ」などの固定観念と戦うキャラクターを描いています。このメンバーでニューヨークからメッセージを発信することについて、本田さんは次のように語ります。

「ニューヨークは国籍や性別など多様性のある街。人は人を『鏡』にして自分を知ることがありますが、ここはその鏡が本当に多様だと感じます。多様な価値観を発信すると、だんだんと受け手の意識も変わるかもしれない。メインストリームのメディアとは別の視点から、発信できたらと思っています」

「報道バズ」のワンシーン

3万ドルを募ってクラウドファンディング

「報道バズ」の撮影は、2016年にすでに完了しています。しかし、映像の編集作業や音楽制作にかかる一部の費用が足りず、完成が遅れています。そこで必要な資金を集めるために、7月11日からクラウドファンディングサイト「キックスターター」で、支援を募り始めました。目標額は、3万ドル(約340万円)です。

大ヒットした映画『この世界の片隅に』の製作代表である桝山寛さんもこの作品に注目し、エグゼクティブプロデューサーとして参加しているといいます。

本田さんは「シェアだけでも大歓迎」と言いながら、協力を呼びかけています。

「クラウドファンディングを通じて、『報道バズ』の配信に向けたコミュニティを作っていけたらと思っています。寄付は難しいという人でも、キャンペーンページをFacebookやTwitterなどでシェアしてもらえるとうれしいです」

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